ウサミ先生が「たまには雪も見たいでちゅね」ということでジャバウォック島に雪が降った。 ここまではいいものの雪が積もりすぎて採集に影響が出てしまい溶けるまで採集は休みとなった。 ちょっとした冬休みである。 「左右田くん?」 私は左右田くんのコテージにノックした。 モノモノヤシーンで手に入れた機械が何なのか知りたかった。 ウサミ先生に聞いたら、「そんなの入れた覚えはないでちゅね」とのことだった。 というのは建前で、本当は寒さで人肌が恋しい為好きな人に会いたいというのが本音だ。 返事がない。 どこかへ出かけているのだろうか。 少し強めにノックをして呼びかける。 それでも返事がない。 嫌な予感がする。 まさかとは思うものの中で倒れてるということがあったら大変だ。 「左右田くん、開けるよ?」 少しの罪悪感を抱きつつもドアを開ける。 鍵がかかってなかったから、容易に開けられた。 コテージの中を見渡すとベッドの上に毛布にくるまってる左右田くんを見つけた。 どうやら寝ているようだ。もうお昼を過ぎるのに。 テーブルが濡れないよう、テーブルの上に持参したタオルを置き、その上に機械を置いてから近づくと綺麗な寝顔だ。いつもみんなからいじられて泣いてばかりいるけど、寝顔はとても顔立ちがよくてまた更に好きになってしまいそうだ。 ずっと見ていても飽きないな… 「う…誰だ?」 左右田くんが目を開いた瞬間、驚いてしまい後ずさりする。 「あっ、えっと…おはよう、左右田くん」 「ん、みょうじか?どうしてオレの部屋にいるんだ?」 「そ、その気になる機械を見つけたから調べて欲しいなって」 「だからって男の部屋に入るか?」 「い、いや!だって返事しないし、ドア確認したら鍵かかってなくて開いていたんだよ!嫌な予感しちゃって…」 「あ?鍵かかってなかったか?…なんだか心配させて悪かったな」 そう言い、ベットから出る左右田くん。そしてテーブルの上にある機械に目を向ける。 「あー、小型のストーブみたいなもんか?」 「ストーブ?」 「少し古めだけどな、まあ使えそうだしエアコンが壊れてたから丁度いいかもな」 「えっ、左右田くんの所のエアコン壊れてるの?」 「ああ、だから毛布にくるまってたわ。さみーし動きたくねーじゃん?」 「確かにそうだよね…そういうことならこのストーブ使っていいよ」 「オレもみょうじにお願いする所だったわ、サンキューな」 ニコッとして私の方を見る左右田くんは輝いていた、かっこいいなぁ。 「良かった、灯油とか必要だよね?マーケットから持ってこようか?」 「気にすんな、灯油やエンジンオイルは持ってるから」 「えっどうして持ってるの!?」 「あのなぁ…オレは超高校級のメカニックだぞ?」 「あ、そうでした…」 「ったく…」 やれやれという顔で左右田くんは上着を着て外に出る。 何か出来ることはないかな?と思いつつ目を向けると奥の簡易キッチンにコーヒーポットを見つけた。 隣にコーヒー袋があり使われた形跡はある。 キッチン周辺を物色してると左右田くんが灯油タンクを持って帰ってきたようだ。 「あー…さみー」 「左右田くん、お帰りなさい。あっ、ここにコーヒー袋あるんだけど温かいコーヒーでも飲む?」 「お、おう…別にオレのだからオレがやるけど」 「いいや、私にやらせて!左右田くん灯油持ってきてくれたんだし!」 「わりーな、みょうじ。お願いしていいか?」 左右田くんはストーブにトクトクと灯油を入れている。 私もコーヒーを作らなきゃな。そう思い、お湯を沸かす。 「あっ左右田くん!コーヒーに何か入れる?」 「冷蔵庫に牛乳入ってるから入れてくれ、1:1くらいで」 「それコーヒー牛乳になっちゃうよ」 「うっせー、オレはそれが好きなんだよ」 「ふふ、分かったー待っててね」 あったかいコーヒーを2つ持って左右田くんの所へ向かう。 ストーブはオレンジ色に染まり、その近くのソファに毛布をかけた左右田くんがいる。 なんか、同棲してるみたい。幸せだ。 でも、左右田くんにも好きな人がいるから、これを早く飲んで戻らなきゃな。その好きな人に勘違いされたら左右田くんを困らせることになるし。 「左右田くん、どうぞ」 「おう、サンキュー。みょうじもホラ、ストーブ点いたとはいえ、ここはまだ寒いから」 「いいの?ありがとう」 そう言い左右田くんから毛布を貰いソファに腰掛ける。 暖かいストーブの前、そして左右田くんの隣で飲むコーヒーは格別だ。 はぁ、こんな時間がもっと続いて欲しい。 「なぁみょうじ、ちと相談があるんだけどよォ」 「何かな?私に出来ることがあれば」 きっと恋愛相談だろう。何だっていい。一緒に話せるのだから。 この時だけ、左右田くんを独り占め出来るのだから。 うーん…冬休みだから雪景色を見るデートをオススメしようかな。 ウサミ先生によると浜辺ではヤシの木をクリスマスツリーに見立ててイルミネーションが飾られているんだとか。 ちょっとミスマッチだけど、きっと綺麗だから喜ぶよ。 本当は貴方と行きたいのだけれども。 |