モノノ怪 飽和する世界 番外 | ナノ
エイプリルフール〜2010〜
「西明、今日俺、UFOを見ました」
「眼科に行け」
可愛い嘘に対してザックリと切り捨てる事を言ってのけるのは西明。
エイプリルフールだからと言って、幼稚な事を言っただろうか?
(高校生にもなってUFOはアウトだったか)
西明は家に押し掛けてきた俺を無視して、春の特番を見ている。
こうも粗野に扱われると、落ち込むのだが。
何か、ないだろうか。
西明を驚かすような嘘。
辺りを目だけで見回す。
西明の両親は現在不在。
今は西明と二人きり。
一戸建のこの家に居て、西明を驚かせる嘘。
……そうだ。
「西明」
「ん?」
「二階から足音が、するのですが」
現在居るのは一階。
勿論二階から足音などはしない。
西明は昔から、こっくりさん等の幽霊物は酷く嫌う気があった。
だから怖がるかもしれないと思って言った台詞。
西明はチラリと俺を見た。
怖がってくれるだろうか?
怖がる西明を、見てみたい。
「……聞こえているのか?」
その言葉に、西明も西明で話を合わせて嘘を吐くつもりなのだと分かる。
それなら、どちらかがボロを出すまで嘘の付き合いをするとしよう。
「聞こえて、いますよ」
「驚いた。今までそういった類の事を言ってこなかったから、視えない人間なのかと思っていた」
「西明は、視える人間、なんで?」
「あまり言いたくはないが、そうだな」
そうくるのか。
なかなか手強い。
「どうして、言わなかったんで?」
「視える者なんて限られているからな。視えない人が大多数を占める場で視えると言ったら嘘吐きか気違い扱いだ。だから言わない。お前もそうだろう?」
「えぇ、まぁ」
急に饒舌になる西明。
普段が淡泊なもので、少し驚いてしまう。
「どこまで見えるんだ?」
少し身を乗り出して、こちらに近づいて問うてくる西明。
何だか、様子がおかしい。
瞳は真面目そのもので、からかいの色は微塵もない。
「どこまで、とは?」
思わず腰が退ける。
「さっき、音が聞こえると言っていただろう。音だけか?姿は?」
「西明は、どうなんで?」
「私は視えるよ。さっき走り回ってたのは座敷童子だ」
「……座敷、童子?」
「その様子だと見えていないんだな。でも、音だけでも聞こえる奴が傍に居るのは嬉しいよ。私の親はどちらも視えない聞こえないだからな」
「……」
西明が笑顔でそんな事を言うから、西明が言っている事が嘘ではないと、気付いてしまった。
西明は霊が視える体質なのだ。
それをずっと隠していたのだが、今日、俺が冗談半分で出した話題によって露見してしまった。
だからこっくりさん等の霊を引き寄せる遊びが嫌いだったのか。
視える西明にとって、それは遊びの枠組みから出ているのだ。
だから嫌がる。
嗚呼、なんて事だろう。
俺の嘘で、西明の秘密が見えてしまうなんて。
「……」
「どうした」
「いえ……」
今更嘘だとは言えない。
西明は座敷童子は悪い奴ではないから怖がらなくていいと言った。
怖くて口数が減っているわけでは、断じて無い。
嘘を吐いて西明の秘密を知ってしまった事、嘘が嘘だとバレた時の恐ろしさと申し訳なさ、様々な罪悪感から心が重たくなる。
嘘など、吐かなければ良かった。
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