イナズマジャパンのみんなでご飯作り。佐久間視点です。 稲妻料理教室 「今日はマネージャー達が居ないから昼ご飯はみんなで作ろう!」 朝練が終わってから発せられた円堂の提案にメンバーから疑問の声が出る。それに答えたのは隣に居た風丸だ。 何でも俺等の飯は基本的にマネージャー達が作っていてくれたそうなのだが、今日は全員どこかに出掛けているらしい。 久遠は容体が悪く入院中で木野はその付き添い、音無は目金と一緒に次の対戦相手の偵察に行っているそうだ。 だからと言ってなぜ選手の俺等が自ら晩飯を作らなければならないのだろうか。シェフは居ないのかここ。 「いいですね! 俺、頑張っちゃいますよ!」 「メシ作るなんて久しぶりだなぁ!」 真っ先に提案に乗ったのは虎丸と土方。虎丸は一人で料亭を切り盛りするくらいだし、土方も弟妹の世話をしていたから料理は得意なようだ。 「俺も得意じゃないけど料理は作れるし、いいんじゃないかな」 「うん、そうだね」 今度はヒロトと吹雪が賛同する。 「なんか合宿みたいっすね〜!」 「雷門中でやったのが懐かしいでヤンス!」 続いて壁山や栗松までもが乗り気になり、円堂達を含めて半数以上が賛成派となった。 別にわざわざ作らなくても島の中に料亭くらいあると思うのだが、もはやそんな事を言い出す空気ではなくなってしまったようだ。 自炊すると決めたはいいが、約半数のメンバーはほとんどお手上げ状態である。中学生男子なんだからそんな物だろう。 ちなみに鬼道さんは教養の一環として料理も習っていたらしい。流石だ。 「とりあえず班分けをしよう」 鬼道さんと風丸が何やら相談した結果、班分けをする事になったようだ。 十六人分のおかずを纏めて作るのは大変なため四人ずつ四班に分かれて作るらしい。 俺達の班は俺と鬼道さんと豪炎寺と虎丸。材料や手間と相談した結果、おかずはロールキャベツに決定した。 「料理なんて出来んのかよ、佐久間くん?」 別の班である不動がわざわざこちらに向けて嫌みを飛ばして来るのが腹立つ。いつか殴ってやりたい。 「ふ、ふん……ただ切ればいいだけだろ」 「佐久間さん、キャベツは最初に芯をくり抜くと綺麗に剥けますよ」 キャベツのてっぺんに包丁を刺そうとしていた所で虎丸が横からアドバイスをする。 小学生にアドバイスされるなんて悔しい気もしたが、料理に置いては先輩なのだから素直に従う事にした。 改めてキャベツを持ち直し、腹に抱え固定してから芯の横側に包丁を突き刺そうとした時。 「危な――い!!」 「え?」 虎丸が急に叫び声をあげたので手を止めそちらを向く。見ると豪炎寺までもが若干表情を歪めていた。 「包丁がキャベツを貫通したらどうするんですか!」 「切腹でもする気かお前は……」 「なに言ってんだ?」 ただ野菜を切ろうとしていただけなのに切腹なんて物騒な話だ。 「佐久間、お前はまず持ち方がおかしい。その体勢だと包丁が腹に刺さるぞ」 「はい、わかりました」 「鬼道の話だけはちゃんと聞くんだな……」 そんなやりとりを離れた位置から傍観していた不動が馬鹿にするように鼻を鳴らした。 「くそっ……見ろ、俺の包丁捌きを!」 微塵切りだけは一時期ムダに練習した事があった(理由は省く)ので自信がある。 意識を集中させ、まな板から小気味の良い音を響かせながら手を徐々にずらして行く。 「どうだ!」 包丁をどかせてからまな板を斜めにし、我ながら見事に捌けたキャベツを不動に見せ付ける。 「佐久間……それはロールキャベツに使う予定だったんだが」 「あっ……」 鬼道さんに言われてから思い出したが、そう言えばそうだった。どうしようコレ。 微塵切りになった哀れなキャベツを見下ろしていると、虎丸が「大丈夫ですよ」と爽やかに笑った。 「切っちゃた物はしょうがないですから、種を焼いてハンバーグ風味にしてキャベツは添え物にしましょう!」 「あ……ああ。すまない」 肉団子をキャベツでくるむだけの料理がこんなに難しいとは(俺はキャベツ切りしかしていないが) 「なんだ、まるっきり駄目じゃねぇか」 「……お前だってロールキャベツなんて作れないだろう」 またちょっかいを出して来た不動を横目で見ながら応える。 一般的な中学生男子ならロールキャベツなんて作った事がないと思うが。 「ロールキャベツなんて初心者料理だろ」 不動はいつもの邪悪な笑みを浮かべてから残りの材料を使って調理を始め出した。 キャベツの芯を華麗にくり抜き、葉を剥がしてお湯に浸し、先に作ってあった種をくるりと巻き、爪楊枝を刺して固定し、最後に圧力鍋で煮込んで出来上がり。 その時間僅か二十分。見た目も美しく文句の付けようがない完成度だ。 「ほらよ」 ロールキャベツの乗った皿を差し出され息を詰める。 「ふん……見た目が良くても味が良くなけりゃあ……」 「なら食ってみろよ」 得意気にそう言った不動のロールキャベツを端で摘んで口に運ぶ。 程良い柔らかさのキャベツに包まれた具は噛むと肉汁が溢れて来てジューシーなコクが……って違う! 不動の料理が美味いなんて誰が認めるか! 「……不味くは、ない」 「そりゃどうも」 目を逸らしているので表情は見えないがきっと嫌な笑みを浮かべているに違いない。 例え料理だろうが今後は負けはしない。と、何故か勝負をした気分になっていると別の班から爆発音が響いた。 「円堂! どうしてカレーを作ってて爆発するんだ!」 「あれ? どこで間違ったんだろ」 ……とりあえず食べれる物を作れたあたり、俺達はマシな班だったようだ。 end ロールキャベツなんて作った事ありません。 |