「ちょ、これ、つくねのタレ少なくね?塩じゃねーよタレなのによ、っはははは!!」
「…」
「ぶっ!しょっぺえ!!っあははははははは!」
「…」

翔ちゃん、私はがっかりだよ。
なんなの君。
なんでお酒飲んだ途端そんな笑い上戸になっちゃってるの。
なーんにも面白くないよ。
お姉ちゃん、君の笑いのツボが分からないよ。

さっきもあの店員靴下の爪先のとこ破れてた!って言って5分間は笑い続けてた。
そりゃ破けるよ、仕方ないじゃん。
いい加減笑うのやめてよ、私まで恥ずかしい人じゃん。

「ひっ、ひっ、やべぇ、おもしれぇ」
「私からしたら翔ちゃんが面白いけどね」
「え?そうか?お前おもしれーな!!あはははっ」
「…ウンウンヨカッタネ」

会話にもなりやしない。
ダメだこりゃ。

私は翔ちゃんの相手をするのをやめて頼んでいたあんず酒のロックをゴクゴクいった。

(うーん、梅酒と違うこの甘味が美味しいんだよね)

視界に入ってる酔っ払いさんは無視して私は一人でお酒を飲みすすめる。
つもりだった。
翔ちゃんという名の酔っ払いの笑いのターゲットにされるまでは。

「おい、お前っ、それ、なんだよっ」
「ええ?なに?なにが?」
「それだよ、タイツ!おま、クリスマスでもないのにその配色センスねぇわ」
「…はい?」
「っくく、だからさ、緑と赤ってそれまんまじゃねーか!ひっ、つ、つかクリスマスでもそこまであからさまな色使わねぇよ、っはははは!」
「………シネ」

なにこれ。
なんなのこの仕打ち。
なんで酔っ払いにコーディネートのダメ出しされて挙句の果てに馬鹿笑いされなきゃいけないの。

完全に不貞腐れモードに突入した私は、飲みかけのあんず酒のグラスを持って翔ちゃんに背中を向けた。
もう知らない。
翔ちゃんのばかやろう。

「っひ、おい、どうしたんだよ?ははっ、どうしたんでちゅかー?あははっ」
「……」

無視無視。

「…おーい、俺様が呼んでんだぞお?返事しろよっ」
「……」

無視無視。

「……おいってば!」
「……」

無視無視。
反省したら許してあげる。

とか思っていたら突然背中にぐっと体重が掛かり、私は前のめりになった反動でうっかりあんず酒を零しそうになった。

「ちょ、翔ちゃ、」
「俺が!」

後ろからぎゅっと抱きしめられて、改めて翔ちゃんが大きな男の子なんだって感じた。

「……俺様が、毎日お前の服選んでやるよ」
「………ん?どゆこと?」
「だーかーらー、」

ぐるっと身体を反転させられ、見えたのは翔ちゃんの真っ赤な顔。

「俺と、一緒に住もうぜ」

……こんな時にこんな台詞、ありだと思います?

「…シラフで言えっ、チキン!」
「チ、チキンじゃねぇよ!」

罵倒の言葉を浴びせながら私はそのおっきな身体に抱きついた。




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