「はにぃ、はにぃ、」
「はいはい、なんだいレンぼっちゃん」
「はにぃはどうしてそんなにかわいいんだい?」

私の部屋に招待したのは初めてのこと。
それに浮かれてついつい飲み過ぎたのか、はたまた私がスーパーで買った安酒がいけなかったのか。
分かるのはお酒に強いはずのレンが酔っ払っているこの現状だけ。

「ど、どうしてって‥‥。レンはそう言うけど、実際私なんて中の中だからね?大丈夫?」

お前の目も頭も。

その言葉は喉の奥にぐっと堪えた。
ちょっとでも冷たい言葉を放つとレンはその目尻の垂れた目から涙をぼたぼた流して泣くのだ。
さっき「もーウザイなぁ」とちょっと邪険に扱っただけで五分は泣きやまなかった。
ウザイなぁ。

「ちがうよ、はにーはせかいいちかわいいよ」
「‥‥ありがと」

酔っ払いの戯言できゅんとくるなんて。
私は缶のまま桃の酎ハイをゴクゴクと飲み干す。
喉にきゅっとくる炭酸が火照った身体に心地良い。

「はにー、」
「んー?」
「はにーはどうしておれをえらんでくれたの?」
「ゴフッ」

口に残っていた水分が霧のように噴射された。
うわぁ、汚い!
近くに置いてあった台布巾で飛び散ったであろう範囲を隈なく拭いた。

「それ聞いちゃう?」
「うん、おしえて」
「えー‥‥」

レンを選んだ理由‥‥ねぇ?

ちらりと皮肉なほど整った顔立ちの恋人を見やると、うるうるとした瞳で私の言葉を今か今かと待っているレンがいる。

「‥‥‥‥なーいしょ」

プイとそっぽを向くと、はにぃと情けなく私を呼ぶ。
そんなレンに笑って、彼の持て余された大きな掌を握ってあげた。

「かっこいいレンも好きだよ」

(一番好きなのは、その情けなーいレンなんだけど)

それは男の沽券のために黙っててあげるね。





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