その他夢小説 | ナノ
act.06
今やりたいことをあげてみましょう。
深夜
目が覚めたのは深夜の二時。
寝たのはいつも通りの時間だった。こんな時間に眼が覚めるなんて珍しい。
「……」
ボサボサの髪を適当に手で梳いて上体を起こせば、窓から入る月明かりが私を照らした。
起きるにはまだ早すぎる時間。
もう一度寝ようと再び横になるが、頭は確実に覚醒している。
しばらくの間寝返りをうったが、睡眠欲はナリを沈めているので仕方なく起きあがる。
ビクトールが体力は日々つけるものだと言っていたので、毎日起きたら軽く準備運動をするようにしている。
深夜ではあるが、起きたのだから運動をした。
動かしたことにより熱くなった身体を冷やすために窓を開ければ、夜風はとても心地よい。
昼は綺麗な緑色をした葉も、今は濃い陰色をして風に揺らめく。
窓枠に膝を置いて頬杖をつく。
ないもしない時間も良いかもしれない。旅人のくせにそんなことを思った。
「……?」
木の下から空を飛ぶ白い生き物が私の方に向かってくる。
城壁すれすれを飛んでまた木の方に向かって行くのは、確かどこかの山で見つけた竜らしき生き物だ。
私は竜をあまり見たことがなくて、見たくてつい癖で棍を片手に持ち、静かな廊下をできるだけ音を出さずに走って先ほど龍が姿を消した木のところに向かう。
「ブライトー」
少年の声。そちらに視線を向ければ人間の後ろ姿が見えた。
超音波のような鳴き声をあげて少年の近くに降りる白い生き物。
白い生き物が私が居ることを少年に知らせる。
「え?なんだいブライト?」
少年は振り返って、私と目をあわせる。私は軽く会釈をした。
「こんばんは、フッチさん」
「こんばんは、ミョウジさん」
フッチはブライトと呼ばれる生き物を抱き上げて私に近づいてきた。
「こんな夜中にどうしたの?」
「どうにも目が覚めてしまって窓の外を眺めていたら、あなた方を見つけたんです」
ある程度素直に答えれば、彼は納得したようだった。
「その子はブライトって言うんですか?」
「うん、そうだよ」
「可愛らしいですね」
大きな瞳は月明かりの下に輝いている。なんだか革で作られた人形のようだ。
「……撫でて良いですか?」
珍しい物をまじまじと見たら、今度は触りたくなった。フッチはどうぞ、と言って私にブライトを抱かせようとしてくれる。私は棍を地に置いた。
頭を撫でればブライトは頬摺りをしてきて、なんだか赤ん坊を抱いてるみたいだ。
「有り難うございます」
しばらくの間抱きしめて、返そうとすればブライトの爪が私の上着を掴んでいた。
「こら、ブライト」」
「私のことを気に入ってくれたんですかね」
「そうみたいだね。離しなよ、ブライト」
フッチがどうにか引き離そうとするが私の服にへばりついて離れない。ブライトが服を離すまで抱いておくと言えば、フッチは謝った。
さすがに立ったまま抱いてるのも嫌で、地面に腰をおろす。
フッチは旅をハンフリーさんとしていたらしく、同じ旅人としての話はつきなかった。
「ブライトは竜かまだ分からないんですか」
「うん、だからこの戦争が終わったらハルモニアに行くんだ。ミョウジさんはどこに行くの?」
「まだ決まってないですね」
「へー、以外と計画たてずに行動するタイプ?」
私は苦笑した。そういうこともあるし、そうでないこともある。
気が向くままに生きるよう心掛けてるのだけれど、これは計画性がないに当てはまるのだろう。
「計画たてすぎたら肩凝りませんか?」
「今までの旅もそうやってきたんだね」
私もフッチも笑う。
「じゃあさ、一緒にハルモニアに行かない?旅は道連れって言うし」
「ハルモニアですか。いつか気が向いたら行きたいですね」
「……無理?」
「私一人旅が好きなんです。他の人と居ると、自分の寄りたい町に寄れないでしょう?」
「ん〜……そっかぁ」
彼は残念そうにする。
彼は出来るだけ早くブライトが竜か知りたいだろう。行き先にある町に必ず寄り道をする私と旅を一緒になんて、無理な話しだ。
私は出来るだけ多くの町を見て回りたいのだから。
「ねぇ、旅人のミョウジさんは何でこんなに長くここに滞在してるの?」
痛いところを突かれた気がした。
「何となくです」
すぐについた嘘。でも先ほどの話の内容からは筋の通る台詞だ。自由気ままっぷりが発揮されている。
だからフッチも納得したらしく笑った。
腕の中のブライトは気持ちよさそうに寝ている。フッチも欠伸をする。
それでも私の目は冴えていた。
「ブライト、返しますね」
眠ったブライトは服を離していた。
私はフッチにブライトを抱かせ、おやすみなさいと後3時間後には日の出の時間にいう台詞ではない言葉を使う。
彼が去ったのを見てから、私は棍を片手に城の周りを散歩する。
一周したら、夜明けまではまた棍を使って運動しよう。どうにかこの城に滞在している間にビクトールに勝ちたいものだ。
夜が明けたら朝食をとって、図書室に。
残り少しのあの時間を満喫したい。
この城にいる理由が、意外とたくさんあることに私は気がついた。
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