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そこに跪いて忠誠を誓え
そこに跪いて忠誠を誓え
「私はこれより貴方様に忠誠を誓います」
目の前で頭を垂れながらお決まりの台詞を述べる相手に嫌気がさした。
つまらん。能が無い者はこうも定型の言葉しか吐けないのか。
退屈しのぎに相手の言う忠誠心とやらを試してやろうと思った。
「貴様の云う忠誠は本心からか?」
「勿論です」
「では、そこに跪いて我に忠誠をもう一度述べてみよ」
面白い反応を期待していたが、相手はすんなりと椅子に腰を下ろしている我の前に跪いた。
自尊心を欠片も持っておらんのか。
つまらん、が、こいつは命令に背いたりしないだろうと心の何処かで確信する。
使い勝手の良い駒を手に入れたようだ。
死ぬまで戦場を駆け回ってもらおう。
跪いた駒は爪先に頭を近づけた。
何故そこまで近付く必要があるのかと考え、もしやと思うが取り乱すのも癪に障るのでそのまま相手の動向を待つ。
「この血肉、この命、全て貴方様に捧げます」
爪先に何かが振れる。
覚悟はしていても、全身を駆け巡る悪寒。
奥歯を一度強く噛み締め、肺に溜め込んだ空気で溜息を吐くようにして口を開く。
「誰がそこまでしろと申した」
人の爪先に勝手に接吻をした相手は顔を上げる事無く、そのままの姿勢で言葉を紡ぐ。
生温い息がかかるのは不快だ。
「私の忠誠心の現れです。私にはこの身一つしかありませんので、おこがましいですが捧げられるのはこれくらいしかありません。どうかお受け取り下さい」
「命を貰った。その血肉も」
「はい」
「もう良い。貴様の忠誠心は測れた。下がれ」
「はい」
部下も全て下げ、足を見る。
生々しく残る感覚に眉根が寄る。
胸にある嫌悪感も、計算していなかった行為も、我の腸を煮え繰り返すには十分だった。
07/05/11
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