8話

「咲人、海李。またお前達喧嘩したそうだな」

「き、キリ姉さん!」

「悪いのは海李だ。私は悪くない」

「何言ってんだ咲人! お前だけ罪逃れすんな!」

「いちいち喧嘩するな! まったく、お前達は仲良く出来ないのか」

「そんなの絶対無理だ」

◆◆◆

「昔はあんなに楽しくやっていたのに、な……」

 キリの言葉に、小春は眉を潜めた。

「俺は今のままで良いさ。小春は返してもらうよ」

「今のままでは、小春もお前達も幸せにはなれない。だからお前達に小春は渡さないと言ってるんだ」

「往生際が悪いなぁ」

 光吉はにっこり笑うと、キリの腹に脚を食い込ませた。

「うぐっ……」

 床に膝と手を着く。

「あはははっ! この程度? この程度で小春を守るとかほざいてるの? あははっ、あっははっ! キリ姉さんバカだね。本当、正真正銘のバカだよ」

「何と言われても構わないさ……。私は小春を守る。ただそれだけのことだ」

 片膝を立て、立ち上がろうとするキリ。

「本当にしょうがないなぁ……キリ姉さんは……さっ!」

「うっ」

 鳩尾したのか、キリは腹を押さえながらもまた、立ち上がろうとする。

「バカだよ、本当、ほんっとにバカ」

 光吉の長い脚が、何度も何度もキリの腹に食い込む。

 その度に小春は、涙を潤ませていた。

「バカなキリ姉さん。もうお仕舞いだよ小春、さぁ帰ろう」

 光吉が小春に手を差し伸べたそのときだった。

「まだだ……」

「キリ!」

「へーえ、まだ生きていられたんだ」

 ボロボロになりながらも、立ち上がろうとするキリを視界に、光吉の目が怪しく光った。





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