※ディラマク。ディランが病み気味。



世界の終わりは



 マークと一つになりたい。
 セックスをしたいとか子供が欲しいとかじゃなくて、言葉の通り溶けて一つになってしまいたい。
 マークの血肉を食べて、その養分で自分の肉体が構成されるのならこの上なく幸せなのに。
「マークを食べちゃいたいよ」
 隣に座っていたマークにそう言えばセックスの合図だと捉えたのか、ミーの肩に頭を乗せて擦り寄って来る。
 だからそのままベッドへ優しく押し倒しズボンを脱がして彼の自身を口に含んだ。
 手で扱いて軽く立たせたそれを、喉につっかえるくらい奥まで含んで貪るように愛撫をする。
「ディランっ、出るっ……」
 切羽詰まった声をあげるマークのを更に吸い上げて、手で絞り出すように動かした。
 やがて放たれた精液を喉を鳴らして飲み込み、彼の自身に付着していた分も一滴残らず吸い込む。
 それが終わると脚を広げたまま荒い呼吸を繰り返すマークに伸し掛かり、まだ精液が残る口でキスをした。
「ん、ふっ……」
 精液の苦さに顔をしかめる彼に構わず口内を貪る。
 歯列をなぞり内壁を舐め、舌を絡めて甘噛みをして唾液も吸い上げて。
 この柔らかい舌を噛み千切って食べてしまいたい。それがダメならミーのを食べて欲しい。
 唇を離すとマークの脚を胸に付くくらいに曲げて露わになった後孔を舐めた。
「っ、ディラン!? やめっ……」
 嫌がる声を無視して舌を侵入させ暖かい内壁を味わう。
 これがマークの肉の味なんだろうかと考えると妙に興奮して、ぴちゃぴちゃと音を立てて舐め回した。
 抵抗をやめ大人しくなった彼の顔を見ると瞳がとろんと潤んでいる。
「んっ……ひあぁっ!」
 舌を離し名残惜し気にヒクつく後孔に自身を挿入すると、彼は仰け反って嬌声をあげた。
「いたっ……!」
 剥き出しになった白い首筋に思い切り噛み付くとマークは眉を顰める。
 赤い痕になった歯形を満足気に眺めながら、彼の身体をガクガクと揺さぶって責め立てた。
 やがて絶頂が訪れ最奥へと精液を注ぎ込む。このままこれが内壁に吸収されて、マークの養分になれば良いのに。
「んっ……熱い……」
 蕩けた表情を浮かべる彼を見ながら、今度は内腿に齧り付いた。



「ミーが吸血鬼だったら良かったのに」
「どうしたんだ、いきなり」
 情事が終わりシャワーを浴びて来たマークにそう告げる。
「ミーが吸血鬼だったらね、マークの血を毎日吸って生きるんだ。そしたらミーはマークで生きてるって事になって、マークはミーの一部って事になるんだ」
 こんな事を言ったら気持ち悪いと思われるだろうか。
 だがそれを聞いた彼の表情は嫌悪を表す類の物ではなかった。
「……それもいいな。でもディランが吸血鬼だったら俺は人狼になりたい」
「人狼?」
「狼男。吸血鬼の下僕さ」
 ホラー映画とかで観るだろ、とマークは説明する。
 彼が言う人狼は満月を見ると狼に変身するヤツじゃなく、昼間でも行動出来る吸血鬼の事らしい。
「人間だったら吸血鬼より先に死んじゃうけど、人狼は吸血鬼と同じで長生きだから」
「いいね。そうしたら何十年も何百年もマークと一緒に居られるんだ」
「それでさ、何千年かあとに人類が滅んだ時、世界に俺とディランの二人だけだったら素晴らしいと思わないか」
「そうだね。その時はミーがマークの血を吸い尽くして、マークはミーの胸に杭を打つんだ」
 ありもしない幻想を語りながら二人で小さく笑う。
 ミーの手でマークを殺すのも良いけど、マークに殺されるのも悪くない。
 だけどやっぱりマークが死んだ時は、その身体をミーにくれないかな。



end

屍鬼(吸血鬼)とグランフェンリル(狼)の影響で。


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