ハリポタ その他 | ナノ
葬失
自分が、凄く嫌いだった
だけど周りによく思われたかったから、楽しくいたいから、毎日笑って冗談言って
そうすれば楽しいんだ
綺麗な自分でいればいい
中が汚泥だろうと、かまやしない
葬失
「リドル君聞いてよ!」
「どうしたの?」
にこりと笑みを向けて耳を傾ける。
意味も無く話をする女達相手に相槌を打って話を面白おかしくして。
実の無い話し。
だけどそれが楽しいんだろう?
くだらない事を言ってれば皆軽く流して笑っておしまい。
それこそが楽しいんだ。
いかに楽しそうか、いかによく思われるか、他力本願かもしれないけれど、それが僕の価値なんだ。
周りから求められなきゃ、誰も僕を求めてなんかくれないんだから。
親すら僕を捨てるんだから。
一通り話し終わって、『バイバイ』ではなく『またね』と手を振って。
一人になって、冷めた自分が中で暴れる。
汚い名前の汚い僕。
周りが求めてくれるのは汚い僕。
リドルだなんて呼ばれて、どうして笑っていられるんだ。
馬鹿らしい。
相手の顔色伺って、話を合わせる。
健気だと言えば聞こえはいいけど本当はただの臆病者。
弱く汚い惨め。
周りに縋る。
こんな自分、一番なりたくないのに。
なりたくないのにならざるをえない。
だって僕は無価値だから。
やっぱり弱い。
やっぱり嫌い。
こんな自分、キライ。
「楽しそうだったね」
そんな時に現れるのがこいつなんだ。
リキとはそんな深い付き合いをしたつもりはないのに、リキは僕を知っている。
僕が本当は笑わないことも知っている。
周りに話を合わせるのを嫌うのも知っている。
僕が僕の価値を見つけられないのも知っている。
なのに表面上で僕はこうだから、いつも責める様な口調なんだ。
弱い僕には痛過ぎる口調。
「今の話、笑ってたけど何が楽しかったわけ?」
隣りに座って冷たい、刺す様なセリフ。
分かっているくせに。
話し自体は楽しくなんかない。
でも話を合わせて笑って、そうすれば楽しめるんだ。
だから僕は。
黙りを決め込んでいると、鼻で笑われた。
「別にリドルがどうしようと関係ないけど」
イタイ。
捨てられた。
放り投げられた。
冷たいセリフ。
『ほらね。弱い汚い僕を知ってる人は僕から離れてゆくんだ』
脳髄に響く。
笑わなくちゃ。
笑って楽しそうにして、汚い惨めな弱い僕を隠さなくちゃ。
「話は主体性が無い方が楽しいだろ?重たい内容なんて、つまらないじゃないか」
笑って
笑って
嗤われて
「意味も無い話しなんかして何になる?」
探らないで。
膿が出るから。
汚泥が溢れ出す。
駄目。
隠さなくては。
汚泥に飲み込まれては駄目。
僕はリドル。
汚い名前の僕は何だって笑い話に出来る、はずだろう?
「じゃあこの話自体実が無いじゃないか。それなのに、リキが話をするのと同じだよ」
リキは笑う。
笑わないで。
今している君の笑みは、すべてを見透かした嘲笑だって僕は知っている。
見透かさないで。
強い僕で、綺麗な僕で、皆が好きになるような僕でいさせてよ。
「もう少し上手く回避出来る様になるべきだね。僕は興味があるから訊いているんだ。答えが分かっていながらわざわざ訊くリドルこそ真意はなんだい?」
そんなつもりで言ったんじゃない。
『本当に?』
視線が問う。
お願いだ。探らないで。
答えが分かっていた。
確かにそうかもしれない。
僕は僕に意識を向けられて嬉しいのか?
だからわざわざ確認するように訊いたのか?
違う。そんなのじゃない。
弱い僕は中にいるんだ、外部に漏れるはずが無い。
ただ回避したくて深く考える前に口から出てしまっただけ。
弱く汚い部分を探られたくなんてない。
『本当に?』
そんなつもりじゃなかった。
弱い僕。
リキといると探られる。抉られる。
隠れているのに引っ張り出されて、動揺して取り乱して。
一番嫌いな自分になる。
ああだから嫌なんだ。
リキと一緒にいると弱さが溢れだす。
無理矢理切り込みを入れられて絞り出される。
やめて
見ないで
晒さないで
僕は弱いから
弱いのを認めるから
だからもうやめて
視界が滲む。
まばたきを忘れていた。
ぱちぱちとまばたきをすれば視界は輪郭を取り戻してしまう。
輪郭が無い方が、主体性が無くて溶け込めるのに。
溶け込めたらいいのに。
『僕が無くなってしまえば良いのに』
本当にね。
「リドル」
「なに?」
顔はやっぱり笑みを作ってしまう。
もう笑いたくもない。
疲れた。
なのに僕は笑う。
本当に「どうかした?」というように。
「……何でもないよ」
リキはいつだって痛い処だってズバズバ言う。
なのに何をためらうのか。
僕の知ったことでは無いけれど。
リキは分からないから。
言い方はストレートだけど、掴めない部分があるから。
それはきっと僕のように弱さや汚さや惨めさではないのだろうけれど。
「またね」
立ち上がって、それだけ言って去ってゆく。
抉られた傷はまだ紅い肉を晒していて、治りそうもない。
笑えるけれど笑えないから、今は人と話をするのは駄目だ。
僕も席を立ち、部屋に向かう。
いつも傷を塞ぐ為に外的刺激を与えるのが常な僕。
中の痛みより視覚聴覚触覚が強ければ中の痛みを少しでも忘れられるから。
僕は僕が嫌い。
リドルが嫌い。
だから僕は僕という姿を無くす。
それが快感であり、中の痛みを鎮める一番の鎮痛剤。
リドルの自分が無くなるのは快感以外のなにものでもないから。
指紋はもう無い。
すべて落とした。
もう落としてしまった。
じゃあ次は何をしたらいい?
僕はどうしたら弱い自分を捨てられる?
どうしたらリドルではなくなれる?
ナイフ片手に、そんな事を思った。
〜戯言〜
僕らの時代の別バージョンでした。
もしこの男主が僕らの時代の主人公だったら、だいぶ話は変わっていたのでしょうね。
- 2 -
[
*前
] | [
次#
]
←
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -