流れ星



「ココアが美味しい季節だな」
「そうだね、温かくて美味しい」


マグカップに入ったココアを少しずつ啜りながら夜空を見上げる。深夜に石丸君と一緒にいるのは少しイケナイことをしている気分だ。普段なら石丸君は寝ている時間なのに、眠れないって言ったら夜中まで起きてくれた。それにホットココアを用意してくれているだなんて。素敵な彼氏だ。私と付き合い始めたときは恋愛を勉強するだなんて言っていたけど早速効果が表れているみたい。


「眠くなったらしっかり歯磨きするんだぞ」
「はーい。分かってます」


小さく笑いながら返事する。
空を見れば心が更に落ち着くと石丸君が言っていたから今もこうして夜空を見上げている。とはいえ、星座には詳しくなくて冬の星座はオリオン座しか分からなかった。
そう告げると、私の隣で指をさしながらあれが冬の大三角形やらプロキオンだか教えてくれた。そこまでは分かったけどふたご座とおうし座辺りで分からなくなってしまった。でも分からないと言えば熱心に教えてくれる。そんな真面目な所も好き。でも星座も分かるなんてすごいなぁ。

石丸君と見る星座講座を終えたら、今夜は流れ星来ないかなぁなんて話しながら窓辺で毛布にくるまる。石丸君も私と同じ毛布を使っているから、互いの距離なんて数センチもない位。室内は暖かくても窓辺に来るとここだけ異様に温度が低い。

眠くないのに退屈だなぁ。少しだけ隣にいる彼にイタズラしようかな。
思い切って頬に口づけをする。柔らかい肌に触れると想像よりも速いスピードで顔がこっちに振り向く。何が起きたか分からないような顔に思わず笑ってしまう。


「な、何をしているんだ!」
「ふふ、ごめんごめん」
「そんなことしていると流れ星を見逃してしまう!」
「あはは。確かに」


笑いながら上を見上げる。冬の夜空は私達を見守るかのように瞬いている。石丸君を横目に見ると彼も向き直り、夜空を見上げていた。


「でも」


声を落としながら呟く。石丸君は顔を動かさずに夜空を見上げたままだ。


「どうしたのかね?」
「もう願いは叶ってるんだ。こうして石丸君と夜空を見ているだけで幸せだもん」


途中、恥ずかしさで言葉を詰まらせる。上手く伝えられなくて余計に恥ずかしさは増すばかりだ。恐る恐る石丸君の方に振り返ると、彼は上を見上げながら、目を閉じる。そしてゆっくりと顔を下に向けていた。


「……君はとても狡いことを言い出すな」


体育座りをしている膝に頭をこつんと当てながら目を合わせずにボソリと呟く。心なしか少し頬が赤く染まっていて、彼なりの照れだということに気づいた。


「…あっ、あれ」


思わず声に出してしまう。石丸君はすぐさま上を見上げ始めた。
真っ暗な夜空で瞬く星々の間に一瞬だけスッと何かが通り過ぎた。流れ星だ、そう認識した途端に次々と星が降り注いでくる。信じられないくらいに綺麗な星空だった。


「流星群…」
「ほ、本当に?これが?」
「こんなに降ってくるということはそうなのだろう。今夜について調べるべきだったな…」
「初めて見たよ。すごく綺麗」
「…同意だ。それに君と見れて光栄だ」


大切な思い出になるな。
そんな彼の言葉が恥ずかしくも幸せになるには充分すぎるくらいに私の心を満たした。


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