11話

「光吉、お前の考えは間違っているんだ。小春を縛り付けても、お前を見てくれるとはかなわない。仮にもしも見てくれたとしても、それは空の愛だ」

「そんなわけがない。では、小春を野放しにしろと言うのか?」

 光吉の代わりに、咲人が答えた。咲人も、光吉と同じなのだ。小さな嫉妬が固まって大きくなり、それが狂った愛情へと変わってしまったのだ。

「近いが、微妙に違うな。私が言いたいのは、お前達は小春を縛り付けず、ただ近くで見守ってやれば良いということだ」

「それじゃあ駄目なんだよ」

 少し低めの声で、光吉は言う。

「近くで守る? それじゃあ駄目なんだ。ずっと、ずっと俺が傍にいて、どんなときも守ってあげなくちゃいけないんだよ」

「気持ちは分かるが、小春は人間だ。あんなところに一生閉じ込めておいたら、小春は壊れてしまうだろう?」

「そんなことくらい分かってるよ。ただ、小春を守るためにはそうするしかないんだ。仕方ないんだよ」

「仕方ない? 小春を守りたいなら、小春を自由に生かせてやろうと思わないのか? それで小春を守る? 笑わせるな。そんなのはただ、小春を傷付けているだけだ!」

「自由? 小春に自由なんかいらないんだよ。小春は、ただ俺を、俺だけを見ていれば良いんだよ。逃げないようにちゃんと、鎖で繋いでおくんだ。俺達っていう鎖でね」

 そう言って、歪んだ笑顔を見せる光吉。彼は、完全に狂ってしまっている。頭の中はきっと、小春のことでいっぱいなのだろう。

「光吉……お前は最低だ。やはりお前に小春は渡せない……。小春は、私が守る」

「その台詞、もう聞き飽きた……よっ!」

「みつ、よし……?お、まえ……」

 何かが抜かれたような音がして数秒後、暗闇の中で何かがどさりと倒れるような音がした。





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