ハリポタ 僕らの時代 番外 | ナノ
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「暇な人この指とまれ!」
静かな談話室に響く声。
ここまで響くとは思っていなかったからちょっと驚いたけど、皆も驚いて動きを止めたから結果オーライとしよう。
今日は休日でもないのに、上級生ともなれば必要最低限の授業で済ます為に皆暇を持て余している。
勿論僕もその内の一人で、暇なのだ。
そう、暇で暇で仕方ない。
「ヒマー」
「俺も暇」
「何かしようよ」
続々と僕の周りに集まる人。
君たちのノリの良さにはいつも救われるよ。
スリザリンといえば陰湿だって言われるけど、実際はこんなにも普通だ。
他寮はどうにもレッテルを貼り過ぎだね。
「よし、結構な人数集まったね。じゃあ、皆で鬼ごっこしようよ」
「鬼ごっこ?」
こらそこ、シュールとか言わない。
「鬼ごっこは鬼ごっこだけど、鬼には本当に鬼になってもらいます」
「どういう事?」
「補食する側とされる側。という訳で、鬼は魔法使ってよし、逃げる奴は魔法禁止」
「マジで!?」
「マジもマジ。だって鬼より強い魔法使うなんてアウトでしょ。というか、つまんない」
という訳で如何?と聞けば、あっさり賛成する人と、考えた末にやろうと言う人。
ではさっそく鬼と人間を決めましょうか。
時計をちらりと見れば、そろそろリドルが帰ってくる時間。
じゃんけんで鬼と人間を決めていると、案の定リドルが寮に帰ってきて、談話室の人だかりを見て眉間に皺を寄せた。
僕と目が合うと何かに感付いたらしく、すぐに男子寮へ向かう。
日に日に勘が良くなってきているね。
でも、逃がさないよ。
「リドルー!お帰り」
わざとらしく声を大きくして言えば、階段を上がる体がピタリと止まる。
気付かないふりして駆け上がれば良いのに、律儀というか何というか。
はめてる僕が言うのも何だけど、要領悪いよね。
ギギギ、と滑りの悪い関節人形みたいに首を動かしてこちらを見るリドル。
眉間に深い皺が刻まれてて、いつか皺が固定しそうだ。
若い内から眉間に皺はいただけない。
もう少し、楽しむって事をリドルは知るべきだと思うんだ。
「今から鬼ごっこするんだ。リドルも勿論やるでしょ?」
「い、や、だ」
「これから授業無いじゃんリドル」
「本を借りてきたんだ。僕はナチほど暇を持て余してはいないんだよ」
「僕は人間役なんだよねー。リドルは鬼やりなよ」
「ちょっと、人の話聞いてる?」
「学年トップの戦いだよ皆、僕が逃げ切れば僕の勝ち、リドルが僕を捕まえたらリドルの勝ち。皆どっちにかける?」
勝手に博打の話に持っていけば、周りはわいわいと騒ぎ出す。
魔法を使えるリドルと魔法を使えない僕では僕が負けるという意見があったり、僕の事だからどこかに隠れて制限時間をやり過ごすという意見があったり。
皆、僕の性格をよく知っているね。
「僕はまだ参加するって言ってないんだけど」
「あんれー?リドルは戦わずして逃げるのかな?」
「ナチの挑発にはのらないよ」
やっぱりバレたか。
リドルとの付き合いも五年だしね、僕の性格は把握済みなのも仕方ないか。
でもね、リドルがいないと味気ないんだよ。
きっと周りは自分達の鬼ごっこより、僕達の鬼ごっこに興味があるんだから。
その期待に応えないと、ねえ?
「リドルは僕を見つけられずに負けるのが嫌なんでしょ」
「はあ?ナチの隠れる場所なんて大概予想が付くよ」
「どうだかねー。僕はリドルに勝てる自信あるよ」
「……へえ」
リドルはプライドがエベレスト級に高い。
しかも勝ち負けに関しては特に。
負ける自分が許せないっていう気持ちが人より強くて、それがリドルに完璧さを求めさせているんだろうね。
生きづらくないのかな?
ここで一回、僕に負けておくのも大人になる一歩って事で良いんじゃない?
「制限時間ギリギリで慌てふためくリドルを見てみたいよ」
「捕まえたら、許しを請うても魔法かけてやる」
紅い瞳が細められて、補食される側になったような気分。
うわ、予想以上に本気だ。
でもこれくらい本気のほうが良い。
途中で厭きたから部屋に帰ったなんて言われたら興醒めだ。
「鬼になった人、こっち来て」
「え、ちょっとリドル?」
「言っておくけど、僕は遊びであろうと、本気になるから」
ちょっとちょっと。
何を鬼の人皆集めてミーティングしてるのさ。
鬼全員対僕一人とか、勘弁してよ。
人間の皆に支線を向ければ、頑張れ、という言葉だけ。
この薄情者!
「魔法は禁止だけど、魔法道具は有りにしようか」
と提案すれば、リドルがすぐに却下と言ってきた。
いや、本当、道具だけはお願いします。
出来れば透明マントを。
「魔法も使えないマグルの分際が、魔法道具なんて持っているわけないだろう?」
いや、それはスリルを上げるために出した設定であって、マグルって設定じゃないんだけど。
「せいぜい、頑張って逃げることだね」
リドルがせせら笑う。
これは、本気で逃げなくては……。
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