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9話
光吉がキリを殴ったりしている間に、海李は迷っていた。
今、キリを殺してしまえば、小春を奪う邪魔者は消え、また小春は自分を見てくれる。小春の目に、自分が映る。だが、そうすると小春はどうなってしまうだろうか。優しい小春のことだ、そんなの目に見えている。
“私は、小春を守りたいんだ!”
脳裏に浮かんだ、キリの言葉。
自分だって、小春を守りたい。でも無理なのだ。海李の中で、二つの想いが交差していた。
自分はどうすれば良いのか。
咲人や光吉を裏切ってもして、自分一人で小春を守るか。それとも、また小春を監禁し、身も心も全て洗脳してしまうか……。
小春を守りたいという想いも強かったが、海李には小春と同じくらい大事な咲人や光吉達も裏切るわけにもいかず、そのどちらを選ぶかで、頭を抱えていた。
どちらを選ぶかで、海李の人生は大きく左右される。
“私は、小春を守りたいんだ!”
自分とは違って、真っ直ぐな気持ちを貫き通せるキリが、海李は羨ましかった。
「俺は、何も出来ねぇのか……」
「何か言ったか、海李」
「いや……何でもない」
呟いたその言葉は、小春にははっきりと聞こえていたようで、小春は悲しそうな目で海李を見つめていた。だが、そのことに、海李自身は気付いていなかった。
(何も、出来ないのか……。俺には、小春を守ることも、壊すことも……。俺の生きてる意味って何なんだ……?)
光吉達と小春を天秤にかけ、海李はまたも辛そうに頭を抱えるのだった。
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