過去拍手文置き場


サイト創設当初から置いていた拍手文をこちらに置いておきます。掲載した順番に載せております。
※No.3は少し長い文、悲恋気味の為キャラ毎にまとめています。





石丸


気づけば朝の6時40分。いつのまにか朝になっている事実を突きつけられ、咄嗟に今日の日付を確認する。……なんてことのない授業のある木曜日だ。

次は昨晩のことを必死に思い出す。夏の試験前ということで何人かで集まって勉強会したんだっけ。頭の良い石丸君の部屋に入って勉強して…それで?
石丸君の部屋にあった参考書を借りてソファに座って勉強していたら次第に疲れちゃって、そのまま横になって…。

ってことは?最後の記憶に辿り着いて周りを見渡す。見覚えのある部屋だ。机の上にある山積みの参考書は確実に私の部屋ではない。
勉強に使っていたソファで横になっていた私はヒュッと心臓が縮こまってしまう。

石丸君の部屋で一夜を過ごしてしまったと言えば語弊を生んでしまうんだけど実際に事実だ。どうして友人は起こしてくれなかったのか?きっと体を揺することはされた筈なんだろうけど私は起きなかったみたいだ。寝相と寝起きの悪さだけは超高校級かもしれない。

って自分を納得させている場合では無い。とっとと部屋の主に謝らなきゃ。と思ったがいない。体勢を起こす衣擦れの音と時計の音だけ部屋中に響く。
そういえば木曜日は早朝の校内見回りの時間だったことを思い出す。早朝から仕事なんて大変な委員会だなぁと思いながら帰りを待つことにする。
私が寝てしまった後に掛けられたであろうブランケットのお礼もしないといけないから。



左右田


「左右田ー、今から言うことメモして」
「いや、オメーがやれよッ!」
「ごめん、本当に両手が空いてない」

体をズラして左右田に見えるようにする。パソコンから出てくる数十本のコードやケーブルを10本の指で何とか分類分けしていた。
それを見た左右田は仕方ねェなと文句言いつつメモ帳を取り出してくれた。分類毎に分けたコードの型番を伝えた後に左右田を見ると走り書きでペンを走らせていた。

パソコンが壊れたという依頼を左右田が目を輝かせながら引き受け、機械修理の知識を持っていた私が一応という形で連れ出された。
結果、直る見込みはあるが交換部品が手元に無い為に左右田にメモをとってもらった。

「ほら、メモ」
「ありがとうー……え?はっ!?嘘でしょ!?」
「……んだよ、うるせーヤツだな」
「走り書きだったのにそんな綺麗に書けるの!?」

メモの内容を見て驚愕する。型番は間違ってない。それよりも字が達筆なのだ。字の大きさはほぼ同じ、文字列が斜めになっていない……綺麗な字だった。寧ろ私がメモする側じゃなくて良かったと思える。驚く私を横目に左右田は照れ臭そうに呟いた。

「あのな?こういう修理で字が汚くてミスったらヤベーだろが」
「まぁ、確かに。でも何かイメージと合わないよ。偏見になっちゃうけど字が汚いイメージが強かった」
「スゲー偏見。イメージで言われたくねーよ」
「ごめんって。本当にありがとう!」
「じゃ、オレの手柄でいいな?」

左右田は私の手からメモを取り、最近の流行りの歌を鼻歌で歌いながらその場を離れようとする。なんっって調子が良いんだ…不具合を見つけたのはこっちなのに!ゴネてやろうと口を開こうとすると左右田は振り向く。

「オメーと修理出来て楽しかったぜ」
「え」
「次は…、どっか遊びに行こうな?」
「……うん」

私が頷くと左右田はそれを見て喜色満面に溢れながら依頼者の元へ向かった。………手柄は左右田だけのものになっちゃったけどもういいやとさえ思える程に私の頬は幸せで緩んでいた。











「石丸クン!結婚おめでとう!」


黒いスーツで僕を祝う苗木くんは実に晴れやかな笑顔だった。彼の左手の薬指を見つめながら、僕も彼のように遂に自分自身で家族を持つのだと実感する。


苗木くんや兄弟、そして78期生やお世話になった先輩や先生方、仕事先の同僚が僕達を祝ってくれている。
誰もが幸せの瞬間。そう思うだろう。


……この場にあの子はいない。
分かっていた。それなのに酷く心を締めつけた。

僕は酷い人間だ。
仕事の順調、人間関係は良好、僕の代まであった借金も返済し、家族も幸せになっている。妻となる女性ともこうして式を挙げている。
それでも満たされない何かがあった。きっと目の前のこの人には絶対に埋められない。
埋められるのはやはり…


_____幸せになって。


招待客達の中で聞こえた彼女の声の方に振り向いても見知った人物なんてどこにもいなかった。
期待した分だけ悲しみは募っていくばかりだ。


「清多夏?」


ハッと我に帰る。隣にはウエディングドレスを纏った妻が心配そうに見つめる。


「泣いているの?どうして?」


頬に流れる一筋の涙の存在を言われて気づいた。一体あの子はどこに行ってしまったのだろうか。元気にやっているのだろうか。そんなこともう知る手段なんて無かった。


「…このときが嬉しくてつい。大人になって涙脆くなってしまったようだ」


僕は妻にそう言うと、妻は目を細めて笑った。

…嘘をついた。本当は彼女に会いたい想いで泣いていたなんて言えない。
あの子、彼女を忘れるまで僕はずっと嘘を吐き続けるのだろう。
僕は最低、最悪の人間だ。






「あのときはキラキラしてたんだ。ソニアさんがいた世界が輝いていて。…今ではすっかり目の前の世界がセピア色みてーに色が霞んじまって」
「言っとくけど。そう僕が凹んでいる程愛していた、なんて馬鹿なことは言わないでね」
「…分かってる」


言葉のキャッチボールが一旦止まる。2人の間を重い空気が流れている。


「それでも、……オレは」


嗚呼またか。左右田くんの悪い癖。
どうして固執し続けるのだろう。もはや愛なんて無くて執着そのものだ。


だからソニアちゃんも愛想が尽きたんだよ。


吐き捨てようとした言葉を何とか喉の奥で押さえ込む。追撃したら彼が何をするか分かったもんじゃないから。


「オレだって、諦めきれねーんだよ」


ボロボロと大粒の涙が彼の両目から溢れ、地面を濡らした。
これも悪い癖。私が泣いている左右田くんを見捨てられないことを知ってて泣いているんじゃないだろうか。
って最初は思っていた。


「分かった分かった、思いきり泣いていいから」
「………」


震える肩を寄せると彼は声を上げて涙を溢した。袖を握る手が強くて自然と彼の方に引き寄せられた。

左右田くんは失恋して苦しくて誰かに助けを求めている。"一時的に"心の傷を埋める存在を欲している。
損な役回りやめなよって真昼ちゃんと日寄子ちゃんが言っていた。左右田が好きなら尚更立ち直るのを待ってればいい。都合の良い女になっちゃダメだって。

最もだった。こんなことして左右田くんが私を好きになる筈がない。
元気になったらまたソニアちゃんの所へ行ってしまうなんて分かっていた。


私は踏み台にしかすぎない。だけれども放っておくほどの冷酷さなんて無かった。
自分自身ソニアちゃんに勝てる要素なんてなかった。だからこうして弱った左右田くんにつけ込んで振り向いてもらおうなんて思っていた。

最早私も左右田くんに愛なんて無くて、ただ執着していたいだけかもしれない。

あまりにも虚しい。この気持ちに盲目になっていた馬鹿がこんな所にいたなんて。







石丸


希望ヶ峰学園の廊下を歩いていると石丸君と出会った。

「こんにちは」
「こんにちは!良い挨拶だな!この後予定ってあるのか?」
「?…この後予定は無いよ?」
「それなら勉強しようではないか!」

突然のことに声を出してしまった。

「え、えっー!?」
「さあ参考書持って始めようではないか!第一、君は少し成績が悪いようだ。君が逃げないように僕がずっと一緒にいよう!」
「…あ!風紀が…男女2人だけはマズイんじゃ…」
「大丈夫だ!誰かしらいる食堂や図書館でなら問題無いだろう!さあ行くぞッ!」

この後物凄く石丸君に勉強を教えられた。そのおかげで成績はすごい上がったのはその後の話である。



左右田


学園の中庭を歩いていると左右田君と出会った。

「あっ、左右田君!」
「…………あぁ、オメーか」
「…フラれたね?」
「…っ!うっせー!何で分かるんだよ!」

顔に出てるよ、そう思いつつ中庭にある自販機を指差した。

「…好きなの奢るよ」
「マジ?サンキュー!」
「コーラでいい?」
「んー、今日はレモンスカッシュでいいわ」
「私がいつも飲んでるやつと被った…えー何飲もう?」
「えっ、オレと飲み物被るのそんなに嫌かよ!?」
「嫌じゃないけど………やっぱレモンスカッシュにしよ」
「ケケッ、オメーとお揃いだな!」
「う、うるさいわねっ!」
「まぁまぁ、オレの話を聞いてくれよ?」
「はいはい」

いつも中庭で話してるせいか2人は付き合ってると噂が立てられたのはその後の話である。







石丸


「石丸君!」

「ん、どうしたのかね?」

「だーいすきだよ!」

「なっ、君はこんな所で何を…!

…ぼ、僕も大好きだ!」



左右田


「…何とかなりそう?」

「大丈夫だな。もう少しで直るぜ」

「本当!?ありがとう、左右田君」

「おう、お礼にオレに甘いのくれよな!」

「うん、もちろんだよ!」



おまけ


「左右田くんッ!君はいつまでその髪のままなのかね!」

「あー、ヤベー奴に止められたなぁ。あのな!オメーは厳しすぎるんだよっ!」

「厳しいとは何かねッ!規律を少しでも崩せば一気に風紀が乱れるんだぞッ」

「分かった分かった!オメーのいうことは分かった!」

「そうか!では髪の色直してくれるのだな!」

「だけどよォ、石丸。オメーも何だかんだ不純異性交遊してるんじゃねぇか?」

「ななななな……っっ!何を言うかッ左右田くん!」

「動揺しまくりじゃねーか…好きなやついんだろォ!?それでよく話しかけてるって聞いてるぜッ!オメーもソレなんとかしねぇならオレだって変わらねぇぞ?」

「うっぐぐ…あれはあくまでも勉強教えてるだけだッ!不純ではないッッ!」

「ま、そーいうことにしとくよ…」



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