少しわがままになってもいいじゃないか



冗談半分で目の前の相手に壁ドンを試す。
理由はただ単に相手が鈍感すぎるから。こんなにも彼のことを考えているのに、当の本人は全くそんなことに気づかない。予習のノートだって写させたのに。ふとコーラが飲みたいなんてそっちが呟くからこっそり自販機まで行ってさりげなく差し入れたのに。後はそうだなぁ、お気に入りのフープピアスが無くなったときも一緒に探してあげたっけ?
それなのに、君との関係は友達止まり。親友になっているかどうかも分からない。欲望って怖いなぁとつくづく思う。最初は友達になれたらなんて思っていたのに、好きって認識しちゃうともっと仲良くなりたいって、かけがえのない存在になりたいって思ってしまう。
突然の壁ドンに驚いた彼は壁ドンした方とは反対側に逃げようとする。すぐさまもう片方の手で逃げ道を塞いだ。教室の壁を背にして君は逃げられない。


「な、何だよ」
「……なーんにも」
「ぜ、ぜってぇ何かの理由があるだろって!なァ?」


私を困らせるのが得意な左右田くんは私を見ながらあからさまに慌てている。(今君を困らせているのは私なんだけれど)
面白いくらいに頬が赤く火照っていくんだから、自然と笑みが溢れる。放課後で誰もいない廊下だからこそこんな大胆なことが出来る。
……左右田くんの焦りは荒い呼吸となって表れる。その吐息すらもドキリとしてしまう。左右田くんを見上げると彼は目を泳がせながらも口を開いた。


「みょうじ、マズいって」
「誰かに見られたらってこと?」
「いや…そうじゃなくてよ……ドキドキするんだよ」


目を泳がせながら小声でそんなことを言い出すものだから両手を教室の壁から離し、左右田くんを開放した。
狡い。こっちまで胸が張り裂けそうな程にドキドキするじゃんか。


「ごめん。急にこんなことして」
「オメーって、オレのこと、」
「ああもう、忘れてっ……」
「ははあ、そういうこった。オレが好きなのか?」
「……」


はぐらかすのが下手すぎる、私。単純な左右田くんにあっさり見破られて縦に頷いた。沸騰したお湯のように一気に身体中の熱が上がる。
オレが好きなのか?って嬉しくも狡い質問の仕方。違うってはぐらかすことも出来たけど、そんな質問に嘘をつける訳がないじゃない。悔しいなぁ。いつも絡んでいる相手に弄ばれている感覚だ。部屋に戻らないと、と言い捨てると後ろから左右田くんの声が聞こえる。


「いつも話聞いてくれて傍にいてくれるオメーが好きだぜ。あのさ、……1つ願い聞いてくれねーか?」


不器用な台詞を吐く彼に振り向く。彼は自身の小さい三つ編みを人差し指でくるくるしながら、照れ臭そうに私の方を見る。そんな仕草や表情が胸を更に高鳴らせた。


「さっきの、またしてくれねーか?」
「……次は左右田くんがするの!」


そうじゃないとイヤだからね?そう念を押しておく。私は初めて大好きな彼の願いを断った。私だって好きな人に甘えたいから。


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