「……」


目を覚ますと白い天井が見える。寝ぼけた頭を回転させればここはどこかの病室だということが分かった。
窓から差し込む日差しが眩しいと手を覆うと、ガチャリと何か扉が開く音がした。


「みょうじさん!ご気分はいかがでしょうか?」
「あっ…!」


ソニア王女が笑顔でこちらに駆け寄ってくる。久々の再会だからか嬉しくなってくる。


「そ、ソニアさん!」
「わたくしのことを覚えてくださって…すごく嬉しいですわ!」


覚え……。
この言葉にハッとする。確か私はモノクマに変な飲み物を飲まされて気を失って、"記憶を消す"とか何とか言われて…。

でも私は現にソニア王女のことを覚えている。そして左右田君のことも。


「ここは…」
「ノヴォセリック王国の病院ですわ」
「……あの、私、モノクマに」


ソニア王女はハテナマークを浮かべて首をかしげる。そっか、モノクマは私達で勝手に呼んでいるだけだから知らないのか。モノクマの本名を告げるとソニア王女は満面の笑みから真面目な表情へ変わった。

今まで起きたことをソニア王女から全て教えてもらった。果たしてこれは本当のことなのか今だに信じられない。

過去に私はノヴォセリック王国で左右田君と会っていて、事件をきっかけに2人で記憶を消したこと。
でもその事件の本当の犯人はモノクマでその罪を私か左右田君に被せようとしたこと。
実はモノクマは王族でその正体を隠して日本へ来たこと。
左右田君が2回目の記憶喪失をしてしまったのはモノクマの仲間がやったこと。でも本当は私を大怪我させるつもりだったみたい。私を助ける代わりに左右田君をノヴォセリック王国へ連れ出そうとモノクマが企んでいた、らしくて。


「他にも音楽祭の参加者達に飛行機をキャンセルさせたのも彼です。飛行機の不具合と伝えてキャンセルさせたみたいですわ」
「…モノクマはそこまで、どうして私を?」
「それは決まっています。みょうじさんがとても可愛いからですわ」
「そ、そんなこと言われても……」
「でも王族とはいえ、そんなことをしたので彼は逮捕されましたわ。国民も彼の横暴な行動に批判しておりますし、もうみょうじさんのもとに現れませんわ」
「…ソニアさん、あの、左右田君は」
「ええ、不敬罪もモノクマの嘘でしたから左右田さんは無罪で釈放になりましたわ」
「……ああ、良かった……」


ほっと胸をなでおろす。私のその姿にソニア王女は微笑んだ。


「ふふ、彼も同じようなことをしてましたわ」
「えっ?」
「左右田さんもみょうじさんの無事が確認出来たときも安堵していて、今のみょうじさんと同じ顔してましたわよ」
「そ、左右田君も…」


私のことを思っていてくれたのだろうか。嬉しくてニヤニヤが止まらなくなる。


「あ、あの左右田君はどこに?」
「……実は左右田さんはあの後頭痛を起こして気を失ってしまったのです」
「えっ!?」
「大丈夫です、命に別状はありませんわ。同じ病院でお休みになられています」
「そ、そうですか…」


頭痛という言葉に左右田君の苦しむ姿が思い浮かぶ。病院で握りしめた手は忘れてなんかいない。


「みょうじさんは目を覚まし次第診察を行なって、大丈夫そうなら退院出来ます。その後に左右田さんに会いに行きましょう」
「はい、ありがとうございます」
「何でもソニアにお任せくださいね!」


いつもの笑顔のソニア王女が太陽のように輝いて女神様に見える。
ソニア王女に連れられて診察が行われる。難しい言葉はちんぷんかんぷんだったけどソニア王女の通訳のお陰で話を進められる。
私の体に異常は見当たらず退院という形になった。


「ありがとうございます、何から何まで」
「ふふ、元気になってくれて嬉しいですわ!それにみょうじさんに音楽祭に出て欲しいです。そっちの方が気持ちは強いですわね」
「音楽祭…」
「どうされましたか?」
「私、サックスを持ってきた筈なんですけど…見当たらなくて」


そう、飛行機の積荷でサックスを預けた筈なのだ。しかしあんなことが起きてしまってからサックスが何処かにいってしまった。空港に問い合わせてもサックスはモノクマが引き取ったと言い、行方が分からなくなっていた。


「…非常に言いにくいのですが、彼を捕らえる際に荷物検査を行ったのです」
「はい」
「そのときにサックスの吹き口のパーツだけ見つかりましたわ。問い詰めた所みょうじさんのサックスだそうで…恐らくもうバラバラに壊されてしまったかと」
「うう…。何でマウスピースだけ持ってたのか想像するのやめます。音楽祭、明後日なのに」
「大丈夫です、以前来日パーティで演奏していただいた際のサックスがこちらにあります。そちらをお使いください」
「ありがとうございます、本当に頭が上がりません」


深くお辞儀をする。ソニア王女にはずっとお世話になりっぱなしだ。


「いえ、みょうじさんは素晴らしい音楽を奏でてくれるだけでいいのです!」
「でしたら、良い演奏出来るように頑張りますね!」
「はい!きっと左右田さんも喜んでくれると思います!」


ソニアさんがある病室のノックを叩き、中にいる人物に会釈をした後にどうぞと案内される。

こんなに緊張すること有っただろうか。ただ会いに行くだけなのに心臓の高鳴りがここまで聞こえてくる。

そろりそろりと歩いて病室に入ると高鳴りは最高潮に達した。


「…みょうじさん!」
「左右田君…」


頭痛で倒れちゃって貴女に恥ずかしい所を…そう言って照れ笑いする左右田君は紛れも無い左右田君だった。
ソニアさんから左右田君は無罪となったと聞いて酷く安心した。そして、今こうして再会して胸が熱くなり、温かいものが込み上げてくる。


「左右田君!」
「っ、みょうじさんっ!?」


ゆっくり駆け寄った後に強く彼を抱きしめた。相手は驚いていたみたいで暫くするとそっと私の背中に手を回してくれた。
うん、この温かさは紛れもない左右田君のものだ。


「…心配してたんだよ、急に1人だけ行っちゃうんだから。死んじゃうんじゃないかって、物凄く怖かった」
「…ごめんなさい。僕なりにみょうじさんのことを考えたつもりなのですが」
「むー…言いたいこと沢山あったけど…本当に会えて良かった…」


左右田君の着ている服に皺が出来てしまうほど強く抱きしめる。夢なんかではない、現実だと何回も確認する為に。


「僕の為に会いに来てくれたんですか?」


その言葉に強く首を縦に振ると、背中にあった手は私の肩へするりと動き、向かい合う形になる。


「とても嬉しいです」


苦しくなる程温かい笑顔を見せてくる。
狡い、こんな笑顔見せられたら我慢していた涙が一気に溢れる。左右田君は一瞬驚いていたものの私の頭を撫でてくれた。


「音楽祭は出れるくらいに元気になれましたか?無理はしなくて大丈夫です」
「もちろんだよ、元よりその気でここに来たんだから」
「本当に?」
「本当」


何回も確認されるけど、大丈夫と告げる度彼の顔が綻んでいく。


「良かった、楽しみにしていたんです。みょうじさんの演奏聴きたかったから」
「ありがとう、左右田君の為に沢山練習してきたんだ。それで…日本へ帰ったら一緒に行って欲しい所があるんだ」
「行って欲しい所?」
「うん。私が好きって告白した場所があるんだ。遊園地の近くにある海辺なんだけど…いいかな?」
「もちろんです。一緒に行きましょう」


ぎゅっと私の手を握る左右田君。男らしい骨ばった手つきを懐かしく思いながら強く握り返した。


……


左右田君に会えたという事実が嬉しくって何もかもが輝いていたし、音楽祭の当日なんて朝から元気いっぱいだった。
左右田君は今日で退院みたいで私の泊まるホテルにいなかった。おはようの言葉くらい聞きたかったなぁなんてわがままを思いながら、ソニア王女から頂いたサックスのメンテナンスを行った。


モノクマに飛行機の搭乗キャンセルを強いられた人達も音楽祭に間に合い、みんなが幸せそうに演奏を始めた。
王国で1番大きい広場の真ん中で演奏をして周りの者がお祭りのように盛り上げてくれる。

素敵な場所だ、こんなに綺麗な所で演奏が出来るなんて。同時にこんな場所で声を上げようとした自分を少し恥ずかしく思いつつも、そうする必要も無くなった為考えるのをやめた。

キッチリとスーツを決めた司会の男性が私の名前を呼び、念入りにチューニングされたサックスを持っていく。
広場の真ん中に足を踏み入れると周りはカラフルな世界へと変わっていく。
世界中の人達が集まり、様々な服を身に纏い楽しそうにしている。非日常的で幻想的だった。司会の人が話す内容は英語だったものの、どうやら私の演奏がソニア王女に気に入られているという内容だったようで周りから歓声を浴びた。どうぞ、という声で手元のサックスを構える。

……私がこれから演奏するのはかつて遊園地で演奏し、ソニア王女の前でも演奏したセレナーデのアレンジだ。
元々ピアノが入ってのセレナーデだったけど、サックスだけでも充分な位に仕上げてきた。
目の前の待ち望む人達に、お世話になった人達に、そして。

目線を真っ直ぐ向けるとその先、人集りの後ろあたりにこちらを見つめている左右田君。
1番に伝えたい人物にほんの少しだけ笑いかけ、曲の冒頭を吹き始める。

君の為にセレナーデを。





------"みょうじ"

たった数分、それでも私にとっては今までの出来事が走馬灯として浮かび上がる程長い演奏。私の中で時間が止まっていた。その位に集中していた。その中で思い描いた左右田君はかつての姿で私を呼んでいた。

緊張は不思議としなかった。演奏がピタリと終わった瞬間、私の中の時は再度流れ出した。

浴びるような歓声と拍手が広場を包み込む。
最初は何が起きたか分からず、けど観客にお礼を言うように深くお辞儀をする。観客達にも伝わったようでまた更に歓声と拍手が私を迎えてくれた。

自分の演奏が終わると楽しい時間なんてあっという間で全ての演奏者の演奏が終わり、名残惜しい閉幕をソニア王女が告げる。
同じ音楽祭で演奏した演奏者達と話し込んでいると音楽祭のスタッフが私の肩を叩いて私を呼ぶ。


「どうしましたか?」
「大至急来てください。ソニア様が貴女をお呼びになってます」


ソニア王女が…?
用件は何だろうと思いながらもスタッフの後を追う。広場から少し離れた建物に関係者入り口と英語で書かれた部屋があり、そこへ案内される。
何だか何かを待ち受けているような気がして、ノブに手をかけるのを戸惑ってしまう。第六感…?自分の勘なんて当たらないよね、なんて思いつつもやけにドキドキとしてしまう。
深く深呼吸をしてノックをすると、ノックをした場所とは違う扉からソニア王女が出てきた。


「みょうじさん!音楽祭お疲れ様でした!」
「えっ!?ソニアさん!?私のこと、ソニアさんが呼んだのでは…?」
「ふふ、確かに呼び出しをしたのはわたくしです。その呼び出しをしてほしいと頼んだのは左右田さんですわ」


ソニア王女は何か良いことがあったのだろうか。喜びと嬉しさを表現したような満面の笑みで、キラキラと輝いた瞳で私を見つめる。


「左右田君が?」
「ええ、この扉に入れば用件がすぐに理解しますわ!ふふ、お楽しみくださいまし!」


ソニアさんは従者らしき女性を呼んだ後、私に深いお辞儀をしてその場を去ってしまう。
用件とは…そう思いながら彼の名前を呼びながら部屋に入る。



「左右田……く……」



彼の姿に驚愕した。
ノヴォセリック王国の服だろうか。男性らしいカジュアルな服装にドキリと胸が高鳴る。
それよりも彼の髪型だ。
前髪はトサカヘアーのように上げ、顔の左側に小さい三つ編みを編んでいる。お陰で彼の耳朶がよく見えて、そこには金属のボルトのようなピアスがついていた。

病院にいたときの彼とは大違い。いや…記憶を失う前の彼の姿に戻っていた。

私の声に反応して振り向いた左右田君はギザギザの歯を見せて笑顔を見せてくれた。


「"ただいま"。みょうじ」


全身のありとあらゆるものがドクンと音を立てる。懐かしい、それ以外の感情がすぐに出なかった。固まった私を見て少し戸惑った様子を見せる。


「まァ…予想どーりつーかなんつーか…。へへ、何だか恥ずいな。ちょっと前に会ってる筈なんだけどよ」
「え、えっと、…えっ?」
「無理もねーよなァ。まさか全ての記憶戻っちまうなんて。オレだって信じられねーよ」


左右田君の口調は演技なんかではない。一言一句、イントネーションも"あのとき"の左右田君だ。
理解する度に、じんわりと胸が温かくなる。


「左右田君!?……良かったぁ!!」
「お、オイ!そんなに掴むなって!」
「ねぇ、左右田君」
「な、何だよそんなに嬉しそうにニヤニヤしやがってよ」
「一緒に帰ろう、それで買い物にも行きたいし、部屋の掃除もしたいし、…それに海を2人で歩きたい!」
「……へへ、やることいっぱいだな」


後になってはしゃぎ過ぎたかな、なんて後悔しつつもやはり余韻に浸りたくってぎゅっと左右田君の袖を握りしめた。


……


パチパチと拍手が送られる。ノヴォセリック王国の広場程広くないけど私にとっては落ち着く場所だ。


「なまえちゃん、流石の演奏ね!」
「ありがとうございます、マスター」


マスターとカウンター越しに向かい合わせに座る。あれから沢山のテレビのオファーを頂き、出演も恥ずかしながら増えた。それでもこのバーの空間が好きで、出演もしつつバーの演奏者として働いてる。


「澪田唯吹ちゃんも海外ツアーでしょ!?もう有名になっちゃってアタシも嬉しいわ」
「そうですね!でも私はここで働き続けたいですよ?」
「あらぁ嬉しいわ」


澪田さんも息の合うメンバーと出会えたみたいでガールズバンドで海外ツアーを開催することになった。
マスターから頂いたジュースを飲むと、ドアが開いたことを知らせるベルが鳴った。
私が待ち望んでいた人に自然と口角が上がる。


「左右田君」
「ふー、やっと片付いたぜ」
「お疲れ様!」


私からしたら新鮮な感じだ。左右田君は黄色い派手なツナギを着ている。超高校級のメカニックを探し当てたとある企業が彼の才能を買ってロケットに関係する仕事に就くことが出来た。つまりロケットを造りたいという彼の夢は叶ったのである。彼曰く毎日が大変だけど楽しいみたい。


「全く、和一ちゃんだから許してるけど本当はしっかりしたお店なんだからある程度のドレスコードは必要よ!」
「あー、分かったって。けどみょうじの運転は心地いいからつい家まで送って欲しくて寄っちまいたくなるんだよな」
「あーあー、すーぐ惚気だわもう!」
「あはは…」


バーの仕事はもう辞めてはいるけど時々メンテナンスで来てくれるみたいで、その日がとても幸せ。


「さて、マスター。そろそろお暇しますね」
「ええ、また明後日かしらね。いつでも待ってるわ!」
「んじゃ、お疲れさん」


マスターに別れの言葉を告げ2人で車に乗って帰路につく。
そういえば、と私から話し始める。


「左右田君って私を助けてくれたんだよね?」
「ん……まァ」
「ソニアさんに制御室にあった機械を任されたって聞いたんだ。すごいなって」
「おう、あのときは勝手に指先が動いちまったな。ま、要はオレの体が覚えてたってことだよな!」
「うん、それが無ければ私は左右田君のこと忘れてたんだなって…」
「…そんなことになってもオレは無理矢理にでも思い出させてやるって。…そういやあの後倒れたみてーだけどよ、夢を見たんだわ」
「夢?」


赤信号になったタイミングでチラッと横目に左右田君を見る。左右田君はドアガラスに頭を寄せながら窓の向こうを見つめる。


「オレのようでオレではないヤツがみょうじを呼んでいたんだ。その度にオメーは嬉しそうにこっちに駆け寄って沢山話を聞かせてくれるんだよ。…今思えばオレらの何気ない日常を切り取った場面だった。あんときはオレも記憶失ってたから本当にオレだったのか?って疑問があったけど、あれはオレだったんだ」
「………んー、つまり記憶失っていた一人称が僕の左右田君が見ていた夢は、今のありのままの左右田君と私が過ごしてきた日常ってことかな」
「そういうことになるな」


何だか難しいなぁなんて思いつつ、車を走らせる。


「そういえば、いつ記憶が戻ったの?」
「…オメーの演奏だ」
「え?」
「あのときオメーはセレナーデを演奏しただろ?あの曲を聴いているとオレの中の全ての記憶が一気に溢れかえったんだ。
…つまり、オメーの演奏がトリガーとなった訳。信じられなかったらそれでいいけどよ」


初めて聞いた。まさか私の演奏で記憶が戻ったなんて。その事実に驚愕しつつ、何を言いだせばいいか分からなかった。


「何て言うか、ありがとう」
「おう、でもみょうじ」
「ん?」
「オレは確かに記憶を取り戻したけどよ。オレが好きなのはオメーだから」


な?とギザギザの歯を僅かに見せる左右田君に笑みをこぼす。
もしかしてソニアさんと付き合っていた記憶も戻ったのかなって思いつつ、わざわざそう言ってくれる左右田君がとても愛おしく感じた。


「うふふ、ありがとう。私も左右田君が大好きだよ」
「オレも大好きだ。なぁ明日仕事休みだろ?」
「うん、休みだよ」
「今となっちゃ夜中だし、誰もいねーと思うから海へ行かねェか?」
「…海?」
「オメーはよ…2人で砂浜を歩きてーんだろ?何ならこのまま夜更かしして海から見える朝日を拝もうぜ!」


ニコニコと笑う左右田君。正直言えば少しだけ眠気はあったものの、彼のお誘いを断りたくなかった。寝たくなったら車の中で寝ればいいし。


「いいよ。じゃ、行こっか!」
「おう!」


ハンドルを切って海の方へ向かう。少し張り切りすぎたせいと疲労からか左右田君の車酔いが出てきてしまったものの、窓を開けたりして何とか落ち着いてくれた。

また2人で海を眺めながら歩ける、こんな幸せなことがあっていいのだろうか。
いや、いい。今までが非日常だっただけなんだ。


「左右田く………、…か、和一君?」
「……な、何だよ。言うならしっかりしてくれよ」
「和一君、これからも一緒にいてくれる?」


あの時告白されたときみたいに駐車場に車を停め、潮風を浴びながら問いかける。
僅かに聞こえる波の音が心を落ち着かせてくれた。


「……」
「ど、どうしたの?」


返答がない。駄目だったかな、と彼の方へ振り向く。

その瞬間、私の肩に手が置かれ、唇に柔らかい感触を覚える。
気づけば目の前には和一君の顔があって、優しく口づけを交わしたと頭の中で理解した。


「ずっといるに決まってるだろ、なまえ」


ほんの少し震えた彼の唇は肯定の意味が込められている。真剣な眼差しに対して恥じらいを込めた桃色の頬。そんな和一君の姿を見れることが幸せで、強く彼の体を抱きしめた。


END





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