13話

「あーあ……死んじゃったかぁ……」

 目の前に横たわるキリを見下ろして、光吉は小さくつまんない、と吐き捨てる。

横たわるキリは、もう死体と化していた。

「てゆうかさ、こんなんで小春を守るとかほざいてたと思うと、笑えるよね。バカバカしいよ本当……ねぇ、小春?」

 先ほどからずっと、咲人や海李の後ろでただずんでいた小春に問いかけるが、返事はない。

「光吉、小春がいない」

「何言ってるんだい、そんなはずないと思うけど……」

 ブレーカーが落ちたままの真っ暗闇の中小春を探すが、どうにも見当たらない。

「まさかとは思うが……逃げたのではないか?」

「でもドアを開ける音はしなかったよ? 玄関から出たなら、鈴が鳴るはずだし……どこかに隠れてるんじゃないのかい?」

「ベランダ……」

 遠くを見つめながら、咲人は小さく呟く。その四文字の単語に反応した光吉は、素早くベランダに走る。

「思った通りだな」

 小春はここから逃げたんだ。咲人は言う。

「海李もいない……あいつも一緒に逃げたに違いない。どうする、光吉」

 咲人の呼びかけに一切反応しない光吉。聞こえなかったのかともう一度光吉の名前を呼ぼうとすれば、それは彼自身の言葉によって遮られた。

「海李は……いつか殺すつもりでいたんだ。いつもいつも……俺から小春を奪って……ずっと邪魔だった。やっと殺せるんだ……」

 狂気に満ちた顔でそう言う光吉に、咲人は恐怖を覚えた。下手したら自分も殺されかねない、と。

「まずはあの二人を探そう。咲人は小春を頼むよ。俺は海李を探すから」

 そして小さく言う。もう邪魔はさせない、と。

「あ、あぁ……」

 殺意に満ちた光吉の目に少し怯えつつ、咲人は震える声で返事をした。





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