「―――ああ、そうだな。お前のそういう考え方、俺は好きだぞ」

切れ長の、でも不思議と冷たいという印象を与えないその目を細めて真斗くんは私に微笑みかけてくれた。
私はお酒を飲むとついつい愚痴っぽくなっちゃって、本当は真斗くんとお酒を飲むときはこんなつまらない話したくないんだけど「悩み事があるのだろう?俺に話してみないか」などと優しく言ってくれる彼はこの世で最高の恋人だと思う。
そんな彼に甘えちゃう私はもっとしっかりすべきだ。

「でもこんなこと言ったらきっと反感買うよね…」
「言わせておけ。分かってる奴には伝わっているものだ。…俺のようにな」
「真斗くん…」

同い年なのになんて大人なのだろう。

「あ、空になってる。つぐね」

徳利を持ち上げると「ああ、頼む」とお猪口を差し出してくれる。
一度目が合うたびに笑みを浮かべてくれて、私もぎこちなくはにかみながら徳利を斜めに傾ける。
とぽとぽ…と焼酎の流れる音が耳に心地良い。

「話は変わるのだが、」
「なあに?」

「お前の今日の下着は何色だ?」

……うん?

「″唐と新羅(しらぎ)は仲良しだ?″
…真斗くん、世界史に興味あるの?」

知らなかったなあ。
時間がある時は専ら本を読んでいたりする真斗くん、今度は歴史ものかあ。
知的だなあ、かっこいいなあ。

「いいや、お前のパンティの色を聞いている」
「やっぱり!?空耳じゃなかったのね!?」

真斗くんの口からパンティなんて下劣な単語を聞く時が来るなんて!
ジーザス!!

「ど、どうしちゃったの真斗くん。酔っちゃった?お酒、強くなかったっけ?」
「俺はいつも、お前に酔ってる」
「もおおおおやめてえええええ」

耳を塞いでわーわー発狂する。
聞こえない、真斗くんの声なんて聞こえない!
というか聞きたくない!!

私の抵抗も虚しく、私の細っちろい両腕を掴まれてしまえばもう成す術がない。
私を見つめる真斗くんのキラキラ輝く青い瞳に吸い込まれそう。

「…ってダメダメ!!ちょ、なんでスカートめくろうとしてるの!?」
「教えてくれぬのなら確かめるまでだ」
「かっこよさげに言ってもやってること小学生と同じだからね!?」

というか小学生以下!!
今時の小学校でも流行ってないから!!

「俺は小学生の時にこんなことはできなかった…。だから…」
「…真斗くん………って騙されないからね!?一般の小学生は普通やらないから!!」
「ではお前は俺にどうしろと?」
「どうもしなくていいよ!」

はあっはあっと肩を上下させて息を整える。
尚も諦めていないのか真斗くんはジリジリと距離を詰めてきて、私の後ろが壁になった時はもう絶体絶命のピンチだと悟った。

「ほら、見せてみろ…」
「そっ、そういう真斗くんは!?」
「え?」
「きょ、今日の下着、見せてよ」

仕返しとばかりに勢いで言ってしまったその台詞。
しかし、それは意外にも彼に大きなダメージ?を与えたらしく。

「ばっ、馬鹿者!婦女子がなんたることを…!……ま、まあしかし、お前がどうしてもと言うのなら俺も男だ。女性に恥はかかせるものではないからな…」

と、恥じらいながら下を脱ぎ始めた。
なんてこった。

「…ど、どうだ?」
「え?えーっと、いい感じ、だね…」
「そ、そうか…」

(照れてる…)

こうして私は、真斗くんの下着の色と真斗くんが実はむっつりスケベだった事実を知ることになったのでした。




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