ハリポタ 僕らの時代 番外 | ナノ
エイプリルフール2010
「リードール!」
「今日一日僕に話し掛けるな」
朝の挨拶よろしく元気良く挨拶をしてくるナチにそれだけ言って逃げようとすれば、何で!と返された。
何でだって?
「今日は何の日?」
「四月一日だね」
「それは何の日?」
「四月の始めの日だよ。三月にさよならを言って、新しく迎えた四月の最初の日」
「誰も詩人的な答えは求めちゃいないよ」
「リドルつれないなぁ」
「煩いな。とにかく、今日は騙されないからね」
それだけ言って、ナチから離れる。
今日はエイプリルフール。
去年も一昨年も、ナチの嘘に騙されたのだ。
今年もなんて、ごめんだね。
「そんなに怒らないでよ」
「怒る原因を作ったのは何処のどいつだよ」
「此処の僕?」
「分かってるならついてくるな」
去年は、授業が休講だと言われて真に受けたら、実は授業が有ったというものだった。
悪質すぎる。(尤も、僕が興味無い授業でやった事なんだけど)
一昨年は秘密の抜け道を見つけたから一緒に行こうと言われて行ったら迷子になった。
これは嘘ではなくて、些細なミス(僕が踏んではいけない煉瓦を踏んで、別の場所への入り口になってしまったのだと一週間程してから知った)で別の場所に飛ばされたからなんだけど、一日迷子になった。事前にそこら辺調べてないのが問題だ。
とにかく、こんな感じで去年も一昨年も四月一日はナチに振り回されているのだ。
良い迷惑だよ、本当に。
授業を受けて、エイプリルフールにはしゃいでる奴等に絡まれる前に自室にさっさと戻る。
迷惑ごとに巻き込まれるくらいなら、休んでいたほうが良い。
のんびりするぞと決めて、ベッドに寝転がりながら過ごしてどれほどか、部屋のパートナーが戻ってきた。
「あれ、トム君。居たんだ」
「居ちゃ悪い?」
「え!?そういう意味じゃないよ!ただ、珍しいなって。この時間帯は部屋に居るよりも、図書室にいたり談話室にいたりしてるから」
慌ててまくしたてるパートナー。
まぁ、嘘ではないのだろう。
それにしても慌てすぎだけどね。
「今日、エイプリルフールだね」
「そうだね」
「トム君、何か嘘吐いた?」
「そんなのではしゃぐタイプじゃないんでね」
「あ、そっか。ごめん」
パートナーの気弱さは少し欝陶しい。
とは言え、ナチのパートナーみたいな奴に比べたら断然マシだ。
気を使ってくれるし、無駄に話し掛けてこない。更に扱いやすいからパートナーとしては最適だろう。
「ナチ君は嘘吐いたのかな」
「ナチは二枚舌だから、ここぞとばかりに嘘で周りをからかうんじゃない?」
「えぇ、そうかなぁ」
パートナーは椅子に座って、ぼんやりした後、そうだ!と急に声を上げた。
ビックリするじゃないか。
何なんだよ。
「トム君、ナチ君に嘘を吐いてみたら?」
「僕がナチに?」
考えもしなかった事を言われて、それも有りかもしれないと思う。
ナチが騙されるかは分からないけれど。
本を置いて起き上がる。
ベッドに腰掛けた状態で相手を見れば、相手は僕が話題に乗ったのが嬉しいらしくて目を輝かせていた。
子供か。
「どんな嘘ならナチに通用するかな」
「そうだなぁ……」
二人で考える。
これといって良いのも浮かばないけれど、行くだけ行ってみるか、という気持ちになる。
部屋を出て、ナチを探す。
秘密の道を見つけた、は前にやられたから二番煎じになるし、ナチの事だから引っ掛からない。
クッキーでも作って、その生地の中に百味ビーンズを混ぜる?
作るのが面倒だ。
面白い草木を見つけたからと森の中に連れて行って嘘でしたって言う?
何も楽しくない。
「はぁ」
色々考えて、けれどやっぱりネタが浮かばない。
ナチを騙すのは難しい。というか、騙したところで何の面白みもない。
「溜め息吐いたら幸せ逃げるよ」
突然後ろから声がかかって、思わずひっと声を上げてしまう。
振り返れば、笑顔のナチ。
「今日一日話し掛けるなって言わなかった?」
「あれ本気なの?傷付くんだけど」
「心臓に毛が生えてるだろうナチが傷付くとは到底思えないね」
「そんなに図太くないよ。僕って繊細なんだから」
言ってろ。
自分で言う奴ほど図太い奴はいないね。
ナチは笑いながら僕の隣に立つ。
「何?」
「話し掛けるなって言われたから、話し掛けはしないよ」
「隣にいるつもり?」
「居るのは駄目じゃないでしょ?」
本当に、何がしたいのか。
ただ隣に居たってつまらないだろうに。
「……勝手にしなよ」
歩きながらナチをはめる嘘を考えたって良いしね。
ナチは黙ったままついてくる。
それもそれで、変な感じがする訳で。
怪しい、と考えてしまう。
これもナチの策なのだろうか。
「ナチ」
ナチは僕を見る。
首を傾げて何?とジェスチャーだけで問うてきた。
決して喋らないのは嫌味か。
「何がしたいの」
首を横に振るナチ。
何もしないと言いたいのだろうか。
ああもう、それくらい喋れよ。
否、僕が喋るなと言ったんだけど!
でも、それをわざわざ律儀に守る?
わざとらしいんだよ。
君はそんな従順な性格じゃないだろ。
「良いよもう、喋りなよ」
「あれ?もう良いの?」
あっさり喋るなよ。
してやったりな笑みも腹立つ。
僕が喋れと言うのを待っていたみたいじゃないか。
事実、ナチは待っていたんだろうけど。
「何がしたかったの?」
「んー、今まで騙してきたから、今回は従順にいこうかなってね」
「何それ」
「一昨年は予期せずだったけど、去年は騙したから、今年はリドルの言う事を聞こうかなって考えてたわけ」
「意味分かんない」
「まぁまぁ、気にしないでよ」
ナチはニコニコ笑うだけ。
その笑顔に疲れを感じるよ。
もうどうでも良い、という気持ちになってしまう。
たぶん、今日は嘘を吐いたりしてこないだろうしね。
だから、もうエイプリルフールだ何だっていう話題は終了。
いつも通りで良い。
「ねぇリドル、今からダイアゴン横丁に行かない?」
「ダイアゴン横丁に?どうやって」
「秘密の通路を通って」
「……一昨年痛い目見たから、確実な道程を見付けた上で、明日行くとするよ」
三年連続でエイプリルフールの日に痛い目見るのは御免だからね。
〜了〜
リドルが他人の嘘に騙されるのが嫌で、リドルの護衛に回るナチ君の話。
いつもはリドルを連れ回して他人と会わないようにして守っていましたが、今回はそれが出来ないので一緒にいるだけになりました。
- 2 -
[
*前
] | [
次#
]
←
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -