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act.13
吟遊詩人は語ります。
語り継がれて
二人の女性が瓦礫の中、佇んでいます。
一人の、黒髪の女性の服は白い瓦礫の粉に汚れていて、両手は痛々しいほど擦り切れています。
女性が退かした瓦礫の下から、一つの遺体が出てきました。
何故かどこにも外傷が無く、寝ているように綺麗です。
瓦礫の隙間に倒れていたからでしょうか。
銀髪の女性、まだ少女でしょうか。
少女は動かずに、やや離れた場所から遺体と女性を見ています。
女性は遺体の手を持って、自分の頬に触れさせました。
まだ少し暖かいです。
でも心臓は動いていません。ただ眠っているだけのようにしか見えないのに。
「ミョウジさん……」
銀髪の少女は悲しそうに女性に声をかけます。
ミョウジと呼ばれた女性は遺体を抱き上げました。
「セラちゃん。見晴らしの良いところにお墓を作ろう。ルックに、色褪せない世界を見せてあげよう」
春も夏も秋も冬も、木々が生い茂り色とりどりの花が咲く場所に
セラと呼ばれた少女と、ミョウジと、ミョウジに抱き上げられているもう動かないルックはセラのテレポートで向かいます。
ミョウジは自然の沢山ある、年間を通してあまり気温差のない丘の上に穴を掘り始めます。
そしてルックを穴の中に寝かせて、動かないミョウジにセラが声をかけ、ようやくミョウジは土をかぶせていきました。
そこには立派な墓がたちました。
そして毎日、黒髪の女性は墓の前で何かを話していました。
どんな嵐が来ようとも、毎日かかさず墓の前にいました。
近くの村人は、銀髪の少女から物語を聞きました。
それは吟遊詩人の耳にも入り、物語は語り継がれるようになりました。
それから何十年、いいえ、何百年経った頃でしょうか、そこには3つの立派な墓石が並んでいます。
時々そこからは少女二人と、少年一人の楽しそうな談話と笑い声、駆け回る姿が目撃されています。
吟遊詩人は地方でも語ります。
風の妖精と恋に落ちた少女の物語を。
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