待ち合わせは朝の9時だ。
5分前にカフェに着くと、彼はやはりそこにいた。

「おはようございます」
「おはよう、みょうじくん!では早速行こうではないかッ!」

石丸君と一緒に歩いて大学へ向かう。
カフェから大学へ行くのはそう遠くない。歩いて行ける距離ではあるが人によっては遠いかもしれない。
だけど、そんな距離も石丸君がいるだけで短く感じられるのだ。不思議なものである。
もうひとつ不思議といえば石丸君は希望ヶ峰学園の制服を着ていた。
確か学園も夏休みなはずだが…、生真面目な彼の私服を見てみたかった願望があっただけに少し残念である。

「石丸君ってもう夏休みのはずですが?」
「そうだな!みんな遊んでばかりいるがな、全く学生たるもの勉強するべきなのだがな」

彼はやれやれとした表情を浮かべる。
学生だからこそもっと遊ぶべきだと思うんだけどなぁ。

「石丸君も休みなのでは?」
「僕は休みの日も勉強に励むッ!暇なときも参考書を読んでいるな」
「は、はぁ…遊ばないの?」
「それが僕にとってなんのメリットになるのだ?」
「え、ええと……」


生真面目だと思うがあまりにも勉強のしすぎではないだろうか。彼の頭の中は一体どうなっているのだろう。頭がパンクしないのか心配になってきた。ふと思うのが、彼は少々ルールや規律に縛られすぎていないだろうか。故に娯楽というものを捨て、勉強に励んでいる。高校生や大学生まではそれでも大丈夫だが、社会に出たときは彼は柔軟な対応で生きていけるだろうか。
とはいえ、彼は成功が約束されている希望ヶ峰学園の生徒だ。
私の考えは杞憂に終わるだろう。


「…みょうじくんッ!何か遠くを見つめているようにボーッとしていたが大丈夫か?」
「…えっ!あ、はい。大丈夫ですよ!少し石丸君のこと考えていただけです」
「………な、何を言っているッ?」
「えーと、変わった人だなぁって」
「ぼ、僕が変人だと言うのかね?」
「そういう意味じゃありませんよ、学生って遊ぶことも大切なんです。大人になったら遊べないですし、しっかりした休息も取れないです。休息しなかったら勉強も仕事も捗らないですから」
「確かに一理あるが、……遊ぶということが分からなくてだな」

ああ、やはり。と自分の中で納得する。
詳しく聞いたところ彼は私以外にも指摘された友人がいるらしい。名前は言ってくれなかったが恐らく一緒にカフェに来てくれた苗木君という子だろう。
もしかしたら遊ぶことを知らない石丸君を誘って来てくれたのかもしれない。

「そうですね…では大学で勉強した後は少し遊んでみますか?」
「それは…無駄なものでは無いだろうな?」
「少しくらい無駄な時間過ごしたっていいんじゃないですか?きっと役に立ちますよ」

少し無理矢理に誘ってしまった感じはあるが、彼はしぶしぶ納得して私に付き合ってくれるようだ。
彼にはどんな遊び方が適しているのか考えつつ大学へ足を進めた。






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