ロコウィンとリトルギガントメンバー。



繋いで帰ろう



 今日はウィンディと一緒にジャパンエリアまで遊びに行こうと約束していたのに、選手寮の部屋まで迎えに行くとそこは蛻の殻だった。
 朝ごはんのあとに外へ遊びに行くと言っていたからそれきり帰っていないのだろうか。
 仕方がないのでコトアールエリアの集落に居るチームメイトから目撃情報を尋ねる事にした。
「ゴーシュ、ウィンディがどこに居るか知らない?」
 手始めに聞いたのはリトルギガントのエースストライカーであるゴーシュ。
 その辺に居る子供たちを眺めていた所を見ると、故郷の弟妹たちを思い出していたのだろう。
 声を掛けるとゴーシュは若干恥ずかしそうな顔でこちらに振り向いた。
「……アイツならリューと『風になって来る』ってどっかに行ったぞ」
「風……走り込みかな? ちょっとグラウンドを見て来るよ」
 ウィンディとリューはポジションの違いこそある物の、同じスピードタイプの選手という点で仲がいい。
 チームが出来たばかりの頃は負けず嫌いのウィンディがリューをライバル視していたけど。



 グラウンドに向かう途中の道でリューが外国の女の子に囲まれてお喋りをしていたので足を止めた。
 リューはコトアールに居る頃からモテてたけど、外国の人にまでモテるのはさすがとしか言えない。
 それはさて置き一緒に居るはずのウィンディが見当たらず、話に割り込んでリューに尋ねた。
「リュー、ウィンディはどうしたの?」
「あぁ、彼ならさっきグラウンドでドラゴに激突して追い回されてたよ」
「また? 絶対にわざとからかってるよね」
 生真面目ですぐ熱くなる性格のドラゴはしょっちゅうウィンディの悪戯の的にされている。
 毎度のごとくドラゴの背中にタックルをかまし、素早く逃げて追い回されるウィンディが簡単に想像出来てしまう程だ。



 グラウンドに着くとウィンディの姿はなく、代わりにドラゴが一人シュート練習をしていた。
「ドラゴ、ウィンディ知らない?」
 ドラゴは足を止めると不機嫌そうに(もともとそんな顔付きだけど)こちらを向いた。
「ウィンディ? さぁな、どっか走って行っちまったよ」
「もおぉ……落ち着きがないんだから……」
 きっと逃げ回っている内に走るのに夢中になってしまい、ドラゴを振り切って一人で風を切っているのだろう。
 こうなったらもうどこに向かったのか検討も付かない。



 宛もなく集落をうろついていると、二人でお菓子を食べているウォルターとマロンを見付けた。
「ねぇ二人とも、ウィンディ見なかった?」
「ウィンディさんッスか?」
「それならあっちで木の実を拾ってたでヤンスよ」
 ウォルターとマロンは顔を見合わせると、揃って森のほうを指差す。
 もしかして拾い食いでもしているのだろうか。危ないからやめなさいって言ったのに。



 コトアールエリアの集落からだいぶ離れた森の中にウィンディは居た。
 走り疲れたのか切り株の上に座って足をプラプラとぶらつかせている。
「あっ、ロココ!」
「もう、やっと見つけたよ。心配したんだから!」
「リスを見つけて追い掛けてたら道に迷っちゃってさ」
 そう言って楽しそうに笑うウィンディに溜め息が漏れる。
 リスを追い掛けたくなる気持ちはわかるが、後先を考えずこんな森の中まで来てしまうなんて。
「あのねぇ、帰れなくなったらどうするつもりだったのさ」
「それはわかんないけど……俺が迷ったらロココが最初に見付けてくれるんだろ?」
 首を傾けながら悪戯っぽく笑われて、悔しいけど反論は出来なかった。
「もう暗いし帰ろっか」
「うん、また今度遊びに行こうな」
 座って居るウィンディの腕を引き立ち上がらせる。
 今度こそはぐれないように、集落まで手を繋いで帰った。



(君がどこに居ても、必ず僕が見付けるよ)



end

ロココはウィンディに振り回されてたらいいなぁと。


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