※一之瀬の手術前な一マク。



だから少しだけ



 イナズマジャパンとの試合が終わった夜、俺は恋人であるマークの部屋へと訪れていた。
 俺の怪我の後遺症は予想より強くて、なるべく早く手術を受けるため明日には入院しなければならない。
 だからそれまでの間に少しでもマークの傍にいたくて。
 彼もそれをわかってくれているのだろう、意味もなく抱き締めたりキスをする俺に何も言わなかった。
 ベッドに座るマークの隣に移動し肩を掴んで左右の頬へ唇を寄せる。
 軽くキスをしてから唇を離し、再び合わせると今度は身体を強く抱き締めて深く口付けた。
 マークは少し驚いたようだが俺の背中に腕を回し舌を絡めて応えてくれる。
 何度も角度を変えて執拗に口内を貪ると息苦しくなったのか軽く背中を叩かれた。
 名残惜しみながらゆっくりと唇を離せば互いの間に銀糸が伝う。
「んっ……カズヤ、今日はどうしたんだ? 何だか積極的だな」
 口の端から流れた唾液を手の甲で拭いながらマークが尋ねてくる。
 その表情は困ったようにも泣きそうにも見える笑顔で、たまらずその身体をきつく抱き締めた。
「カズヤ……」
「マーク」
 俺の肩に顔を埋めるマークの身体は僅かに震えている。
「手術が失敗したらもうこんな事も出来なくなるかも知れない……だからその前に思い切り君を抱かせてくれ」
「ああ……俺の身体にカズヤの記憶をたっぷり刻み込んでくれ」
 返事を聞いてからもう一度キスをして、馬鹿みたいに何度も何度も繰り返した。



 お互いに服を脱がし合ってから縺れるようにしてベッドに転がる。
 マークの首、胸、腹、脚と至る所にキスマークを付けながらじっくりと時間を掛けて前戯をした。
「生でもいい?」
 挿入する段階で簡潔に問えば彼は小さく頷いて答える。
 いつもセックスをする時はスキンを着けているのだけれど、今日は生身でマークの胎内を感じたかった。
「あ……んんっ」
 引き締まった腰を抱き寄せながら慎重に自身を埋めて行く。
 すべてが収まるとマークの脚が俺の腰に回り、引き寄せるように絡み付いた。
「ふぁっ……カズヤぁ」
「マークっ」
 俺の激情をぶつけるかのごとく奥深くへと自身を打ち付ける。
 いつもなら気に掛けているはずの、ベッドが軋む音が隣室に聞こえないかという心配も今日は考えられなかった。
「んっ、あぁっ!」
 後ろだけの刺激で立ち上がっていたマークの自身を握り上下に扱く。
 ふるふると震えるそれの先端からは先走りが少しずつ溢れていた。
「あっ、あぁ……!」
 やがてマークの身体が断続的に震えて精液が放たれ、その際の締め付けによって俺も強い射精感に襲われる。
 彼の胎内には出すまいと自身を抜こうとしたのだが、腰に脚が絡み付いたまま離してくれない。
「マーク、離してくれないと中に……」
「構わない。俺の中に出してくれ……」
 耳元で熱っぽく囁くマークの声によって更に身体が上気して行くのを感じる。
「マークっ、マーク好きだっ……!」
「あっ、カズヤぁ!」
 まるで他の言葉を知らないみたいにお互いの名を呼び合って、最後は一緒に絶頂を迎えた。



 情事が終わってからも俺たちはずっとベッドの中で抱き合っていた。
 腕の中に居る愛しい彼の心音が心地良くて、このまま離したくないとすら考えてしまう。
「……またやろうな、カズヤ」
 寝ているのかと思っていたマークが顔を上げる。
「やろうって、セックス?」
「ば……バカ! サッカーの話だ!」
「ふふっ、冗談だよ」
 さっきまでしていた事なのに顔を赤らめるマークが可愛くて、その白い手をぎゅっと握る。
 俺は必ず返って来るよ。フィールドと君のもとに。



(だから、少しだけさよなら)



end

洋画のバカップルみたいにハグとキスばっかりしてればいいと思う。


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