退屈だ。皮肉にもこの中継されたコロシアイがこの退屈を紛らわす事が出来るのだ。だからって人を殺してほしくない。
誰も死ぬことのないハッピーエンドが待ってると根拠はないが思い始めている。

「…なぁ、なまえ。あいつらは最低でも1年間過ごしてるんだ。あいつらがその1年間ナニをしてるか分かってるか?」

突然左右田君に質問されて思わずそっちへ振り向く。
彼は床に座りながら、何かの部品を弄っている。

「…何を言ってるんです?」
「一生出られないかもしれないんだぞ?仮に出られたとしても15人じゃ世界を救うのには数が少なすぎるとは思わねぇか?」
「でも彼ら全員には才能があるんだよ、才能を発揮すればいいんじゃないですか?」

彼は私を見てため息をつく。

「…いくら才能持ったって限度はあるさ。だが人数を増やせば対抗出来るだろうな。才能持つ希望の人間ってやつを増やせば、な」
「……何が言いたいんです?」

私の言葉が怒っているようだと自分でも分かる。それはお互い約束した気持ちを踏みにじられたような感覚を覚えたからだ。

「なまえも分かったようだな、才能持つ者同士子供を作りゃいいんだよ。それでオレ達絶望に立ち向かえるだろーと考えたんだろ」
「そんなこと…ない」
「なまえ、反論が弱すぎるぜ。本当は分かってたんじゃねーのか?」
「彼はそんなことしない!」

声を張り上げて左右田君を睨みつける。彼は怖い怖いとニヤニヤしたが、すぐに真顔になり呆れながらはぁとため息をつく。

「オメー分かってんのか?石丸は堅いがルールと規律を守る。もし、子作りしなければならないというルール出来てたらあいつだってそのルール守るしかねーだろ。恋人に会えないんじゃ、どう性欲を抑える?1人でか?それでもいいけどよォ、それが一生続くと思うか?まァ記憶失ってるからそんなこと考えないか。閉じ込められた男女って生きる為に本能的に考えるだろ?」
「そんなルール作られたっていう証拠あるんですか!?」
「まーねぇな。けど、あり得る話だぜ?男女の宇宙飛行士がロケットの中で子供作ってその子供に未来を託すって話もあるくらいだ」

そんな話あるわけない。普通ならそう割り切れるだろう。だけど、今は普通じゃない。だからこそ疑ってしまう自分を殴りたくなる。
ずっと信じてる。確かに才能持った清多夏君は私みたいな何も才能のない只の大学生で良かったのかなと考えてしまう。
でも、清多夏君と過ごした時間は嘘ではないし、彼は例えルールでもしないだろうと信じるしかないのだ。ただただ。

「ってことでさ、なまえ」
「!?」

左右田君はベッドの上に座ったと思えば、背中に衝撃が走る。
気づけば、仰向けになり目の前には頬が少し火照り、恍惚の表情を浮かべる左右田君がいた。まるで捕らえた獲物をこれからいただきますといったような表情である。

会話の流れからしてすごく嫌な予感がする。このままじゃ駄目だと本能が警鐘を鳴らす。

「オレ達も対抗しようぜ、絶望の子供育ててさ」

そうして私の首筋にピリッと刺激が走った。






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