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10話
「そろそろ終わりにしようよ、キリ姉さん」
冷ややかな目を向けると、光吉はどこから持ってきたのか、手足が縛られ、身動きが取れないキリの頭上に包丁を振りかざした。と、そのときだ。
「ん?」
「何だ、停電か?」
部屋中の電気が全て、消えたのだ。
「ブレーカーが落ちたんだ。チッ……見てきてやるから、お前等はそこにいろ」
「海李ごときが、私に命令するな」
「るせぇ。良いからそこにいろ」
「フッ……仕方ない」
そうして、海李は落ちたブレーカーを直すために、脱衣所へと行く。その間にキリは、何とかしてこの拘束から逃れようとしていた。
「く、ぅっ……」
キリの自由を奪っているのは、太い一本のロープ。そのロープで手首、足首を固く縛られ、キリは立ち上がることですら困難な状態だった。
そんな状況で、キリは少し疑問を抱いていた。こんな状態で、小春を助けること……ましてや、ここから逃げ出し、小春を守り抜くことなんて、本当に出来るのだろうか。
悔しくて、涙を滲ませていると、ブレーカーが落ちて真っ暗な中、光吉がこう問いかけてきた。
「キリ姉さん……。キリ姉さんは、小春のことどう思ってる?」
それは、先ほどとは違い、小さく、か弱い声だった。
「俺は、小春が好きだ。……俺だけじゃない、咲人も、海李も、皆、みんなみんな、小春が好きなんだ。恋愛対象として。でも、小春が誰かと話していたり、笑いかけていたりすると、胸がズキズキするんだ。こう……小春を壊してしまいたくなる」
色々と聞きたいことがあったが、キリは黙って聞いた。
「俺以外に見せる笑顔も、声も、全部全部……閉じ込めて、独り占めしたくなるんだ。俺を見ない小春なんかいらないって、そう思うようになって……それで監禁したのに、小春は俺を見てくれないどころか、拒むんだ……。俺は小春に見てもらいたくて、頑張ってきたのに、小春は、小春は……」
だんだんと声が震えてくる光吉に、キリは思った。
ああ、この子はただ純粋に小春が好きなだけだったのだと。小さな嫉妬が固まって大きくなり、それが狂った愛情へと変わってしまったのだと。
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