「こんちはー。」
「おぉ〜名前!いらっしゃい!」
久しぶりにスペインの所へ来た俺。スペインは相変わらず緩い顔で「久しぶりやんなぁ〜。」と走ってくる。
「久しぶりー。遊びに来たよ。」
「待ってたでぇ〜はよあがってなぁ。」
嬉しそうな笑顔で俺の手を握るスペイン。あぁ可愛い。
赤いトマトがたわわに実る畑に挟まれた道を二人で並んで歩く。
美味しそうなトマトだ。今度スペインに料理してもらおう。
そんなことを頭の端で考えながら案内されるままに屋敷へと入る。
とおされたリビングでソファーに座り、紅茶を淹れると言ってキッチンへ行ったスペインを待つ。
「ん?」
ふと視線を感じて顔をあげると扉のところに誰かが隠れていた。
ひょっこりとアンテナが見えているのでバレバレだが。
「よぉ、ロマーノ。」
「…おぅ。」
声をかけて手招きするとおずおずと戸の影から出てきたロマーノは俺の隣へと座った。
「久しぶり、最近どう?」
「…スペインうぜぇ。」
「ははっ、そーかそーか。」
よしよしとロマーノの頭を撫でながら笑う。
相変わらずのツンデレめ。
それから少しそんな話をしているとスペインがお茶を運んできてくれた。
「なんやロマーノ、嬉しそうやんなぁ〜。」
「うるせースペイン!」
「ひ、ひど…」
照れ隠しにげしげしとロマーノはスペインを蹴る。
そんなに揺らすと紅茶零れるよ。
「ありがと、スペイン。」
「どういたしまして〜。」
ティーカップを受け取り、スペインが座るのを待って口をつけた。
「んー、美味い。」
「ほんま?」
「ほんま。美味しいよ、ありがとう。」
よかった、と笑うスペインはとても可愛かった。
それから他愛ない話を続けているが、時々ちらりちらりとスペインは切なそうに俺を見る。
その原因は俺の左腕にくっつくこいつ。
「…ホンマ、ロマーノは名前が大好きやんなぁ。」
ロマーノである。
一応俺とスペインは恋人同士であるので、久しぶりに会えて嬉しいわけだ。
それなのに俺にはロマーノがひっついていて…。
ちなみに、複雑であろうスペインの心情が分かっていてロマーノはやっている。
ほんと、ドSな奴だ。
「…あ、俺トマト採ってくるわ…名前、今日泊まるやろ?」
結局堪えられなくなったのかスペインはそう言い出した。
「あぁ、泊めてもらうよ。久しぶりだしね。」
ゆっくりしててな、とスペインは立ち上がり部屋を出ていく。
寂しげなその背中がとても可愛く見える辺り、俺もけっこうSかもしれない。
「あー、面白かった!」
「…はぁ、ロマーノ。」
二人だけになると、にぱっと明るく笑いながら俺の腕を離すロマーノ。
こいつの悪戯にも困ったもんだ。
「あんまりスペインいじめんなよ。」
「なんだよ、名前だっていじめてるくせにー。」
ずりー、と口を尖らせるロマーノの頭を軽く撫で俺は立ち上がる。
「さて、ロマーノは出掛けるよな。支度手伝うよ。」
「…は?」
「フェリシアーノの所に行くのか?スペインに伝えとくな。」
俺が笑顔でそう言うと、ロマーノは呆れた顔になり、降参だと両手をあげた。
「はいはい、出掛けるよ。でかければいーんだろっ!」
お前等の邪魔なんて誰がするかぁー!と叫んでロマーノは二階へかけ上がっていく。
「手伝いはー?」
「いらねーよばか!」
その後ろ姿を笑いながら声をかければ、予想通りの声が返ってきた。
「スペイン。」
ロマーノを送り出して、俺はトマト畑に来た。
緑の枝と赤い実に囲まれてスペインはカゴいっぱいにトマトを採っていた。
「え、名前…!?」
声をかけると驚いて振り返る。俺を映した瞳がわずかに潤んでいて、いじめすぎたかなと思う。
「手伝うよ。」
「え、えぇよもう終わるし…。」
「じゃあカゴ持つ。」
あわあわと断りながらスペインはカゴを抱えあげた俺の背後、屋敷の方へと視線を投げる。
「あ、んな…ロマーノは…?」
「あぁ、出掛けたよ。フェリシアーノの所に遊びに行くって。」
「い、イタちゃんとこに…?」
「そー。お泊まりでね。」
なんや、そうなんか。と呟いたスペインの声はわずかだが安堵と嬉しさが含まれていた。
「さ、屋敷に戻ろ。」
「あ、あぁ。」
右腕にトマトのカゴを抱え左手でスペインの手を握る。
「久しぶりなのにごめんな?」
「…えぇよ。」
嬉しそうに笑ったスペインは俺の手を握り返してくれた。
「早くスペインの手料理が食べたいなぁ。」
「任しといてな!名前のために腕振るうで!」
「楽しみにしてる。」
笑い合いながら屋敷に入る。
上機嫌なスペインと一緒に台所へ立った。
俺に毎日トマト料理を作ってください(やっぱりスペインの料理は美味しいね。)
(ホンマ?良かったわ〜。)
(俺のとこにお嫁に来ない?)
(…え、俺でえぇの…?)
(大好きなスペインが良いの!)
(名前〜!俺も大好きやでぇ〜!!)