短編(♂) | ナノ



白く染まった庭を眺めながら、欠伸をする。三成は太閤の所へ行っていて、吉継は友人(らしい)の毛利の所へ遊びに行っている。
する事もないし話す相手も居ないので暇を持て余した俺は日がな一日、きらきら白く光る庭を眺めて過ごしている。
時々女中が気を使って温かいお茶を入れてくれるのがありがたい。

(……すずめ)

雪で白梅が咲いた枝に、1羽の雀がとまった。茶色い羽が雪によく映える。

しばらくそうして庭を眺めていたら、遠くの方でなにか崩れる音がした。そして奴お決まりの絶叫が聞こえた。

(…またあの不運がなにかしたな)

音は物置小屋の方からだった。あれがなんの目的でそこにいたかは知らないが、どうせ吊り棚でもたたき落としたのだろう。
俺がのんびり音のした方を見ていると女中の足音が慌ただしく遠ざかるかわりに、あれが近づいてきた。

「………名前」
「よぉ、不運」
「ふっ!?官兵衛だ!」

前髪でよく見えない顔を憤慨したとばかりに歪ませて、それでも官兵衛は俺の隣に腰を下ろす。

「…小生が触ったら、吊り棚が落ちた。」
「ぶふっ」
「わ、笑うな!」
「くくっ、悪い、まさか当たるとは…くくくっ」
「当たる?」
「いや、なんでもないよ」

不機嫌そうに俺を見る官兵衛にそう濁す。

「………名前は何してたんじゃ」
「暇だから庭を眺めていた」
「なんだ、暇なのか」
「まぁ、暇だな」
「それなら小生と将棋っ?!」

多分将棋でもしないか、と言いたかったのだろう。しかし、官兵衛が言い終わる前に屋根から官兵衛の頭へ雪が落ちてきた。
べしゃりっと冷たそうな音がする。

「な、なぜじゃあああ!」
「あっはっは、そう叫ぶなうるさい」
「……………お前さん、雪のようだな」
「冷たいって?」

笑われて拗ねる官兵衛の頭から雪を落として、持っていた手拭いで髪を拭いてやる。

「…………前言撤回だ」
「そりゃどうも」

ほんのり頬を染める官兵衛。嬉しそうだな。

「で、将棋、だっけ?」
「いいのか!」
「構わんさ」
「よし、持ってくる!」

嬉々として立ち上がった官兵衛が満面の笑みで将棋盤やらを取りに走る。
転ぶぞ不運。

「おわっ!?」
「…ぶふっ」
「…わ、笑うなー!」

本当になんと期待を裏切らない不運だ
笑いを堪えないまま官兵衛に戻ってくるよう示す。

「俺が取りに行くよ」
「……すまん」
「お前が動くとろくな事が無いからな」
「悪かったな!小生だって好きで不運なんぞやっとらん!」
「はははは」

さっきの雪のせいで湿った官兵衛の頭を撫でてやる。案外甘やかされるのが好きな官兵衛は緩んだ顔のまま不機嫌を取り繕ってそっぽを向いた。









(………お前さん、手が刑部に似てきたな)
(そうか?ほら、王手)
(なに!?くそ、もう1度!もう1度だ!)
(はは、いいぞ。もう一勝負)
(次は負けんぞ!)


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