アニメ99話後のディラマク。二人は幼なじみ設定です。



泣いてもいいよ



 思えばミーはマークの泣いた姿をほとんど見た事がない。
 小さい頃から泣くと言えばもっぱらミーのほうで、マークはいつもそれを宥める役だった。
 膝を擦り剥いたとぐずっていればポケットから絆創膏を出し、取って置いたお菓子を食べられたと癇癪を起こせば自分の物を半分わけてくれた。
 泣いた所なんてそれこそバラエティー番組を観た時の泣き笑いだとか、欠伸をした弾みに涙が流れた時だとかしか思い浮かばない。
 そんなマークがジャパンとの試合が終わったあと、選手寮の自室で膝に顔を埋めて泣いていた。
 試合が終わった直後も泣きそうにしていたけど、その時はすぐに起き上がっていつもの凛々しい『キャプテン』のマークに戻っていたのに。
 きっと、あんなに頑張ったのに負けてしまった事だとか。
 どうしてカズヤが独りで後遺症と戦っていた事に気付けなかったんだろうとか。
 色んな感情が綯い合わさって、頭の中がぐるぐるになっているんだろう。
「……マーク」
 ベッドの上で蹲っているマークの身体を背中から覆うようにして抱き締める。
「マーク、泣かないで」
「……泣いてない」
 強がっていてもマークの声は震えていて、膝に隠れた顔からはすんすんと鼻を啜る音が聞こえた。
 本当は一人にして欲しいのかも知れないけど、こんなに弱っているマークを独りになんか出来なくて。
 アイガードを額にずらして今度は正面から抱き締めた。
「……さっきのはウソ。ミーも泣くから、マークも思いっ切り泣けばいいよ」
「…………うん」
 しばらく沈黙していたけどやがて小さな小さな声でマークが呟く。
 やっと顔を上げてくれた彼の濡れた目尻に軽くキスをしてから、二人で抱き合って子供みたいにわんわん泣いた。
 何分、いや何十分経ったかわからなくなった頃にようやく泣き止んで、泣いた余韻でまだしゃくりあげているマークの背中をあやすように摩る。
 まるで小さい頃のミーがマークに宥められていた時みたいだ。
 泣きはらしたあとにお互いの顔を見ると目の周りが赤く腫れあがっていて。
 それを見ていたら次には可笑しさが込み上げて来て、箍が外れたように笑い合った。



 その夜は久しぶりに一つのベッドで手を繋ぎながら寝る事にした。
 昔と違い大きくなった自分たちの身体は、くっついていなければどちらかがベッドから落ちてしまいそうだけれど。
 よく考えれば小さい頃も狭くはなかったのにピタリとくっついて寝ていた気がする。
「明日、カズヤに挨拶に行かないとな」
「ミーもそう思ってた」
 やっぱり同じ事を考えていたんだと思うとまた可笑しくて、シーツにくるまりながらクスクスと笑った。
「おやすみディラン」
「グッナイ、マーク」
 就寝の挨拶をしてから啄む程度に唇を合わせて、あったかい気持ちで眠りに着く。
 明日は泣き顔じゃなくて、笑顔でカズヤを送り出そうね。



end

ディラマクは親友以上恋人未満くらいがいいな。


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