ハリポタ 僕らの時代 番外 | ナノ
名前の呼び方:低学年
「りぃーどぉーるぅー」
と言って、後ろの席から僕のマントを掴むナチ。
鬱陶しいんだけど。
それにマントに皺が寄る。
マントを引っ張って、前に屈んでも、まだ離れない手。
「りどるー」
「何。マント引っ張るの、やめてよ」
「引っ張ってないよ握ってるんだよ」
「じゃあ離して」
「嫌だ」
「僕も握られてるのヤだ」
「何で?」
「人に捕まれるの、好きじゃないから」
珍しく本心が喉の奥から滑り落ちる。
恐る恐る振り向けば、ナチは悲しそうにしょぼしょぼと手を離して、教科書をぎゅうと握った。
何でそんな顔をするの。
僕まで悲しくなるじゃないか。
「トムー」
他の人が僕を呼ぶ。
びくりと震えそうになる身体を押さえて、何、と言えば走り寄ってきた。
「先生が呼んでるよ」
「何で?」
「分かんない」
何それ、と思いながら立ち上がる。
すると僕を呼びに来た人は、僕のマントを掴んで引っ張った。
首が締まって苦しくて、止めてと言おうとしたら、パシ、という音。
「痛い!」
「ごめんね、虫が居たから叩いちゃった」
というのは、僕の後ろで本を握っていたナチ。
本で人の手を叩いたらしい。
それは、痛い。
「どの先生が呼んでたの?」
「ダンブルドア先生だよ」
本を握ったまま問うた言葉に、手を叩かれた人は慌てて答えた。
伝え忘れていたのに、気付いたのだろう。
「リドル、僕も一緒に行く」
「何で?」
「ダンブルドア先生はレモンキャンディをくれるんだよ。僕も欲しい」
「あ、俺も欲しい!」
手を叩かれた人が言う。
「もう貰ってるくせに」
「な、何言ってんだよ」
「君たちからレモンの匂いがするよ」
僕を呼びに来た人はぎょっとして、その間に教科書を抱え直したナチが僕にほら行こう。と言ってきた。
僕とナチ。二人揃ってダンブルドア先生の所へ向かう。
「鼻が良いね。犬みたい」
「レモンの匂いなんてしてないよ。勘だよ」
「勘?」
ナチはそう、と頷く。
勘で言って当たるなんて、運が良いと言うのか、冴えていると言うのか。
ダンブルドア先生の部屋に入ると、暖かい風が身体を包んでくれた。
先生の部屋はいつも暖かい。
僕達の寮とは、大違いだ。
「よく来てくれた、二人とも」
そう言って、まず手渡されるのはレモンキャンディ。
ダンブルドア先生は、自分が好きな物を皆に配る癖があって、そこが人気を上乗せする原因だったりする。
「呼び出して済まんな、トム」
ダンブルドア先生は、僕の事を決まって名前で呼ぶ。
いや、誰に対しても名前で呼ぶ。
それは親しみやすいからだと言われているけれど、僕は名前が嫌いだから、嫌だったりする。
「レポートを返し忘れておったじゃろう。あれを見付けてな、これじゃ」
紙を渡される。
見れば、返却の時に返ってこなかった僕のレポート。
紛失してそのままどっかでごみ箱に突っ込まれているのかと思っていたから、ちゃんと探してくれてて、ちょっと嬉しい。
それだけで用事は済んで、学校生活はどんな感じかっていう話をして、部屋を出た。
「ねぇ、リドル」
ころり。口の中にレモンキャンディを入れた時、僕と同じようにレモンキャンディを口に入れたナチが僕を呼ぶ。
「なに?」
「リドル、名前嫌いなの?」
「……何で」
そんな事言うの。
トムって呼ばれるたびに、顔に出てた?
ずっと皆を騙せてたから、それは無い、はず。
じゃあ何で?
何でそんな事言うの?
そいつは僕の右手を握る。
「手を繋ぐのも嫌?」
嫌だった。
でも繋いだ手が僕と同じ大きさで、暖かいし細いから、そんなに怖くない。
「嫌じゃ、無いよ」
「じゃあ、痛かったら、僕の手をぎゅって握って」
「意味分かんない」
「うん」
「ちゃんと説明してよ」
「僕も何となく、こうしたいって思って今こうしてるから、説明できないよ」
「何それ」
「僕も分からない」
分からないけどこうしたいってナチは言う。
それは我儘だよ。
僕を君の我儘に巻き込まないでよ。
「ね、リドル」
「何」
「うぅん。リドルはリドルのほうがしっくりくるなぁって思ったんだ。トムって感じじゃないよね」
「何それ」
「分かんない」
〜終〜
リドルはトムって言われるたびに、右手で左腕をぎゅうっと握っている印象があります。
身体が震えるのを抑えるためと、怒りを外に出さないために力を入れて握って、自分を誤魔化すのだと思います。
男主の視点で書けば楽だったと今気付いた。
どちらにしろ、二人ともとても幼くしてしまいました。何この小動物。なノリです。
子供って純粋で良いね!
2009/02/16
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