デスノ 跡継ぎ 番外 | ナノ
センター受験生へ 2009
「L、ワタリ、来てくれ」
お茶の席に居るLとワタリを呼ぶ。
「どうしたんですか?」
「ケイ、如何なさいました」
座り込んで地上を眺めている私の隣にいそいそと来る二人に、地上を見るように促す。
Lは膝を抱える座り方をして地上を見下げた後、私の名前の語尾を上げた。
つまりは疑問。
メロやニアではなく、日本の学校が映し出されているから、意味が分からないと言いたいのだろう。
「今年は私達が世の学生に激励をする事になったんだ。だから一緒に応援しよう」
「急ですね」
「今日はセンター試験だからね」
「あぁ……」
「Lは一度受けた事があるんだろう?だから、先輩から一言、激励をしてくれないか」
「ケイは?」
「私は受験なんてやっていないからね、未経験者が何を言っても画餅、もしくは妄言、空論だ」
経験は何よりも価値がある。
経験の無い私が言葉の羅列をしようと価値は低い。
経験があるLの一言のほうが、価値があるのだ。
Lは少し悩むように指を口に押しつけて、そして爪を噛んだ。
悪い癖だ。
子供の頃は指を噛んでも爪は噛んでいなかったのに、ワタリも注意をしなかったのだろうか。
「こら、L」
ぺち、とLの手を叩くのはワタリ。
Lはしまったと思ったのか、気まずそうに手を膝に置いた。
その親子関係に思わず笑う。
するとLは唇を尖らせるから、本当に子供だ。
「センター試験はマークシート。国語、英語、社会、理科は運も付随します。しかし数学は計算結果なので運より実力です。なので、運に頼らず実力勝負をして下さい」
「それは、受験を今から始める人向きじゃないか?」
「実力を出し切ってください。分からなければ、取り敢えず何か塗り潰して下さい。空欄で出せば正解率0%ですが、何か塗れば当たる確立が発生します。それに、回答がズレる事も防止できます」
「だそうだ。それから、悔いが残らないように全力を出し切る事が大切だろう」
「そうです。後悔なんて似合いません。というより、後悔は時間の無駄です。事実は変わらずにあるのですから、もし何か失敗したと気付いても、後悔は二の次で、まずは次の教科が入った脳味噌の引き出しをすぐに開けられるようにしておきましょう」
「的確な意見をありがとう。では、世の受験生諸君、全力投球してきてくれ」
「そういえば、ワタリは私が受験に行った時、わざわざ五角形の鉛筆を用意してくれましたね」
「願掛けですから」
ワタリが朗らかに笑う。
五角形……?あぁ、五角(ごかく)で合格か。
日本は面白い事を考えてくれる。
「L、他に何かワタリはしてくれたのか?」
「キットカットとか、カールとかを貰いました。キットカットの桜は美味しくなかったです」
思わず、笑う。
Lがテストでミスをする事なんて無いのに、凄い願掛けだ。
ワタリは少し気恥ずかしくなったのか、Lに「やめて下さい」と言っている。
キットカットはきっと勝つ。
カールはウカールだった。
どこまで面白い国なんだ、日本は。
「ケイ、あまり笑わないで下さい」
ワタリが私の頭を弱くこづく。
それすらもこそばゆくて、腹を抱えて笑いたくなったが、これ以上笑ったらワタリが拗ねてしまうだろう。
どうにか笑いたい衝動を抑えて、深呼吸をする。
「私も受験を経験しておけば良かった」
「冗談を言わないでください」
「本気だよ。私の時なら、ワタリはどんな事をしてくれるか気にならないか?L」
「気になりますね」
「出来ない事は今言っても無駄です。それより、目的を忘れないでください。激励を送るのでしょう?」
そうだった。
ついおかしくて、そちらに気を持っていかれていた。
「では、学生諸君、全力投球をしてきてくれ」
「努力が実りますよ」
「心の中でキットカットを手渡しておきます」
ワタリの台詞に、二人で笑った。
〜戯言〜
笑う角には福来たる。
皆さんにも、笑顔を送信!
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