昨日と今日の狭間



今何時だろうか。

左手首を顔の前に出したものの、自身の腕時計は既に外してしまっていて確認のしようがない。慣れた癖だ。
そもそもこの部屋は暗いのだから時計の針まで正確に見ることは出来なかった。そのくらい僕は時間のことを気にしていた。
少し暑いなと掛け布団から片足を出す。ほんのりと涼しい感覚が足に伝わる。それは空調は壊れていないという証明でもあった。

当然か。暑い原因はすぐ隣にあった。ふと横目にいるもう1人の人間の様子を伺う。僕の気持ちなど知りもしないでスースーと規則的に寝息を立てている。
君のせいで僕は眠れないのだ。決して不純で邪な気持ちなどではない。ただ、心配だった。僕が隣にいることで睡眠の邪魔になどなっていないだろうか。万が一自分が寝てしまって寝返りの際に君を押しつぶしてしまったら謝罪の言葉だけでは済まされない。

発端はみょうじくんが僕の部屋に来たことから始まる。何のためにもならない時間潰しの話ではあったが楽しかった覚えがある。次第にみょうじくんがうとうとと頭を無意識に揺らし始めたので自分の部屋へ戻るよう進言した。するとなんてことだろうか。みょうじくんは気絶したかのように僕のベッドの上で寝てしまったのだ。あいにくソファを修理に出してしまったのでほかに寝る場所がない。床でも良かったのだがそれだと寝つきが悪いというか身体中が痛くなってしまう。考えた結果、邪魔にならない程度にベッドの端で眠ることにしたのだが、すぐに目が覚めてしまった。

部屋が暗いのが幸いか隣の顔は見えていない。この感じからして夜はまだ始まったばかりだと推測する。だからといって僕に出来ることなんて無かった。強いて言えばみょうじくんの規則的な寝息を聞いているくらいだろうか。単に耳に入ってしまう。

みょうじくんも僕も同じ高校生なのに、どうしてこうも違うのか。みょうじくんは幼すぎるように思える。彼女には失礼だが子供の面倒を見ているような感覚がする。乱れていた毛布を直すとみょうじくんは寝返りを打った。そしてまた寝息を立てる。

やれやれ、僕のベッドはそんなに安心して眠れるのか。不意に顔が綻び、不思議と僕の鼓動が早くなっていくのを感じた。まるで夢にいるかのような心地だ。
日付が変わったのか、もう過ぎているか、はっきりした時間が分からないまま僕はゆらゆらと眠りについた。


翌朝。何度か起き、何度か寝た。清々しいさっぱりした朝とはいえなかった。
気持ちよく寝ている彼女が先に起きててもおかしくないのに未だにぐっすりと眠っている。あまりの熟睡さに少し呆れてしまう。
みょうじくん、と控えめに声を出した。小さく声を上げた気がするが、また寝息へと戻る。
これは暫く起きそうにない。僕じゃなかったら君は無事じゃ済まないぞ。心の中で忠告しながら彼女の顔を覗き込む。
あまりにも幸せそうな寝顔に僕も眠りたいと欲を掻き立てられた。嗚呼、僕はどうも調子が悪いようだ。小さく欠伸をしながらベッドの上で横になった。毛布に残る温もりが僕のことを歓迎してくれた。

君が起きるまで、一瞬のひとときを楽しませてもらおう。


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