緑風。アニメ78話ネタです。 アイスクリーム 日本代表に選ばれてからは雷門中学にある選手寮で暮らしているけど、稲妻町の事はまだほとんど知らない。 食事中に何気なくそう話すと向かいの席に居た風丸が「じゃあ今度案内してやるよ」と応えてくれた。 それから数日経って貴重な練習のない日がやって来た。 あらかじめ風丸と約束していた場所に向かえば、すでに彼は到着して携帯を弄っている。 俺も早めに待ち合わせ場所に着いたんだけど風丸は更に早かったようだ。 「かーぜまるっ!」 「うわっ!?」 バレないようにそろりと後ろ側に回り、名前を呼びながら抱き付くと風丸は驚いた声をあげて体勢を崩した。 「緑川か。びっくりさせるなよ」 「ごめんごめん」 お互いにくすくすと笑いながら並んで歩き始め、特に目的地を定めず風丸の案内で稲妻町のあちこちを回る。 響木さんが経営してる雷雷軒だとか、雷門イレブンの特訓場である鉄塔広場だとか。 意外と広い稲妻町に歩き疲れ商店街の裏あたりまで来て足を止めると、風丸に近くの公園で休もうと持ち掛けられる。 案内された公園まで歩くと広場の中央にあるサッカーグラウンドの前に有名なアイス店の屋台が駐車していた。 「ラッキー! 食べようよ、俺あそこの割引券を持ってるんだ。奢るよ!」 「いや、俺は自分で払うよ」 「いいからいいから!」 遠慮する風丸を引っ張りアイス屋へと向かう。 実は割引券は風丸と出掛ける事を話したヒロトに「デートなら良い物があるよ!」と渡された物だ。 男同士で出掛けるのにデートという言葉を使うのかどうかは疑問だが、割引券は有り難いのでツッコミはしないで置いた。 「お姉さんアイス二つ!」 店員に話し掛けてから割引券はダブル用なので風丸にも二種類を選ぶように伝える。 「俺はブルーハワイとレモンスカッシュね!」 「じゃあ俺はメロンソーダとブルーベリーで」 少し悩んだ末に風丸が選んだ二種はどちらも爽やかなフルーツ系だった。やっぱり暑い日はバニラやチョコよりもソーダとかフルーツ系が良いよね。 しばらく待ってから盛り付けられたアイスをそれぞれ持ち、公園に埋められているタイヤの上に座った。 「ねぇねぇ。なんかコレ、風丸っぽいと思わない?」 購入した二段重ねのアイスを指差して風丸に見せる。 爽やかな青色のブルーハワイは風丸の髪、明るい黄色のレモンスカッシュは風丸が着ているパーカーと同じ色。 もちろん意識して選んだんだけどさ。 「言われてみればそうかも……なんか俺のも緑川に見えてきた」 手に持ったアイスを眺めながら風丸が苦笑いを浮かべる。 メロンソーダは俺の髪と同じ緑色だし、ブルーベリーは重ね着の上側に着ている半袖と同じ色だ。 意図せずと言えどもお揃いみたいでちょっぴり嬉しい。 「ねぇ、メロンソーダひと口ちょうだい? 俺のブルーハワイも食べていいからさ」 「じゃあひと口ずつな」 風丸の持っているアイスをひと口だけ食べて今度は自分のを差し出す。 遠慮しているのか少しだけしか食べない風丸を見ながら、コレって何気に間接キスじゃんかと思った。 そのまま食べ進め口がコーンに差し掛かったあたりで隣を見ると、風丸はまだ二段目のアイスを食べ始めたあたりで。 「早く食べないと溶けちゃうよ?」 「……アイス食べるのって苦手なんだ。噛むとこめかみが痛くなるし、舐めると間に合わないし」 急かすように言うと意外な言葉が返って来た。風丸にも苦手な物はあるんだな。 自分のアイスを食べ終わってから再び隣を見れば、風丸は予想通りまだアイスと格闘している。 溶けてしまいコーンまで垂れたアイスを舌で舐め取る姿が何だか妙にエロい。 この姿を写メってキャプテンに送ったら喜ぶかなぁ、なんて不純な考えが頭をよぎった。 「ごちそうさま。美味しかったよ、ありがとう」 「どういたしまして」 やっとアイス食べ終えた風丸にお礼を言われる。俺もあとでヒロトにお礼をしなきゃ。 「じゃあまた町案内でもするか?」 「うん、頼むよ」 腰を掛けていたタイヤから立ち上がり、まだ行っていない商店街周辺に行こうと話しながら歩いて行く。 ホントはもう飽き始めていたんだけど、風丸と一緒にいられるならどこだって楽しくなる気がした。 ちなみにキャプテンと冬花さんのデート現場に出くわしたのはそれから少しあとの話だ。 end 緑風は百合ップル。 |