俺の好きなヤツは、俺の同級生。
俺の好きなヤツは、火薬委員会。
俺の好きなヤツは…
「へいすけーっ!!」
「うわっ、腰を撫でるなっ!」
極度の、
ど 変 態 。
俺が想いをよせる名前は、抱きつき癖がある。
その上、抱きついて全身を弄り尚且つ揉みまくるから、上級生の間では
変態と呼ばれている。(下級生には自重するらしく、優しい先輩で通ってる)
「お、はちー!」
図書室の前を通りかかると雷蔵の腰を撫でさすっていた名前が俺に気づいて手を振ってきた。
今は中在家先輩もいないらしく名前の声にも特に何も飛んでは来ない。
「どこいくんだ?」
「食堂。昼飯食いに…って、うわっ!?」
雷蔵に手を振って図書室から出てきた名前はそのまま俺に抱きついてくる。
ぎゅーっと強く抱きつかれて体温がいっきに上昇するのが分かった。
「ちょ、名前…」
「んー?」
名前に抱きつかれるのは嬉しい。でも名前は俺のことなんとも思っていないだろうから…。
「……俺なんか、ゴツくて抱きついたって面白くも何ともないだろ。」
俺は兵助みたいに細くないし
勘みたいに柔らかくないし
三郎や雷蔵みたいに小柄じゃない。
抱きつかれた嬉しさと悲しさと切なさと。
複雑な気持ちで名前の抱擁から逃れようとする。でも逃げられない。
名前は意外に怪力なんだ。
「え?八は抱き心地いーよ?五年の中で一番好きなんだけど。」
「…え…」
名前の口から「好き」という言葉が出てドキッとした。それは、どういう意味だ…?
「やっぱさ、好きな奴に抱きつくのが一番だろ?」
にっこりと悪戯っぽい笑みを浮べる名前。しかし俺がその意図を問う前に名前は俺から離れ、向こうからやってきた兵助に抱きついた。
「あ、名前。」
「へーすけ、今日もいい揉み心地!」
「変態。」
腰やら胸やらをもみ倒す名前に大きな反応を返すことなく、兵助は名前を引きずって俺のところへくる。
「はい、八左ヱ門。名前返却するよ。」
「返却って……」
名前の首根っこを掴み自分から引き剥がした名前を俺に突き出す兵助。
名前の手がわきわきしてる。気持ち悪い。
「俺これから豆腐の研究だから。委員会までには戻るけど。サボるなよ名前。」
「うん、バイバイ豆腐小僧。」
「バイバイ変態。」
名前のわきわきした手が俺を捕らえる。
名前に抱きつかれる俺を無視して兵助は廊下の向こうに消えた。
「…はーち。」
「…なんだよ。」
「妬いた?」
「…はぁ?!」
大人しくなったと思ったら名前がそんなことを言い出した。
…そりゃ妬いたさ…妬いたとも…!
だけどそれを口に出すのはできなくて無言で名前を睨む。
「もー、はちってば可愛いんだから!」
「か、可愛い…!?」
「可愛い。はち好き。可愛い。愛してる。」
…なんだか愛の言葉を並べられたぞ。
それは俺の好きと同じ意味だよな。
「はちも俺のこと好きだろう?」
ばればれだよと格好良く笑う名前。そして俺の耳元で「素直になりな。」と囁いた。
「……………お、俺、名前の事……………っっっ!?」
言葉の途中で尻に違和感。
名前がにやにやしながらエロい手つきで俺の尻を揉んでいる。
……………この、変態が!!!
そっちがそんな態度だから!(えー、ここで殴られんの?!)
(う、うるさい変態っ!)
(八ひでー。素直になれって。)
(お前がまともになったら考えてやるっ!)