なんでこんな状況なのかはよく分からない。
課題をやるために翔ちゃんの部屋に来たら、可愛い頬を真っ赤に染めて息を荒くしている翔ちゃんに突然キスをされてそのままベッドに押し倒されてしまった。

「しょ、翔ちゃん?どうしたの?」

翔ちゃんとの付き合いも長くて、キスだってその先だってしてきた。
けれど、こんな風に私の制止も聞かず強引に事を進めようとする翔ちゃんに会うのは初めてのため、普段大らかな性格だと言われている私でも流石にびっくりする。

「っはぁ、悪ぃ」
「いや、いいけども‥‥。大丈夫?顔赤いよ?」

汗が滲んでいる首筋に手をやると、翔ちゃんはうっと息を飲み込んで首をすぼめた。
その明らかに異常な反応に段々と本気で心配になってくる。

「ねえ、ほんとにどうしたの?」
「‥‥‥‥っ」
「翔ちゃん、言ってくれなきゃ分かんない」
「‥‥‥‥那月のやつに、」

一旦息を飲み込んで続かれた言葉「媚薬、飲まされた‥‥」。
それは私を驚かせるには十分過ぎた。

「えっ、えええ!?媚薬って‥‥あの媚薬だよね!?えっなんで!?てかなんでなっちゃんそんな物騒なもの持ってんの!?」
「っはぁ、那月のやつ、料理してたんだけど‥‥なんか、色んなもの混ぜたみてぇで、いつの間にか媚薬みたいな、効果持つ液体作りやがって、そんで、味見に飲まされた‥‥っは」

息も絶え絶えにそう語る翔ちゃんは、本当に辛そうで見ている私までも息が苦しくなってきた。

「それで、なっちゃんは?どこ行ったの?」
「俺が、悪性のウィルスにでも感染したんじゃねえかって、心配して、症状調べて、薬、っ買ってくるって」
「‥‥わあ、ド天然だね」

なんて暢気なことを言っていられる状況じゃない。
頬の赤みや額、首筋の汗とか、インフルエンザの時に高熱でうなされている症状と酷似している。
もし万が一40度を越える熱だとしたら‥‥このままで言いはずがない。

(‥‥‥‥ん?でも、)

翔ちゃん、媚薬って言ってたよね。
それってつまり、興奮しちゃって、そういうことだよね。
解熱剤飲ませたらいいの?
それとも‥‥。

「しょ、翔ちゃん、私にできることって‥‥」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥悪ぃ」
「‥‥‥‥ですよね」

翔ちゃんがバツが悪そうに顔を逸らしたことにより全てを悟った。

(うわぁ、まさかこんなことになるとは思ってなかったから下着上下バラバラだよ‥‥)

「っは、名前、嫌か?」
「えっ、い、嫌じゃないよ!全然!」

嫌じゃない。
大好きな翔ちゃんだもん、全然。

ただ、ひとつ言うと‥‥。

「‥‥ちょっと、怖い」

本音がぽろりと溢れると、私に覆い被さっている翔ちゃんが身体を怖ばらせた。
ああ、そんな顔をしないで、翔ちゃん。

「…強引な翔ちゃん、初めて見たから、びっくりしただけ。大丈夫」

努めて微笑んで見せたら、翔ちゃんが苦しそうに眉を潜めて私の頬を撫でてくれた。
その骨ばった男の子の手はいつもより熱い。
私もその掌に自分の掌を重ねて、ゆっくり瞼を降ろした。

「……優しくしてね、翔ちゃん」








着ていた服はすべて脱がされちゃったけど、私の身体を這う翔ちゃんの熱を帯びた手はいつも以上に優しかった。

「しょ、ちゃん、」
「っん、」

キスを強請るように目を閉じて唇を突き出すと、必ずそれに応えてくれる。
咥内に侵入してくる舌までも普段より熱くって、私までも熱に犯されている錯覚に陥った。

「っはぁ、」
「大丈夫?」
「…ん、へーき、」

そうやって目を細めて笑ってくれる翔ちゃんだけど、辛そうなのは手にとるように分かった。
呼吸が一定のリズムを刻んでいないのも、上半身にじわりと滲んでいる汗も、吐息の熱さも。

「翔ちゃん、もう、入れていいよ」
「…っ、…や、お前、辛いだろうし…」
「辛いのは翔ちゃんでしょ?…私は大丈夫、翔ちゃんいっぱい慣らしてくれたから…」

翔ちゃんの指が蠢くたびにぐちゅぐちゅと鳴る秘部。
翔ちゃんの吐き出す熱い息が耳を掠めて、なんだか私もいつもより興奮していた。

「…で、も」

濡れたブルーの瞳が私を不安気に見下ろす。
腕を伸ばして汗ばんだ首に絡めると、背中を支えてくれた翔ちゃんは啄むように愛おしむように耳に口づけてくれた。

「…翔ちゃんの、ちょうだい」
「っば、か!」

蕾にあてがわれたそれは、ぶちゅっと派手に水音を鳴らし、ゆっくりと、しかし確実に私の中を貫いていった。

「っん、ん、」
「っあんま、力、入れんな」
「、無理だよ…っ」

だって翔ちゃんの、いつもより熱い。
結合部がじくじくと焦げているみたいに熱くて、中で蠢くそれは私のイイところばかり的確にえぐってくる。
翔ちゃんがゆらゆらと腰を動かす度に私の腰は揺らめき、鼻にかかった甘ったるい声がひっきりなしに出た。

「…っは、……痛く、ねぇ?」
「うん」
「、そっか、」
「ん、しょお、ちゃん、」
「ん?」
「しょおちゃん、すき、ぃ」
「っ」
「しょおちゃん、すき」

心に浮かぶのはそればっかり。
翔ちゃんがぎゅっと繋いでくれている右手も、私を見下ろす蒼い瞳も、私を心配して掛けてくれる声も、全部が私を好きだよって言ってくれてるみたいで、私もその返事がしたかった。
私も、翔ちゃんが大好きだよ。

「おま、あんまし、そういうの、言うなよ」
「えっ、」
「止まんね、っ」
「ひゃっ」

ズシンと突かれたところがびっくりするほど気持ち良くて、思わず背を反らした。
そんな私の反応を見て、ぺろりと赤い舌で自分の唇を舐めた翔ちゃんは意地悪そうな顔で笑った。

「ここ、イイんだ?」
「や、やだぁ」
「うそ、言うなよ?」

もう一度ズンっと突かれ、私の喉から大きな声が発せられる。

「だめ、だめだめっ、気持ち良くて、っひぁ」
「っは、かわいー」
「やぁ、しょおちゃ、ぁん、あぁっ」
「腰揺れてる、っつーの!」
「っはぁん、あっ、やらぁっ」

結合部からずぷずぷ水音が泡立つ音が立つ。
いつもの翔ちゃんと違う、その激しい攻め方と意地悪な言葉に段々と理性の箍が外れていく。

「あぅ、っ、おくぅ、」
「っここ?」
「ひゃ、ああん、きもち、っそこ」
「っ名前、名前っ」
「ふぅ、しょ、ちゃぁん」
「俺も、好きだよ、」

そう言って、唇にちゅうっと吸いつかれた。
上手い下手なんてよく分からない。
お互いの唇を擦り合わせて、熱い舌ぺちゃぺちゃと舐め合い、出し入れを繰り返した。

「っふ、んちゅ、」
「ん、っちゅ」

気持ちいい。
全部、全部。

「あっ、ちゅ、しょ、ちゃん、」
「ん?」

じわじわとやって来るこの感覚。

「っ、イキそ、」
「ん、」
「あっ、また、そこぉ」

気持ちよすぎて首をイヤイヤ振っても意地悪仕様な翔ちゃんは笑うだけで、むしろ腰を激しく動かして奥へ奥へと突きまくった。

「らめ、らよぉっ、ねぇっ、」
「おらっ、イケよ、っく」
「ひゃあっ、ああっ、やらやらっ」
「っ、」
「しょ、ちゃんっ、イク、イッちゃうよぉ」

じゅぷじゅぷ、じゅぷじゅぷ。
ああ、ダメ、気持ち良くて死にそう。

「っああ、やぁ、あぁ、ん、あっーーーー」

ズクンと奥を突かれて私は達してしまった。
はっはっと息を整えるも、翔ちゃんはまだ腰を振り続ける。

「やぁ、も、イッたから、っああ」
「俺、っまだ、イケてねぇもん、」
「ひっ、はげしっ、」

翔ちゃんもラストスパートに、腰をズンズン淫らに振って私の奥を打ち付ける。
腰を掴まれて揺さぶられたらまた感じちゃう。

「あん、っあ、」
「っ、名前、イキそ‥‥」
「ん、っひぁ、いっぱい、出してっ」
「っはぁ、っ」
「翔ちゃんの、せいしっ、欲しいよぉ」
「っく、んーーーっ」

ドクンッと中で弾けたのが分かった。ゴム越しに熱いものが叩きつけられる。

「‥‥翔ちゃん、すき‥‥‥‥」

ふわりと私の意識はそこで途切れた。










「ん‥‥」

重たい瞼を持ち上げたとき、視界に広がったのは天井。
身体にきちんと掛かっていたお布団が翔ちゃんのベッドのもので、先程までの経緯をぼんやりと思い出した。

「お?起きたか?」

ベッドの淵までやって来た翔ちゃんは髪が濡れていてどうやらお風呂に入ったようだ。

「今何時?」
「んー、20時ちょい過ぎ」
「よかった、寝過ごしてなくて」

枕元に座った翔ちゃんは目を細めて私の髪をさらさらと撫でてくれた。
情事のあとのこういう飛び切り優しい翔ちゃんが大好きだ。

「風呂、入るだろ?沸かしてあっから」
「うん。あ、でも、ご飯食べなきゃ」
「俺作っとく。お前は風呂行ってこい」
「‥‥‥‥翔ちゃんすき」
「!っお前、なんだよっ、さっきからそればっかり!」

翔ちゃんは照れ隠しに眉を釣り上げて、うりゃ!と私の髪をぐちゃぐちゃにかき混ぜた。
やめてよー、と思いもしない否定の言葉を述べてじゃれ合う。
そういう他愛もない時間があったかくて好き。

「あっ、ところで翔ちゃんもう体は平気?」
「おお、すっかり元通りだ。ありがとな」

よしよし、とぐっちゃぐちゃになった髪をまた撫でてくれて私は頬を緩めた。
ちょっと見つめてから、ゆっくり瞼を閉じるとキスの合図。
優しく降ってくるキスに私はつい何度も強請ってしまう。

「そういえば、なっちゃん遅いね。まだ帰ってきてないの?」

ふと部屋の中に私たちしかいないのに気付いて翔ちゃんに尋ねたら、あーとかうーとか唸って、それから「レンたちのとこにいる」と言った。

「?そっか。なんかお邪魔しちゃってなっちゃんに悪いなぁ」
「あーまあ、大丈夫、だろ」

ぎこちない返答が返ってきて頭にははてなマークが浮かんだけど、まあいっか!と大らかな私は大して気にしなかった。





(まさかシてる時に帰ってきて、那月のクセに空気読んで退散したなんて言えねぇ‥‥)






「おや、シノミー来てたのかい?珍しいね」
「はい。僕、お邪魔さんだったので真斗くんにこっちのお部屋に上がらせてもらいました」
「邪魔って、ケンカでもしたのかい?」
「いいえ。ふふっ」
「では、一体なんだ?」
「‥‥あー、俺分かったよ」

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444打記念のひよこ豆さんのリクエストでした。




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