「それ、どうしたんですか?」
「それって?」
「耳です、耳」

ああ、と左耳に触れた。
読書に邪魔だった横の毛を耳に掛けていたのを珍しく感じたんだろう。

「鬱陶しかったから掛けてた」
「‥‥」

お気に入りの作家の最新作。
話も終盤での怒濤の展開が繰り広げられるのをわくわくしながらページを捲る。

「‥‥」
「‥‥」
「‥‥‥‥‥‥あのさぁ、」
「はい?」

ちらりと見上げればそこには何をするでもなく立ったままでこちらを見ているトキヤがいる。

「どうしたの?なんかある?」
「‥‥いいえ?」
「じゃあなんでそこに立ってるの。絶対なんかあるでしょ」

ストーリーが気にはなるもののトキヤの視線がそれを妨害してくる。
私は一旦栞を挟み込み、本をパタンと閉じた。

「さあ、なぁに?言ってごらん?」
「‥‥‥‥耳、」
「耳?」
「耳を、触っていいですか?」
「え?うん、いいけど」

初めての要求に私は特に深く考えず頷いた。
仮にも恋人だ、耳くらい触られたってどうってことない。

一歩二歩とトキヤは近付き、片膝をソファに乗り上げた。
私を跨ぐようにして体を覆い被せる。

「では‥‥」

そろりと伸びる指。
縁の軟骨を人差し指でするりと撫でられる。

「ん、」
「小さいですね‥‥」

軟骨を指で摘まれコリコリと嬲る。

「くすぐったい」
「ここも、小さい」

ぷに、と触れた耳朶。
ふにふにと揉まれ、少し引っ張られる。

「、福耳じゃないから面白くないでしょ」
「いいえ、可愛いです‥‥」

ちらりと見上げればトキヤは恍惚とした表情で一心不乱に耳を凝視していた。

「かわ、いい‥‥?」
「ええ‥‥すごく、美味しそうです」

おいしそう?

トキヤがなんだかキモチワルイことを言ってるなあと思った時だった。

「ひぁ、」

ぺちゃり、と耳元で鳴る水音。

「ちょ、トキヤ、」
「少し、味見させて下さい」

耳の表面を舌でぺろぺろと舐められている。
そのくすぐったさと鼓膜へと卑猥に響くトキヤの音に私は体を怖ばらせた。

「んん、」

穴の中に侵入するトキヤの舌先。
ほとんど入らないものの、流れる唾液が穴の奥まで進み、私は背中にゾワゾワするものを感じた。

「や、」
「くちゅ、くちゅ、」

耳朶を甘噛みしたり、唇でくわえたり。
耳の裏を舐め上げられたり。
終いには耳自体をパクンと含まれて、舌が自由に動き回る。

「とき、や、やだ、」
「ん、ちゅう、」
「トキヤってば、」

胸板を押し返そうにもあまり力が込められない。
食されてる耳と反対の耳はずっと指で弄ばれてくすぐるように小指を穴の周りをクルクルと撫でる。

「ちゅ、ぐちゅ、くちゅ」
「ひゃ、ぁ、」

どうしてもこの音には適わない。
流れる唾液にピクピクと体が震えるのが事実。
ムラムラする気持ちも自然と擦り合わせてしまう膝小僧も気付かれないように必死に耐えた。

「ん、あ、っ」
「くちゅ、ちゅ、‥‥‥‥はあっ」

熱い吐息が耳に掛かるだけでも体が震えた。

「ときや、」
「ダメ、です。もう‥‥」

耳元で囁かれた声に私は顔を上げた。
頬を上気させ、目元はとろんと垂れている。
そんなトキヤを見るのは初めてで、私は手を伸ばしてそのピンク色の頬に触れようとした。
そうしたら、その手をぎゅっと掴まれた。

「とき、」
「名前、私を慰めて下さい、」
「ちょ、え、っわあっ」

そのまま引かれた手はトキヤの股間まで誘導される。

「ちょ、え、固っ」
「こうしたのは貴方ですからね、っちゅう」
「ひゃあ、」

ビクッと跳ねる肩。
いつの間にやらトキヤのせいで私まで耳で感じるようになってしまったではないか。

「名前、可愛いです、」
「ばっか、あんたのせいだからね」
「ええ、なんとでも」

集中的に耳ばかり攻められて、ソファに起こしていた上体はいつの間にか寝ている。
私が逃げられないのをいいことにトキヤは両耳を順番に弄んでは、熱い吐息を零した。

「っねえ、トキヤは耳フェチ、なの?」
「そう、ですね‥‥。貴方の耳フェチ、ですね」

ぷるぷる背筋が震える私に、トキヤはちゅっと可愛らしいリップ音をトドメに一発お見舞いしてくれた。








公式がトキヤの耳フェチをぶっこんできたのでつい。




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