一マク前提でディラン+マークのギャグ。マークのキャラが崩壊気味。
アメリカ四人組は昔からの知り合い設定です。



拝啓、遠い君へ



 カズヤがジャパンに帰国してからというもの、マークの調子は沈みっぱなしだ。
 サッカーをしている間はみんなが居る手前か普段通りの振りをしているが、ミーと二人きりになった途端に魂が抜けたように脱力してしまう。
 それだけミーに心を許してくれているのかと思えば嬉しくもあるのだけど。
 心配になってマークの部屋へ行って見れば机に突っ伏して微動だにしない。
 これはもう恋煩いなんて可愛い範囲は通り越して鬱状態と言えよう。
 いつもの凛々しいマークはどこに行ったのだろうか。
「ほら、元気出しなよ! マークが落ち込んでたらカズヤだって心配するよ?」
「大丈夫さ……どうせカズヤは日本人のほうが良いんだから」
 肩に手を置いて励ますとマークは俯いたまま小さく呟く。これは重症だ。
「そんな事ないさ! マークより綺麗なヤツなんてそうは居ないよ」
「いや、何でも向こうにはヤマトナデシコとか言う人種が居るそうじゃないか」
 よくわからないが、マークいわくそのヤマトナデシコとやらはジャパニーズの憧れの的らしい。
 だけどカズヤはアメリカ育ちだし、好みのタイプだってジュリア・ロバーツだって言ってたじゃないか。
 いやマークがジュリア・ロバーツに似てるとか似てないとかそう言う訳じゃないんだけど。
「メールだって朝と昼と夜しかしてくれないし……」
 なんだ、メールはしていたんじゃないか。朝昼晩ってそれだけすれば十分だろう。
 どうせ一回にやり取りするメールの量だってかなり多いんだろうし。
「もう……カズヤのばかあぁ! 早く帰って来い!」
 マークはいきなり大声で文句を言うと両手で思い切り机を叩いた。
 こんな子供みたいな姿は初めて見るかも知れない。
 それだけカズヤが愛されてるんだと思うと少し羨ましくなった。
「マーク、きっとカズヤだって寂し……ん?」
 言葉の途中で玄関のほうから何かの物音が響く。
 客かと思いそちらを見ると、床に一通の手紙が落ちていた。
「エアメール……?」
 手紙を拾ったマークが不思議そうに首を傾ける。
 サッカーをしている間は頭が切れるのに、どうしてプライベートではこんなに鈍いんだ。
 海外の知り合いなんて一人……いや二人しか居ないじゃないか!
「ひょっとしてカズヤからじゃないかい?」
 マークから手紙を奪い封筒の裏側を見ると、予想通り『一之瀬一哉』の名前が書かれている。
 さすがカズヤ、ナイスタイミングだ。
「やっぱり! ほら、早く開けてみなよ!」
 手紙を押し付けて開封を催促するとマークは机の引き出しからペーパーナイフを取り出す。
 端のほうを丁寧に開けた封筒の中には何枚かの便箋と写真が同封されていた。
 便箋を開くマークの後ろに回ってミーも内容を覗き見る。
 手紙の内容はこんな感じだった。



――――――――――

 マーク、元気かい? メールじゃ味気ないから手紙を書いてみたんだ。
 ディランとは仲良くしてる? 俺は向こうの学校で楽しくやってるよ。
 マークが居ないのはやっぱり寂しいけど、土門や昔の友達とも再会してまたサッカーをやってるんだ。
 そうそう、そこのキャプテンが面白いやつでね……(中略)
 チームメイトと撮った写真を何枚か同封したよ。この手紙が届いたらまたメールして欲しいな。

 一之瀬一哉

――――――――――



 同封された写真には前と変わらない爽やかな笑みを浮かべるカズヤと、チームメイトらしき人たちの姿が写されている。
 数ヶ月前に別れた頃よりも少し逞しく見えるカズヤにミーも安心して笑みが零れた。
 肝心のマークと言えば写真を持ったままぷるぷると震えている。
 もしかして感動のあまり泣きそうなんだろうか。
「な……」
 やっとマークが口を開いたと思った次の瞬間。
「馴染んでんじゃねえぇ――!!」
「マ――ク!?」
 そう叫ぶとあろう事か写真を真っ二つに破いてしまった。
 まさかマークがカズヤからの写真を破くなんて思いもしなかったため動揺を隠せない。
「俺のカズヤがジャパンのイエローモンキーに取られたあぁ!!」
「マーク落ち着いて! とりあえず落ち着こう!」
 頭を抱えながら珍しく暴言なんて吐くマークにこちらまで混乱してしまう。
 カズヤが送ってきた手紙と写真は可哀想なくらいビリビリに破かれてしまった。
 その場はなんとか暴れ狂うマーク抑えたが、それから何度も似たようなやり取りをしたのは言うまでもない。
 カズヤ……ミーの平穏のためにも早く帰って来てくれよ。



end

写真を破いちゃうくだりはハレグゥのパロです。


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