モノノ怪 飽和する世界 | ナノ
元旦(会話のみ)
「明けましておめでとう御座います」
『明けまして、おめでとう、御座います』
「今年も宜しくお願い致します」
『今年も、宜しくお願い、致します』
「……」
『……』
「さて、食べようか」
『はい。ですが、その前に』
「ん?」
『西明、手を』
「……」
『そんなに、警戒なさらずに』
「警戒したくもなる」
『良いから』
「ちょっ」
『はい、お年玉』
「……は?」
『ですから、お年玉、ですよ』
「貰う年では無いのだが」
『年など、関係、ありません、よ』
「餅か」
『餅、です』
「ありがとう」
『どう、いたしまして』
「では薬売り」
『はい』
「手を出せ」
『おや』
「用意してないとでも思ったか」
『……』
「思っていたのか」
『……まぁ、はい。西明なので』
「どういう理屈だ」
『そのままの意味です』
「手を出せ」
『はい』
「はい、お年玉」
『……これは?』
「紅だ」
『口紅、ですか』
「綺麗な色でな、薬売りに似合うと思って買った」
『……』
「気に入らなかったか?」
『いえ、使います、が』
「が?」
『女人へ贈る品を、西明から贈られると、少し、複雑です』
「……」
『……』
「薬売りに似合うと思って選んだ色だ。それでも、複雑か」
『それは、ちょっと、嬉しいです』
「ちょっとか」
『ちょっと、です』
「……」
『西明が唇にさした紅を、俺につけてくれるなら、舞い上がり、ます』
「私が紅を?どうやってお前につけるんだ」
『接吻で』
「餅が固くなる、食べるぞ」
『駄目、ですか』
「駄目だな」
『残念、です』
「飯が食えなくなっても駄々を捏ねる気はあるか?」
『ありません』
「では御節を食べよう」
『はい』
「いただきます」
『いただきます』
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