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長編《可愛いは正義。》より移動



「孫兵?」
「…せんぱい、」

夕食を食べ終え食堂から戻る途中、可愛い後輩が廊下の隅で膝を抱えているのを見つけた。
彼は三年の伊賀崎孫兵。毒蛇や毒虫を愛する少々変わった私の可愛い後輩だ。

「そんな薄着でどうしたんだい?」

孫兵は忍装束ではなく薄い部屋着だった。
もう雪が降ってもおかしくないようなこの時期に、この格好では凍えてしまう。

「……じゅんこがぁ………!」

じゅんことは孫兵が可愛がっている蝮の名だ。
少し前に冬眠にはいったと聞いたが………なるほど。

「そっか、じゅんこが冬眠しちゃったから寂しいんだな?」

いつも一緒にいたから、きっと独りになってしまった気がするのだろう。
無言で頷く孫兵の頭を撫でてやり、冷たくなってしまっている体を抱き上げる。

「せ、先輩!?」

驚いている孫兵に笑いかける。

「お、重いですよ!下ろしてくださ…!」
「大丈夫、軽いよ。」
「で、でもっ…」

赤い顔でおろおろする孫兵は大変可愛らしい。…いや、いつも可愛いのだけれど。

「今夜は一緒に寝ようか。」
「え!?
「私じゃ役不足かもしれないけれど、じゅんこの代り。ね?」

了承の言葉が返ってくるのは予想済みなので自室への廊下を歩き出す。

「…うれし、です。」
「私も、孫兵と一緒にいられて嬉しいよ。」

きゅっと私の服を握る孫兵がそう呟く。私がそう返せば、赤い顔で幸せそうに笑ってくれた。


ごめんな、じゅんこ。
孫兵は私に任せて、ちょっと長めに冬眠しておくれ。


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