また会うために眠りについた。



「石丸君!」


廊下を歩いている人影が大好きな人だと分かると心中ウキウキしながら話しかける。
すると名前を呼ばれた彼は振り向いてくれる。


「どうしたのだ?」


彼は少しだけ頭を傾けて尋ねてくる。その小さな仕草にとくんと心臓の音がした。


「あの、勉強教えてください!定期試験でかなり引っかかっちゃって…」


そう笑いながら自嘲する。彼はふむ、とあごに手を当てた後、ため息をついた。


「全く君は…僕は構わない。……ただ君はあまりにも合格教科が少なすぎる!思い立ったが吉だ、すぐに僕の部屋に来たまえ!」
「ありがとう、でも風紀の仕事は大丈夫?」
「大丈夫だ、しっかりと終わらせている!」


彼はきっぱりと答えた後、行こうではないかとスタスタと歩き、私は彼を追いかけるように寄宿舎へと向かった。


「さて、再試験まで残り数日か。それなら僕が徹底的に叩き込もうではないか!」


彼は部屋の中にあった参考書の山をドンと机の上に置く。これ程の本は一体部屋のどこから持ってきたのであろう。好きな人と一緒なら頑張れるとかいう歌やドラマはあるものの、今の彼に頼んでしまったことを少々悔やんでしまう。これはきっとしばらくは遊びのあも出来ないのだろう。


「さあまずこの教科書を開いて…」


そこから数日はみっちりと彼のもとで勉強することになった。分からない所は優しく教えてくれたし何よりもずっと近くにいるという事実に幸せを感じる。
再試験を翌日に控えた日のことだ。しっかり出来ているかテストを行った。
スラスラと解けることに内心喜び、彼に感謝していた。


「…流石だなッ!明日は安心だ」
「石丸君のおかげだよー、ありがとう」
「そうか。そう思ってくれて嬉しいぞ……ではみょうじくん」


名前を呼ばれて振り向くと彼の顔が目の前にあって驚く。私が驚いている中で石丸君は顔を近づけて…


「んっ、!?」


唇を塞がれ、思わず目を閉じる。石丸君の唇によって与えられた柔らかい感触は一瞬で離れ目を開けた。
そこには頬を赤らめた石丸君。突然のことに言葉が上手く出ない。


「君が頑張ったご褒美だが…気に入らなかったか?」


私の反応をマイナスに捉えた石丸君が尋ねる。首を大きく横に振ると彼は目を輝かせた。


「それは良かった!みょうじくん、いやなまえくん!…僕は君のことが好きだ!」


突然の彼の告白に思わず泣きそうになる。大好きな人からこう言われるだけで死んでしまう程に幸せな気持ちでむねがいっぱいになった。
笑顔で伝えてくれた彼に私も笑顔で伝えなきゃ。


「嬉しい、私もだよ」


その瞬間に謎の浮遊感に襲われた。

気づけば広いベッドの上で仰向けになっている。この状態を認識すると私は深いため息をついた。


「はぁ…これって…」


頬を強くつねっても目の前の景色は変わらない。テレビをつけたまま寝てしまったようで、画面を見ると新しい希望ヶ峰学園が誕生したとのこと。その事実に酷くがっかりした。
夢を見た。今となっては叶わぬ恋をした人とお話する夢。
夢の中で名前を呼んでくれた石丸君はもうこの世界で既に…。身体を起こした後自嘲的に笑った。
夢で想いが伝えられてよかった?ふふ、あれが現実で今の石丸君のいない世界が夢だったならどれだけ幸せだったのだろうね。


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