バン→ガゼでギャグ風味。ガゼルがにょた。



白いワンピース



 何となく街をブラブラしていたら目に飛び込んできた真っ白な丈の長いワンピース。
 ショーウィンドウに飾られたそれを見た途端、ガゼルに着せたいと直感的に思った。
 普段はほとんどユニフォーム姿で男のようにも見えるアイツがこれを着たらどれだけ化けるんだろう。
 頭の中でそれを想像してみたが絶対に似合う。間違いない。
 しかし所詮中学生で、なおかつ孤児である俺にそれほどの財力があるはずもなく。
 このちょっと洒落た店に飾ってある服を買うとするならば、数ヶ月は他の出費を我慢しなければならなくなる。
 俺は悩んだ。時間の経過を忘れるくらい悩んだ。
 そして何時間が経過したかわからなくなったころ、ヒートとネッパーが帰らない俺を探しに来たらしい。
「あっ、いたいた!」
「バーン様!」
 後ろから掛けられた声に振り向いてから俺はやっと気が付いた。
 ……女物の服を凝視してるなんて怪しすぎるだろう! と……。
 そんな俺の焦りをよそに勘の良いヒートはワンピースを見て嬉しそうに尋ねた。
「もしかしてガゼル様にプレゼントするんですか?」
「えっ、そうなんですか? なら俺たち少しならカンパしますよ!」
 ヒートの言葉にネッパーまでもが嬉々として反応する。コイツらはどうしてこんなにテンションが高いんだ。
 だがカンパというアイデアはおいしい。俺はどうにかしてこのワンピースを買おうと口実を探した。
「誤解するなよ。ガゼルにと思ったのは確かだが別にプレゼントとかじゃなくてだな、アイツ私服なんて持ってるのかよって意味で……」
「わかってますって!」
「ちゃんと包装して貰ってくださいよ!」
 話も聞かずに背中を押され店内へと放られる。女性客ばかりのそこが恥ずかしくて急いでワンピースを掴んだ。
「プレゼントですか?」
 レジの店員に聞かれ思わず否定しそうになった所を必死に理性で止め頷く。こうしなければ包装して貰えないのだから仕方がない。



 研究所に帰った俺を新たな難関が襲った。買ったはいいがどうやって渡すんだよコレ。
 ワンピースが入った袋を持ち悩みながらガゼルの部屋周辺を徘徊する。
 ちょっとドアをノックしてすぐに渡せばいいだけなんだ。そうなんだが。
「あぁもう! どうすりゃいいんだ!!」
「……人の部屋の前で何をやってるんだ君は……」
 大声で叫びながら廊下で頭を抱えていると、部屋のドアが開き呆れた様子のガゼルが顔を出した。
 こうなったらさっさと渡してこの場を去ろう。
「……やる!」
「え?」
 手に持った袋をガゼルに押し付けると、当たり前だが訳のわからないという顔をされた。
「……言っとくがヒートとネッパーに頼まれただけだからな!」
 なにも言われていないのにチームメイトの名前を出して誤魔化す。アイツらも金は払ったんだしウソではないよな。
 ガゼルはそんな俺と袋を交互に見やってから静かに包装を開いた。
「……服か?」
「そーだよ」
 中身を見て小さく言われた質問にぶっきらぼうに答える。
 てっきり女扱いするなとか文句を言われると思ったら、意外にもガゼルは恥ずかしそうに顔を赤らめていた。
「その……男が女に服をプレゼントするのは、それを脱がせたいという意思表示だとグランが……」
「はぁ!?」
 やがて小さく呟いたガゼルの言葉に唖然として口を開く。グランの野郎、余計な入れ知恵をしやがって。
「そんなんじゃねぇよ! ただお前に似合いそうだなって……」
「そ……そうか。ありがとう」
 想定外の出来事に思わず本音が出てしまい、言い訳をしようとして余計に焦ってしまう。
 ……ん? いまコイツありがとうって言ったような……。
「まぁ、機会があったら着てやってもいいぞ」
 ……気のせいだな、うん。
 いつもの腕組みをしながらふんぞり返るガゼルに先ほどの疑問は吹っ飛んだ。
 なんでこんな可愛い気のないヤツが気になっちまうんだろうな俺は。あとグラン殺す。



(なぁ、あの二人いつくっつくと思う?)
(え? まだくっついてなかったのかよ)



end

バンガゼが別人になりました。


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