大学のラウンジにて石丸君は参考書の山に囲まれ勉強をしている。

大学の図書館に来たときは膨大な量の中、彼はお目当てのものを見つけたらしく歓喜していた。

ラウンジにて石丸君が楽しそうに勉強を進めているのはいいのだが、周りからの視線が痛すぎた。
何せ彼は希望ヶ峰学園の制服を着てきちゃってるのだから、目立つのは当然だ。声をかけようと近づく人がいたが、私と目線を合わせるなり石丸君から離れていった。携帯の画面を鏡のようにして顔を見る。特に悪いような表情はしていない。何か勘違いされているようだ。

不意に背中をトントンと叩かれ、振り向くと同じバイト先の天野君がいた。
ちょっと来てと言われて、席を外し、ラウンジの外に出る。

「みょうじさん、めっちゃ見られてる!人気者のように!」
「えーと、それは隣にいる子のおかげでしょ?」
「勿論、希望ヶ峰の生徒でしょ?みょうじさん、どこで知り合ったの?しかもあの制服は本科でしょ?」
「いや、あのバイト先だよ」

かなり知りたがっているみたいだ。天野君、目がキラキラしてる。確かに本科の人なんてあまり見ないらしいから、珍しく思ってるのだろう。けど、石丸君のことはあまり人に言いたくないし、言いふらす行為も好きじゃないから何とかはぐらかすしかない。

「…えーっ、マジすか!俺は見たことないっす!流石みょうじさん、モテるね!」
「モテる!?天野君何を言ってるの?」
「あれ?あの子と付き合ってないの?大学で一緒だからてっきり!」
「いやいや!彼がもっと勉強したいから私が連れて来ただけよ!」

天野君は目を閉じて腕組みをし、あーふんふんと独り言を呟く。そして目を開け天野君は呟く。

「"風紀委員"か」
「ん?誰が?」
「…………マジか、彼がなんて言われているかも分からなったんだね」
「いやー、疎くて。今日聞こうと思ってたの」
「超高校級の風紀委員、石丸君だね。規律に厳しいんだとか。スカウトされる前は風紀委員長をやってたみたいだし、成績はトップクラス。かなりの努力家だとか」
「な、何でそんな知ってるの?」
「希望ヶ峰学園新入生スレ見れば分かるよ、なんというかあそこの生徒ってキャラが濃いからね」
「へぇ、知らなかった。日々勉強に対して情熱あるなって思ってたけど、彼はそんな肩書きなんだね」
「もー、みょうじさん。愛しの彼のこともっと知らなきゃ駄目だよ!」
「だ、だからそんな関係じゃないんだってば!」
「みょうじさん、顔が赤いけど…」
「えっ!」

頬に両手を当てて確認する。確かに赤くなっている。私は石丸君のことをそう思っていたのだろうか。いや、ただ気になるだけだ。
天野君を見ると、ニコニコとしていた。少し気味が悪い。

「まー、相談なら受け付けるって!俺は大歓迎なんで!」

そう言って天野君は去っていく。ジャージを着ていたから部活があるのだろう。しかし、嵐が過ぎ去ったような感覚だ。すぐにラウンジに戻り、石丸君の方へ向かう。近づくと彼は私の方へ目線を合わせる。お待たせ、ごめんね。と声をかけて彼の隣に座る。

「…みょうじくん、何かあったのかね?」
「ん、知り合いがいたから少し話しただけですよ。石丸君、有名みたいだから。でもあまり石丸君のこと話してないから安心して」
「やけに視線感じると思ったらそういうことか。みょうじくんが席を外したのもそういうことか?」
「そうですね、ちょっと好奇心旺盛な知り合いだったから」
「そうだったのか。僕はてっきりみょうじくんの…いや、何でもないぞ!忘れてくれ!」
「え、な、何を思ってたのですか?」
「わわ、忘れろビーム!」
「えぇっ!」

急にその忘れろビームを放たれて後ずさりする。確かに真面目な人が急にビームを放ったら驚いて今までのことは忘れるだろう。私もそうだ。

「アッハッハ、忘れてくれたかね?」
「…うふふ、石丸君って面白いんですね」
「時には人を笑わせるのも会話が続くポイントと苗木先生に教えてもらったからな!さぁ勉強を続けようではないかッ!」
「まだやるのです?休憩した方が…」
「何を言うか!こうして一刻と時間が過ぎる!学生は暇なときだって勉強するものだぞッ!さぁみょうじくんも見ていないで勉強するのだッッ!」
「え、えぇっー…」

こうして夕方になるまでひたすら石丸君と勉強を続けることになった。
辛かったけど、石丸君の口から風紀委員だってことも学校についても色々知り得たし、無駄な時間を過ごしたわけではなかった。






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