「ねぇ左右田君」
「ん、どうした?」
「ペンギン殿堂行く?」
「……ペンギン殿堂?」


恐る恐る声をかけると左右田君は案の定目を丸くしてキョトンとしていた。
無理もないよね、お互い仕事が無い日の夜9時にこんなこと言い出したのだから。


「な、何で?何か買うのか?」
「いや…ぶらぶらしようかなって」
「あー、良いのあったら買うやつか」
「そうだねー、そんな感じ」


どうかな?と聞くとソファで寝転がってた左右田君は体を起こし、いいぜとOKを貰った。


店内は品揃えが豊富すぎる故、少しごちゃごちゃとしているが何故だか好きだ。何かあるかもしれないというワクワク感が出てくるからだ。店内は店のテーマソングが延々と流れてくる。


「しかし意外だな」
「ん?」


後ろにいた左右田君の声に顔だけ後ろを向く。


「こういう店の客層ってヤンキーばっかであんまし良くねーんだけどな。みょうじも行くもんなんだなって」
「そう?」
「おう、結構意外。まァオレもたまーに1人で来るけどよ」
「左右田君ヤンキーっぽいもんね」
「いや、どういうことだよ!オレは結構真面目だぜ?」


なっ?と強く訴える彼にそうだね、と言いながら店内を歩く。家電製品や雑貨、ちょっとした遊び道具に色々と話しながら見て回る。


「そういえば、左右田君はいつもソファで寝てるけど大丈夫?」
「ん?結構ソファ大きいし、寝心地いいからベッドはいらないぜ?」
「そう?」
「あ、でも毛布はもう1枚あると助かる」
「はーい、じゃあ見ていこうか」


家具が置いてあるコーナーで毛布を探す。サンプル用の毛布を触り心地を確かめながらコレ気持ちいいなとか話していく。
…まるで居候ではなくて本当に同棲しているみたいだって思えてくる。何故こんなことをふと思ってしまったのか分からない。まさか私は彼のことが好きなんだろうか?


「みょうじ?」
「ん?」
「ほらよっ」
「わっ」


突然視界が真っ暗になるものの、程よい感触に眠くなりそうになる。被せられたものを取ると自由に触れるサンプル用の用の毛布だ。
それを引っぺがすと悪戯心が出てる左右田君のニヤニヤ顔が見えた。


「もー、急にやめて!」
「ヘヘッ、みょうじ元気なかったからな」
「…そう?」
「さっきもボーッとしてたろ?だからオレがみょうじを励ましてやったわけ」
「…」


だからって急に驚かすことはないよなぁ。そもそも左右田君のことを考えてたわけだし…そう思いつつも彼なりの励ましに少し嬉しかったりする自分がここにいた。


「ごめんね、ボーッとしちゃって」
「謝らなくてもいいって!あ、あとオレはコレがいいかな」
「うん、触り心地めっちゃいいね!」
「だろ?」


後は安くなっていた洗剤や左右田君の部屋着の服とか買ってお店を出る。荷物を車に乗せてさて帰ろうかと思ったときだ。


「みょうじさ」
「何?」
「……あー、明日って仕事じゃん、オレもそうだから」
「うん」
「あいついるの?」
「…多分いる」
「そうか、何かあったら言えよ?」
「ありがとう」


質問される前の間が何となく長いのが気になったものの気にしないことにした。エンジンをかけると左右田君から結構使ってるんだな、とポツリと聞こえる。エンジン音だけで分かる左右田君はやはり何か整備士関連の仕事をしていたのだろうか?ただ単に機械系が好きなだけか。

ゆっくりと車を動かしながら左右田君について考える。左右田君から話してくれないのだから当然なんだけど、まだ彼の過去が分からない。いずれ話してくれることになったら嬉しいけど、きっと過去を振り返らずに生きていくと決めたのかもしれない。そう思うと私の方から言いにくい。

とはいえ、左右田君は私の家事の手伝いをしてくれて大変助かっているし、とても優しい。
私と仲良くなってくれたら嬉しいなって思いつつ自宅のあるマンションまで車を走らせた。





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