悩み



ただ何気ない会話をしただけ。
ただ帰りが同じだったから一緒に帰っただけ。
趣味が同じで語り合っただけ。
それなのに、


「僕はみょうじさんのことが大好きです」


その言葉を聞いてああ、もう駄目だって思ってしまった。
貴方に振り向いて欲しい訳ではなくて、貴方と友達になりたかっただけ。
友達としていたい、と優しく断ると相手はぎこちなさそうに笑いながら今までのように接してくれることはなかった。

ただの友達でいることの難しさは計り知れないものだった。


「モテるヤツの気持ちは分からねーな。そんな贅沢な悩み、オレだって持ちたいぜ」


隣にいる彼は不機嫌そうに両手を頭の後ろに添えた。


「同性同士だったら何にも思わずに話したり、遊びに行ったり出来るのに。2人でゲーセンとか映画館へ行っただけで周りからはデート?なんて囃立てるし、そんなつもりじゃないのに」
「あのなぁ…オメーはもう少し周りの空気に合わせとけよ。フツーは2人きりで遊びに行くなんてデートなんだよ」
「恋愛感情を持たれてしまった時点で、もう友達に戻れないのって本当に辛い」
「はぁー!ならもういっそのこと付き合えばいいじゃねぇか!」
「だって色々と、さ、……左右田くんはソニアさんとキスしてみたい?」
「な、何だよいきなり。そりゃ、してーに決まってんじゃんかよ!」
「そういう欲が湧かないから付き合ったって意味は無いじゃん?」


左右田くんは私を見て大きく溜息をついた。訳わかんねーとでも言いたげに天を仰ぐ。分かる、自分だって分かるんだよ。
普通の高校生なら好きな子と付き合って青春を送りたいはずなのに、私には一切そういうのがない。友達としてこの先ずっと続けていきたいのに続けられない。


「はぁ、男女の友情って成り立たないのかな」


初めて吐き出した言葉。そんな言葉に隣にいる彼はすぐに返してくれた。


「成り立つだろ、フツーに」
「本当?」
「じゃあ、オメーの隣にいるオレはなんなんだよ」
「……友達」
「オレもダチだって思ってるぜ、な?」


左右田くんはからかうかのように笑いかけた。その笑顔につられて笑い返した。
左右田くんは見た目のわりに、と言ったら失礼だけど優しいなぁ。


「ありがとう」
「おう、オレはこの後やることあっから」
「分かった、またね」
「ああ、じゃあな」


左右田くんは教室の方向へ向かう。お昼休みにこんな話聞いてくれて感謝しかない。
何でもかんでも気軽に話せる相手とはいえ、流石に自分が言いたいこと言うというのも申し訳なかった。
次は左右田くんの好きな人のこと沢山聞いてあげないと、そう思いながら退屈な授業の為に席を立った。
その後左右田くんから恋バナで数時間以上潰れるなんてこの時の私は思いもしなかった。


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