希望ヶ峰学園から生徒が解放された_____


そのニュースは世界中を歓喜の渦に飲み込んだ。
世界生中継していたコロシアイは無くなり、世界は散らばった絶望の残党の更生そして街の復興へ向けて希望を見出している。



命からがら生き残った自分はとある所に来ている。そこは未来機関と呼ばれる場所だ。足早に廊下を歩いている眼鏡をかけた男性の後を追う。
他の部屋の扉とは全く違う、豪華な木の彫刻が施された扉を男性が開ける。



「…入れ」
「はい、失礼します」



男性より先に部屋に入ると、内装も凄いものだった。赤いカーペットが敷かれていて、壁には書物がびっしりと並んでいる。
入って来た扉から正面に見える窓は太陽の光がこの部屋を照らし部屋の真ん中に机があり、椅子が何脚か置いてある。豪華な会議室と言ったところか。
部屋には人が2人立っている。茶髪の男性と紫と銀を混ぜたような髪色の女性だ。



「初めまして、君がみょうじなまえさんだね?」
「はい、みょうじなまえと申します」
「僕は苗木誠。どうぞ、座ってください」
「はい、失礼します」



私は彼らに軽くお辞儀をして椅子に座る。座った途端にティーカップと美味しそうな御茶菓子が目の前に置かれる。見上げると先程の女性だ。


「…リラックスしてていいわよ、そんな緊張していると私達も緊張してしまうわ」
「……!?き、恐縮です」


女の勘とでもいうのだろうか?緊張していることを隠していたつもりだがすぐに見抜かれてしまった。女性は笑みを浮かべて椅子に座った。

「私は霧切響子よ。今後ともよろしくね」

霧切さんの自己紹介が終わると扉の近くで立っている男性は眉間に眉をひそめ、少し不機嫌そうに口を開く。

「…十神白夜だ」

十神さんに軽く会釈すると苗木さんから紙の資料を受け取る。ハンコで押された持ち出し厳禁という文字に資料を持つ手が震えそうだ。
ページをめくると絶望の残党が引き起こした事件一覧と未来機関の概要について書かれている。


「みょうじさん、君にお願いしたいのはある人を守ってもらいたいんだ」
「!」


十神さんに声を掛けられて、何も聞かされずにただついていった私にとって藪から棒である。
そもそも私にそのような力があるのだろうか?

「な、何故私が選ばれたのです?人を守るだなんて…」
「…そうね、あなたは何も分からないからこれを見て頂戴」


霧切さんから1枚の紙を貰う。そこには私の顔写真が貼られており、私の出生や学歴まで事細かに書かれていた。
こんな履歴書を書いた覚えは全く無い。はてなのマークを浮かべていると霧切さんが説明してくれた。


「それはね…希望ヶ峰学園に保管されていたのよ。本来入学するはずだった79期生の書類、つまりあなたは入学予定だったのよ。…あの事件が起きてしまったから学園関係者もあなたに伝える前に亡くなってしまったのだけれど」

「え、えっ!?嘘ですよね?私が入学予定だったなんて…」
「事実だ、何でこんなときに嘘を教える必要がある?」

動揺を隠しきれていない私の声を黙らせる男性の声。十神さんが言葉を続ける。


「お前は"超高校級の便利屋"として入学予定だったんだ。書類を見てみれば、【頼まれたことは最高の形に仕上げる】とかなんとか書かれている」
「べ、便利屋…?」


確かに人に頼まれることはよくあった。人に頼まれたんだから出来るだけ良い形にしなきゃってやってきたし、それで褒められることは度々あったけど…それが超高校級と言っていいのかと言われれば物凄く疑問である。

「まあ、自信もってよ。僕達は君の才能を見込んで頼んでいるんだ」

苗木君が笑顔で励ましてくるが急にこんなことを言われてすぐに混乱が治るわけがない。

「僕達78期生は江ノ島盾子によって閉じ込められ、コロシアイをさせられそうになった。けど彼女の姉、戦刄むくろによって僕達は全員外に出られることが出来たんだ。今ここにいる僕を含めて3人78期生だよ。そして他のみんなは世界の復興の為に動いているんだ」
「な、なるほど」


話を他人事のように聞きつつ相槌を打つ。苗木さんは話を続けた。


「それでね、日本にはリーダーがいないんだ。…日本で絶望に染まっていない生き残りも多くないからね。だから僕達の中から適任の人をリーダーにしようと思ってる」
「まさか…守ってほしいというのは…」
「そう、これから総理大臣になる人…その人を守ってほしい」

…こんなにも規模がデカすぎる頼まれごとは生まれて初めてだ。そもそも総理大臣を守るのはSPの仕事では無いのだろうか?超高校級のSPはいないのか。

「みょうじさん、まだ絶望の残党は完全に殲滅していないわ。だからあの人にはあまり表に出ないようにしているの。そうしたらあの人も命の危険が高いしあなたも仕事が増えてしまうものね」
「アイツはただ顔を出さずに声明だけ出せばいいんだ、とはいえ絶対に安心って訳では無い。警備員もいるにはいるが手抜きばかりやる奴らだ。頼まれたからには…だろ?」

別に頼まれたら何でもやるって訳ではないんだけど…。
とはいえ、(本当は先輩である)3人の話によると、希望を導く総理大臣は安全面を考えて表に出さない方針だし、私にしか頼めないと言われるととても断れる空気ではない。私はまるで蛇のような目つきの十神さんに睨まれて動けない蛙のようだ。

「は、はい、自分なりに頑張ります」
「大丈夫よ、みょうじさんのサポートは78期生の先輩達にやってもらうわ。1人じゃないから誰にでも聞いていいわよ」
「フン、俺は忙しいからな。聞くなら俺以外の奴にしろ」
「あはは…僕もみょうじさんのことサポートするからよろしくね。それじゃあ、その人に会いに行こうか。違う所で仕事を進めていると思うから」

何とも個性が強い人達だ。希望ヶ峰学園の生徒達はみんなこうだったのだろうか。もし私が超高校級だったなら同級生はどういう人だったんだろう。
…今となっては妄想にしか過ぎない。とりあえず、これから会う総理大臣はどんな人だろうか。そう思いながら苗木さんの後ろについて行った。


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