ハリポタ 僕らの時代 番外 | ナノ
バレンタイン2007
んーっと伸びをする。
部屋で読書ばかりしていたら肩が凝る。
でも本はやっぱり面白くて、もう少しだけ、と自分に言い訳をして机にしがみつく。
そろそろ日付を跨いでしまうけれど、まぁ良いか。
先に眠っている同室の奴がたまに寝言を言う以外は静かな空間。
光も机に備え付けのもの以外は消しているから、仄暗い。
手元だけが照らされている空間でいきなり控えめなノック音がするから少しビクリとしてしまう。
寝たふりでもしようかなと考えて、でもこんな時間に部屋を訪ねてくる不届き者は一人しかいないから、無視するのも気が引ける。
しかもこちらが返事もしていないのに勝手に入ってくるのだ、予想通りの奴は。
「ナチ」
「こんばんは。勉強?」
「勉強と言えば勉強、かな」
読んでいるのは一応魔法史だし、自主勉強と言えば聞こえが良い。
「じゃあ、そんなリドルにお届け物」
そう言って机に置かれたのはマグカップ。
中で茶色の液体が揺れて、白い湯気と共に立ち込める甘ったるい香りが鼻孔を擽る。
ココアだ。
「勉強の友達には甘い物が必需品だよ」
マグカップに触れると温もりが伝わってきて、美味しそうだ。
「いただくね」
「召し上がれ」
甘い、とても美味しそうな香り。
口をつけると、マグカップはそうでもなかったのに結構熱い。
でもそれは火傷するほどではなくて、丁度良い温度だ。美味しい。
甘いそれは良く飲むココアと一味も二味も違う。
ココアと言うより、チョコレートに近い味。
「これ、何?」
「チョコレートから作ったんだ。生クリームとか、隠し味は色々」
「へぇ」
「どう?」
「不味くはないよ」
「それは良かった」
天の邪鬼な態度もナチの前では受け流される。
ナチは僕の言動の裏を詠むから、こういう時は気楽で良い。
「ナチはいちいち手の込んだ事をするね。そんなに暇なの?」
「気に入ってくれたならまた作るよ」
にこにこと笑うナチに、何がそんなに楽しいのかと問いたくなる。
ナチに限って変な薬を入れて実験台にしてくるはずはないし。
そこら辺は信用しているから、ナチからの貰い物は素直に口に入れられるんだ。
だけどずっと笑顔でいられると、流石に怪しさを感じる。
否、ナチはいつもヘラヘラしてるから特にいつもと違うところは無いんだけど、何だろう、何か裏がある気がする。
でもいちいち訊くのも悔しいし、それにナチのことだから単に機嫌が良いだけかもしれない。
ナチは元々ポジティブで底抜けに明るいし。
気にするのも馬鹿馬鹿しい。
突拍子のない行動を取るのはいつものことじゃないか。
「ご馳走様」
「お粗末様」
ナチはトレイにマグカップを置いて、ドアノブに手をかける。
こちらを振り返って、ウインク。
……何がしたいんだよ君は。
「本が面白いからってあまり夜遅くまで起きてたら駄目だよ」
「ナチに言われたくないね」
「そうだね。じゃあほどほどに。おやすみ」
「おやすみ」
部屋を出ていくナチ。
結局あいつは何がしたかったんだろうか。
僕にチョコレートで作った飲み物を持ってきて、それで帰るなんて。
余程美味しくできた自信作で、飲んで欲しかったのかな。
相変わらず、ナチの行動には裏付けがない。
リドルは気付かなかったけど
ナチは日付が変わってバレンタインデーになった瞬間、つまり一番最初にリドルにチョコ(チョコレートドリンク)を渡して食べてもらったんです。
happy Valentine
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