「もぉおお!どうしてっどうしてッッッッ」 「コロシアイは起きないんダァアア!!」 朝からモノクマが海に向かって叫んでいる。 まだ同じことを叫んでいるけど気にせずに食堂へ向かう。そこには既に全員が集まっていた。…1人を除いては。 「おはよう、みょうじさん」 ドアの近くにいた七海さんが声を掛けてくれる。私の後ろをジッと見つめた後に首を傾げる。 「左右田くん、休み?」 「うん。寧ろ昨日まで来れてたのがすごいよ」 「……流石の左右田くんもやられちゃうよね」 眠そうな顔を擦りながら、食堂のテーブルへ向かう。皆は和気藹々と食事をとり、会話をしている。今日の会話の内容は不穏だった。 左右田くんのことを悪魔と表し、どうすれば悪魔を島から追い出そうかとコロシアイせずに済む方法を話し合っていた。 何も食事のときにしなくたって…。朝から気分が悪くなり、あまり食事を取れなかった。 だけどもここで席を離れたら怪しまれてしまう。それに皆がここにいるから左右田君に危害が及ばない。 「…おいみょうじ」 「ん!?な、何?十神君」 「左右田をどうするべきか良い案は無いか?」 「え。……船や車を動かすエンジンが無いから島の外に追い返せないし、どこか遠くに閉じ込めるとか?」 ああ、言っててムカムカする。この発言1つで左右田君を傷つけてしまったようで。だけどもこれで行動を誘導させることが出来たら幸いだった。何処か遠い所ならコテージより見つかるリスクは少なく、ある意味だけど左右田君を安全な所へ置ける。 けど、私の発言は届かなかった。 「…仮に何処かに監禁したとして。ストレス発散は何をすれば良い?」 「悪魔のあの悲痛のリアクションが良いからやってるところもあるし」 グサリと心に突き刺さる。私は左右田君では無いけど精神的な攻撃を受ける。 皆はあの虐め行為をストレス発散としか思ってない?そう思うと頭痛が私を襲う。 「…みょうじ、無理するな」 「辺古山さん…」 私の様子に背中をポンと優しく叩いてくれる辺古山さん。わざわざ私の隣に座って食事をしてくれ、何かしらの形で毎回救われている。辺古山さんは強いな…感謝してもしきれない。 「…それにあの悪魔はわたくしのことを付き纏うのです」 「ならこうしよう」 「………わあ!名案ですわ!」 ソニアさんが立ち上がると一斉に皆も立ち上がり、ゾロゾロと行ってしまう。さっきの内容からすると左右田君のところだ。ソニアさんが先導する悪魔を追い出す方法は左右田君にとって悲しくて屈辱的な気分になってしまう。 行かなきゃ、止めないと。立ち上がろうとした瞬間、グラっと視界が一気に揺れた。 「みょうじっ!?」 間一髪辺古山さんが私の腕を掴んでくれて床に叩きつけられなかったものの、鋭い痛みが頭の中を駆け巡る。どうして、こんな一気に体調が悪くなるはずがない。 「七海、みょうじを頼む。今から罪木を呼んでくる」 「うん、分かった」 体に感じる感覚が辺古山さんの温もりから七海さんの温もりへと変わる。辺古山さんが食堂から出て行くと、すれ違うようにモノクマがニュルンと現れた。 「おやおや!みょうじさんが大変なことに!……ま、これもオマエラのせいだけどね!」 「…どういうこと?」 「警戒されてる人物はみょうじさんだよ?みんなの楽しそうなことを妨害する奴はここで食い止めておきたいじゃん!」 「それって何?みょうじさんの食事に何かしたの?」 「そうだねー、ボクお手製のお薬を誰かさんに渡しただけ!大丈夫、すぐに治るやつだから!」 胸の不快感、頭痛までもがモノクマのせい?いや、そんな奴の薬を使った誰かのせい?最悪だ、聞いているだけでまた苦しい。 「大丈夫…?横になろっか」 「…ううん、大丈夫。ありがとう」 七海さんの柔らかい声が不快感を和らげてくれる。しばらくすれば起き上がれたものの、かなりの時間を要してしまった。 その間に戻ってきた辺古山さんは何とも言えない複雑な表情を浮かべている。話を聞けば、左右田君を拘束した上に目の前でソニアさんと男子達が仲良く色んなことをしたらしい。色んなことの詳細は教えてくれなかったけど…何となく察しがつく。 2人にお礼を言って食堂から出る。マーケットで食材を貰い、一旦自分のコテージへ戻った。 「…ん?」 気がつくと本棚から本がいくつか落ちている。何故落ちているんだろう、そう思いながら拾い上げると絵本だった。 可愛らしいファンタジー調に描かれた挿絵が印象的。パラパラと捲ると幸福の王子という話が載っていた。ハッピーエンドが好きだった小さい頃は悲しいこの話が嫌だったんだっけ。 けれど、高校生になってこの話は嫌いではなくなった。寧ろ他人のために動ける王子は素晴らしいなとも思える。 私も左右田君に何か出来たら…。 絵本を閉じ、食材を持って左右田君のコテージへ向かう。扉へ続く道に落とし穴がないことを確認し、ゆっくりと音を立てないように扉を開けた。 「……っ!?」 息が止まってしまったように立ち竦む。 コテージの中は酷く荒らされ、床は物で埋まってしまっている。その中心に左右田君はいた。空は憎らしいくらいに青空に対して彼の影は薄く、目の色は黒く燻んでしまっている。果てしない闇の中へ行ってしまいそうな姿に思わず声をかける。あまりに自分の体がショックを受けていたせいか声が上ずる。 「左右田君…?」 ぐるっと一気にこちらに目線を向ける。生気を感じない視線はグサリと目に焼き付く。 「………みょうじ、か」 さっきまで泣いていたかのような枯れた声。 床に座り込んでいる左右田君の近くに何かが光る。 恐る恐る近づくとそれは刃物らしいということに気づいてしまい、息を飲んだ。 こんな物が近くにあってはいけない。刃物の上に足を置いてそのまま扉の方まで蹴飛ばせれば…。そっと足を引きずるように刃物の方へ向かうと左右田君の体が急に動き出した。 「駄目っ!」 「うっ!?」 動き出した先はやはり刃物だった。叫びながら左右田君の体を掴み動きを何とか止める。幸い刃物は目論見通り靴の下だ。思い切り後ろに蹴飛ばす。瓦礫のせいで遠くへは飛ばせなかったものの手の届く範囲から外れた。 「もうオレが死んじまった方がいいんだ。流石にあんなの見せつけられたら我慢の限界だ」 「……」 「そこまでしてオレが嫌だったんだろ、なら消えてやるよ。オレが…」 「待って、ねぇ」 ぎゅっと両肩を掴む。只ならぬ様子に目を見張る。どうにかして止めないと。 左右田君はこちらを睨むように見つめ、鬱陶しそうに言葉を吐き捨てる。 「…んだよ。オレがいなくなったらこんなことも無くなるんだよ、オメーらで仲良しこよしやってれば良いだろーが」 「…私じゃ、駄目?」 「……ハァ?」 「昨日言ったでしょ?左右田君の味方だって。今日だってソニアさん達が動くのを止めようとしたんだよ」 「けどオメーは来なかったじゃねーか」 「そ、それはあのとき気分が悪くなって…」 「ハッ、だから何だよ。オレが失恋してる様を遠い所で笑ってたんじゃねーのか?」 「そんなことないよ!左右田君の気持ちは痛いほど分かる」 「同情なんていらねー…。大体オメーは何でそこまでオレに構うんだよ、昨日だって味方とか言ってよォ」 「………から」 「あ?」 「好きだからじゃ、駄目?」 左右田君の強い口調に加えて、こんな形での告白に思わず涙が溢れる。しかも泣いているゆえの震えた声での告白。何もかもみっともない。 左右田君は一瞬言葉が詰まったのか浅い呼吸を短く繰り返すだけだ。 「左右田君が、大好きだよ。明日、モノクマに掛け合ってみんなのターゲットを私に変えてもらうようにする。それで駄目だったら、2人でどこか……、島のどこかへ逃げよう。探せばどこか隠れられる所はありそうだし…。それでも追い詰められたら、私は左右田君を助ける為に"殺し"だってする。…本当はしたくないけど」 今まで何も出来なくてごめん。 頭を下げ、手を床につける。涙が床にポタポタと溢れる。他人に土下座なんて初めてだ。そのくらい本気だって伝われば何よりだ。 1秒1秒が長く感じる。自分の心臓の音を何回数えただろうか。長い間を置いた後にポンと頭に温かい感触が伝わる。 「…………悪かった、顔上げてくれ」 さっきの興奮した声とは違う、左右田君の落ち着いた声に顔を上げると目の前の人物は私と同じように正座になっていた。 「そんなこと言わせちまったオレが全部悪かった。オメーは味方だって言ってくれたよな。それなのにまた傷つけちまった。……ごめん」 そう言うと頭を下げ、左右田君は土下座をし始める。 「そ、そんな!大丈夫だよ、顔を上げて!」 「いや、しばらくはこうさせてくれ」 「いやいやいや!私が落ち着かないから!」 無理矢理床と頭を離そうとすると、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった左右田君の顔が近づいて私の肩に手をかける。ずしりと左右田君の腕の重みが肩に伝わる。 「……みょうじ」 「うん」 「信用させてくれ」 「…分かった」 「……サンキュ」 ポツリと呟くと今度は体全身に彼の重みがかかり、私を縋るように抱きしめてくれる。精神的にも肉体的にも疲労しきった左右田君を抱きしめるのは何とも複雑だった。 次抱きしめるときがあるとしたら、左右田君が元気になったときが良いと心の奥から感じた。 …… 「あれ、みょうじさんは?」 「んー、昨日体調悪かったから休んでるかも」 朝食の時間になっても左右田くんとみょうじさんは来なかった。左右田くんが来なかったことにみんなは何も思わなかった、寧ろ来なくていいみたいな感じだったけど、みょうじさんが来ないことにみんなは疑問を抱いていたみたい。 体調が悪かったみょうじさんのことを気にしてるつもりでもみんなはやっぱり考えを改めることはなかった。 「まさか、あの黄色の悪魔とやらに連れ去られたのでは…」 「それはあり得るな。このオレがみょうじの様子を見てこよう」 十神くんが骨つき肉を片手にズシズシと食堂から出て行く。続いて九頭龍くん、そして辺古山さんが私の方に軽いアイコンタクトを飛ばして食堂から離れる。 ふわぁと軽い欠伸をして携帯ゲーム機を手に持つ。きっと、きっとなんだけど、みょうじさんはコテージで休んでいるわけじゃない。 何となくだけど、みょうじさんは左右田くんのことを好きだったのかなって。 恋愛シミュレーション系のカセットを昨日からやり込んで私の推理を完璧にしようとしてるけど、うーん、当てにならないな。ゲーム内の女の子が主人公と喧嘩したり、冷たかったりしてる。みょうじさんらしい女の子がいないからかな。主人公は左右田くんみたいな感じだったからいけると思ったのに。 ……ゲーム脳が何言ってるんだって感じだけど、もし2人がいなかったら、かなり危険な状況だと思う。 「大変だ、みょうじもあいつもいない!」 「ええっ!?」 「きっとあの悪魔が連れ去ったに違いない、みんな探すぞ」 …やっぱりいなかった。そんな状況なのに酷く安心している自分がいる。みょうじさんが左右田くんと遠い所へ逃げているんだと。どうか2人で逃げて欲しかった。 「…はぁーあ。そろそろキッツイことしてもいいんじゃない?」 「……そうですわ!昨日わたくしがお仕置きしたというのに、今度はみょうじさんを連れ去ってしまうなんて!流石に許せません」 「うっひょー!遂にアレを使っちゃうんすか!?」 「それじゃあ、探しに行くかのう。終里、手伝えい」 「おう、任せな!」 …マズイかもしれない。携帯ゲーム機をリュックにしまって外へ出た。 みんなを追いかける。ギラギラと獣のような眼光、そう、まるであの2人の希望を消してしまうかのような恐ろしい姿は一体何をするか分かったものじゃない。 どの位探したのだろう。遊園地やショッピングセンター、公園を探しても見つからない。もしかしてエリアマップに記載されてない森の中へ入っちゃったのかな。 公園の整地されていない、森の中へ。 「みんなー…」 キョロキョロと見回しても人影すら見つからない。それでもとにかく歩き回るしかない。草を踏み分けながら進むと、ふと視線の横に何かが見えた気がする。 視界をぐるりと見渡すと、鬱蒼と生茂る草木の先に確かに何かがあるみたい。その先へ進むとぴこん、とビックリマークがすぐに浮かぶ。いや、ゲーム感覚でふざけてはいけない。 私は大変な人を見つけてしまった。 木の下で蹲るように倒れ、苦しさから顔は歪んだ顔を浮かべている。よく見れば頭部から僅かに血が溢れ、土塗れになった体が小さい震えを起こしていた。何か言いたげに口をパクパクさせているようだ。すぐにそばに駆け寄り声を掛ける。 「みょうじさんっ」 「……ぅ、ぁ」 「もしかして、みんなが…みょうじさんを?」 信じたくない、そう思っていたのにみょうじさんは呻き声をあげながらこくんと小さく頷いた。遂にはみょうじさんに暴力を振るっただなんて。込み上げるやるせなさと怒りに震えながらも私はみょうじさんの口が動いているのに気がついた。 「……な、なみ、さん」 「うん」 「そ…だくん…あぶない」 懇願するような眼差しに小さく頷く。 「…どこへ行ったの?」 「………」 内出血を起こしている左腕を無理矢理に持ち上げ、方向を指差してくれた。きっとあの先にみんながいるんだ。 「大丈夫、みんなを止めてすぐに戻ってくるから」 そう呟くとみょうじさんはふっと目を閉じてしまう。急がなきゃ。みょうじさんが指した方向に走り出す。木々との間隔も狭まり、大分森が深くなってきた所まで走ると、 「ぐぅあああああっっっ!!!」 低い金切り声、悲痛ともとれる叫び声が私の鼓膜につんざくように響く。それと同時に聞こえるのは、まるで悪魔に取り憑いてしまったかのようなみんなの笑い声、そして…何かの機械の音。 「こんな……こんなこと…」 みんなの後ろにいた辺古山さんはきっと抵抗したのだろう。キッチリとしていたセーラー服がシワだらけで、頬が赤く腫れていた。そして今もみんなを止めようとして抵抗しているけど、九頭龍くんの力いっぱいの拘束で動けなくなっている。顔面蒼白になっている辺古山さんは叫び声のする方から目を逸らした。 みんなの体の隙間から見えた光景に思わず目を閉じてしまう。 あまりにも信じられなかった。みんながこんなことをしただなんて。 「ぁぁああっっ………」 声が掠れてしまうまで叫び声を上げ、そして気を失った左右田くんはがくりと地面に倒れ込んだ。 それでも日向くんや狛枝くんが2人で持っていた血塗れのチェーンソーの音は鳴り止まなかった。 左右田くんは片腕が無かった。斬り落とされたってことが嫌でも理解してしまう。 「もう気を失った」 「何だか味気ないなぁ」 「これで悪魔は消えたね」 「でもこれ死んだの?」 「片腕を斬られただけじゃ死なないよ」 「止血さえすればいい」 「ついでにこの森の中に腕を埋めようよ」 「自由に動けなくて惨めな思いをすればいい」 「だってこいつは悪魔だから」 残響のように聞こえる狂気の声。誰が誰の声なのか区別がつかない。 私、おかしくなった?周りを見渡す。1人だけくっきり輪郭が取れる。辺古山さんだ。辺古山さんも私もまだおかしくなっていないみたい。 けど、こんなのあんまりだ。詰みだ。森の中でしゃがみ込むと誰かが私の肩を揺すってくれたけど顔なんて向けられなかった。 涙が溢れでる。みんなを止めるって言ったのにみょうじさんに顔向けなんて出来ない。 「ぎゃー、オマエラ随分派手にやっちゃったね!」 近くでモノクマの声がする。揶揄っているの?こんな状況で?こんなことになった犯人なのに…。 「でもこれはボクもドン引き…だから学園長として生徒の治療をさせてもらうよッッ!え?埋めた?埋めちゃったの?左右田クンの腕?治すな?いやいやいや!学園長命令で治すって決めたから!左右田クンは連れて行くよッ!そこ、ブーイングしない!」 …どうして。モノクマの言葉に動揺した。 どうして左右田くんを助けるの、答えが分からないまま突然現れた救急車のサイレンを聞くしかなかった。 …… 「おーい、おーい!」 特徴的な声に目を思わず開けてしまったが目を閉じたくなった。紛れもないモノクマの声だから。 「みょうじさん、今大変なことになってるよ!」 小さい白黒の体がこちらに近づいて聞こえるように耳打ちをする。 "左右田クンはチェーンソーで右腕を斬られた" 「…」 守れなかった。私じゃ無力だったんだ。どうして私が生きてしまったのだろう。涙が止めどなく土塗れの頬へつたった。 少し前の出来事を思い出す。 私のコテージに一旦戻り、モノクマを無理矢理夜中に起こし、何とかターゲットを左右田君から私に変えてくれないかとお願いをした。結果はノーだった。その一言だけを発してモノクマはまた眠りについてしまった。 仕方なく最低限の物を準備する。飲み物とか…護身用の刃物とか。左右田君のコテージへ戻ると左右田君は私が来たことによって察したのだろう。逃げるしかないんだと。 夜明け前に出発し、色んな所を回って良さそうな場所はマップにも載ってない公園の奥にある森だった。 森に入って暫くするとみんなが追いかけてきた。放ってくれたらいいのに。そんな思いで2人で走り出す。けど私は躓いてしまったのだ。私のすぐ後ろで追っていた人物が幸運だったからかもしれないけど、地面が何故かぬかるんでいた。 左右田君は転んだ私のことを見て足を止めかけた。 咄嗟に逃げて、と声を張り上げると悔しそうな顔をしてその先を進んでいった。 そんな左右田君を追う為にみんなは目の前で倒れていた私のことなんて気にしなかった。 何十人の人に思いっきり体や頭を踏まれたのだろう。そこで気を失った。 けれど、そんなのまだマシだった。左右田君は私よりも酷いことをされてしまった。代わってあげたかった、その痛みや苦しみを。 嗚咽を零しながらモノクマの前で蹲る。 「勘違いしてる所悪いけど、左右田クンは瀕死なだけでまだかろうじて生きてるよ」 「…え」 「けど斬られた所からはどうしても血が出ちゃってさ。みーんな腕を埋めたって言うし、それなりの型を作って義肢を着けるのも時間がかかってそれまでには死んじゃうし…」 「…モノクマ」 私の声に反応したモノクマは私の所へ寄り、耳を傾ける。私が発した声をうんうんと頷きながら聞いてくれた。 「いいよ、とはいえみょうじさんも怪我してるからみょうじさんも左右田クンと治療しなきゃね!大丈夫!腕は確かだから!」 それを自分で言うの。突っ込みたい気持ちを抑え、突然森の中に現れた救急車に乗せられた。 |