04の前のお話


「お姉さん、今日もオレまた振られちゃったんですよ…」

そう言いながらコーラの入ったストローをくるくる回す男性のお客さんがいる。
派手な髪色に黒い帽子、青いツナギを着ている。
それだけならヤンキーとか強面という印象を持つが、話せばとても良い人だ。そして今目の前にいるお客さんは恋愛に関してはどうも上手くいかないらしく弱気になっている。
この人も希望ヶ峰学園の生徒であり、クラスメートに恋をしているようだ。
普段はお客さんと話さないのだが、たまたま今日は私とそのお客さんしかいない。
そのお客さんも何回かこの人の少ない時間に来てくれて悩みを打ち明けてくれる。

「んー、今回もダメだったのですか?」
「そうなんスよ、全く振り向いてくれなくて…それなのにソニアさんは田中とは仲良くなってるし、流石にオレの心がヘコみますよ」
「最近流行りのデートスポットとか振り向いてくれない感じかな?」
「ああ、最初はこのカフェをオススメしたんですよ、評判高かったし」
「あら、恐縮です」

ここがちょっとしたデートスポットになりつつあることにびっくりしたが、お店のこと考えてるだけでも嬉しかった。

「けど、ソニアさんは「田中さんと何回も訪れたので充分です」っていうんですよォ!オレもう田中が恨めしくって」

そう言われて少しだけ思い出す。
もしかしたら前来てたあの2人かもしれない。
美人でありながら可愛らしい容姿の女性と鋭い目をしたクールな男性の2人。
ほぼ女性の方から話しかけていて、余程男性に好意を持っていると感じた。
遠目から見ていて微笑ましい光景だったことを思い出す。
そっか…あの子に恋をしてるんだなこのお客さん。
あの光景を見た後だと、この男性の片思いはどれだけ叶えるのが難しいか理解してしまう。
それでも追い討ちをかけてはいけないし、励ましていかなきゃいけないと感じた。

「めげずに頑張るしかないですよ!それにお客さん希望ヶ峰学園の生徒ですよね?超高校級の力で男らしさを見せるのもいいんじゃないですかね?」
「あぁ、そうかもしれないっスね…もうすぐ実技試験も入りますし」
「そうですよ!お客さんも良いところあるんだから、カッコいい所見せてください!」

そうお客さんを見ると、お客さんは安心した顔でこちらを見る。

「何かお姉さんと話すと元気出てきますよ、お姉さん可愛いですし」
「なっ、そんなことないですよ!お客さんの好きな人に比べたら全然可愛くなんかありません!あの人すごく可愛くて美人さんですよね….」
「えっ、ソニアさんのこと知ってる、というより、ここに来てるソニアさんと田中を見たんですか!?」
「あ!あー、まぁ、あはは…」
「教えてください!ソニアさんとあいつは何を話してどうしていたか!」

それからお客さんに散々質問責めされたのは言うまでもなかった。
後、お客さんは名前も教えてくれた。
左右田君、か…きっとまた来てくれると思うから覚えておこうかな。






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