ごく普通だけど少し特別な日



カチリカチリと時計の針の音が不思議と心地良い。スマートフォンで時間を確認するとまだ朝の6時50分。折角の休日だからもっと寝てやろーかとも思ったが今日に関してはそうはいかない。

今日はみょうじなまえと付き合って1年経つ日だ。その為に休みを貰ったくらいだ。だからって別にどこ行くってわけではない。みょうじは少々面倒くさがりなのか、極度のインドア派なのか、外に出たがらない。仕事が立て続けにあって休日外へ行く体力が無いのかもしれない。

思えば色々あった。初デートしたときとか鮮明に覚えている。付き合って数ヶ月した所で同棲生活が始まって、一緒に飯を食える日々が続くのが楽しい。喧嘩もしたけどすぐに仲直りしたのは本当にみょうじの優しさがあったからだ。
しかし、この記念日について全く話をしていない。みょうじは覚えているのだろうか。もしかしたら忘れた可能性だってある。オレだけ浮かれてるのも何だか少し嫌だ。

隣で静かに寝息立てて寝ているこいつの顔が少しだけ憎たらしい。何だぁ、ぐっすり寝やがって。その幸せそうな寝顔に、悪戯心を掻き立てられ腰や脇腹をゆっくりと揉む。
するとこいつは目を半開きの状態で一瞬何が起きたのか分からない顔をしていたが、5秒くらいしてからオレの方へニヤリと口角を上げて


「えっちなことしたいんだ?」


なんてくすくす笑われた。
だぁあー、もう。何なんだこいつ。擽ってやろうと指先を不規則に動かすと、高い声を出してきた。


「だめっ…あは、あぁっ!」
「この左右田和一様を甘く見てるとこうしてやるからなッ」
「やーだっ、もうっ!んっ、ごめん、って!ふふ、そこはやめてって!」
「和一様ごめんなさい、は?」
「んぅ、和一、様…ごめんなさい…っ!」
「ほらよ」


パッと手を離すと深呼吸しながら掛け布団を厳重に掛けるみょうじは警戒している猫みてェだった。


「もー、何よ」
「悪りィって!つい悪戯したくなってよォ」


付き合って1年のことなんて無頓着なこいつは忘れてんだろーな。まぁ1ヶ月ごとに記念日だとか細けェこと言われるよりは気を楽に持てるんだけど、それでも1年ごとは祝いたいという気持ちがあった。
やれやれと思いながらみょうじから離れようとすると、不意に左腕がぐいと引かれた。


「うおわっっ」


情けない声と共にみょうじの寝ている布団の所へ倒れ込む。幸いみょうじを踏むことはなかったがオレはみょうじの両腕の中にいつの間にかいた。


「…な、何だよ」
「今日記念日だね」
「へぇ、覚えていたんだな。忘れたのかと思った」
「流石に覚えてるよ。…だから、しよ?」


色んなこと、と耳元で囁かれ全身に電流が走った。…期待して、いいんだよな?


「言ったな?言質とるからな?」
「しつこい!…良いに決まってるじゃん」
「へへ、珍しく素直でカワイイな」


珍しくって何よ、と言いたげな不満顔にキスをすると途端に顔真っ赤にするみょうじは満更でもなさそうな気がした。
今は丁度朝の7時、オレの幸せな1日は始まったばかりだ。


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