デスノ 跡継ぎ 番外 | ナノ
君の生まれた日
調べによると、今日がLの正式な誕生日だ。
10月31日。
けれど6月の頭にLとしての誕生日を済ませてしまった。
跡継ぎ
君の産まれた日
どうしようか。
ケーキはいつも食べているし、プレゼントを渡せばプレゼントの意味を求められるだろう。
意味など適当に作れるが、何をプレゼントすれば良いのか、悩ましい。
以前欲しがった名前?
――来年の誕生日にと言われている。
お菓子?
――ハロウィンで菓子を渡してもな。
一人頭の中で考えていると、名前を呼んで駆け寄ってくる軽快な足音。
Lだ。
私の前で立ち止まって、一度深呼吸をしている。
ちょっと赤らんだ頬。
駆け寄るだけで、こんなに紅潮する筈は無い。
上げられた顔には期待の色。
成る程。
「あの」
「何かな?」
「Trick or Treat!」
やはりそうか。
私に期待の瞳を向けてくるL。
この一言を言うのに緊張した分、期待は大きいらしく大きな瞳を輝かせている。
「LはどんなTrickをしてくれるのかな?」
「え……」
しゃがんで目線の高さを合わせてから、小さな手を握る。
もう片方の手で髪を梳くと、Lは一度目蓋を閉じた。
「お菓子を持っていないから、今ならLはTrickを使えるよ」
「そんな、ケイに悪戯なんて……」
床に目線を投げてしまうLに、心の中で済まないと詫びる。
Lを困らせる為に、言っているのではないのだ。
「じゃあ、我儘は無いかな?」
「我儘ですか?」
本当は願いは無いかと訊きたかった。
けれどそれを言っては、ハロウィンを使ってLの望みを聞き出そうという魂胆に気付かれてしまうかもしれない。
それは、免れたい。
ただ、この訊ね方ではLが答えるとは思えない。
私やワイミーに願いを言うのですら遠慮してしまう子だ。
悪く言えば引っ込み思案だが、この遠慮は人に迷惑を掛けたくないという優しさだと私は思う。
「あれしたい。これしたい。もしくは、して欲しい。そういうのは、無いかな?」
Lの瞳が一瞬揺らぐ。
それは何か『望み』がある証拠。
優しさによって望みが言えないL。
今日くらいは、言ってくれないだろうか?
繋いだ手を握り返される。
それに期待してしまう自分は、愚かだろうか。
「あの……」
「何かな?」
「嫌だったら、良いです。ワタリも、ケイも、忙しいですから」
「私は毎日暇しているよ」
「……」
「L、教えてくれないかな?」
Lは俯いてしまう。
口が一文字になっていて、そんなに望みが言えない環境を作り出していたのかと、悲しくなった。
済まない。済まない、L。
「また、水族館に、行きたいです」
ぽつりと呟かれた言葉に胸が満たされて、満たされすぎて苦しくなった。
言ってくれてありがとう。
そんな気持ちが溢れだして、思わずLを抱き締めた。
Lも自然と私の背中に手を回しながら、私の名前を呼ぶ。
「嫌、ですか?」
「まさか。私も似たような事を考えていたんだよ」
「そうなんですか?」
「そうだよ」
抱き締める腕を緩めて、顔を向き合わせる。
笑みを浮かべれば、Lは安心したように笑った。
「じゃあ私からも、Trick or Treat」
「え?」
「Lはお菓子を持っているかな?」
「いいえ」
「なら、Trickだ」
困惑の表情を浮かべるL。
表情が豊かになってくれた事が嬉しいと、今考えるには不謹慎な事が頭に浮かんだ。
「Lとワタリと私で、世界遺産を見に行きたい」
何処の、とはまだ言わない。
Lが望めば世界の何処にだって行くが、外泊が嫌ならば、日帰りできる場所を探そう。
それに世界遺産には建造物だけではなく、自然も入っている。
今のLが望む物が命が宿るものだとすれば、自然を見に行こう。
建築物にも興味があるようだから、両方見て回っても良い。
この子の望みは出来るだけ叶えよう。
それが私からの、細やかな誕生日プレゼント。
〜END〜
Happy happy birthday to L!
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